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 「そんなに軟禁、イヤだったんですかね」
 と言うか、絶対兄何かしたよね。
 「ねえ。ただ私は」

 「(一番重い刑になると)一ヶ月後、処刑だよ、サリュア」
 「でもね、今まで国のために尽くしてくれたキミに、それはあんまりだと思うんだよね。だからね」
 「(処刑からは)逃がしてあげる(ことにしたよ)。サリュア」
 「え」
 「これ、餞別だよ。大事にしてね」
 「行こう、サリュア。大丈夫。(軟禁のことは)衛兵にも話はしてある。(神殿に行くから)城から出してあげる」
 「で、でも」
 「(刑は神殿で軟禁と確定しているけれど)サリュアは死にたいの?(それなら処刑にする?)」

 「と言ったつもりだったけど、伝わらなかったかな。私たち、仲良しだったからね。すべて言わなくても伝わっていると思ったよ。残念だ」
 「真っ黒じゃねぇか、兄」
 端折はしょりすぎだろ。言わなかった部分こそが大事じゃないか。誤解と言うより完全に、処刑されるキミが可哀相だから逃がしてあげる、としか聞こえない。
 「あ。また兄って言った。何、真白。そんなに私にお仕置きされたいの」
 兄が後ろに回ると、抱き締められた。後ろから顎を掴まれ左に傾けられると、露わになった首筋に兄が噛みついた。
 「ぃあぅっ」
 噛みつかれるなんて思わなくて、変な声が出た。抵抗しようともがくが、兄の両腕が私の上半身を腕ごとガッチリホールドしていて動けぬ。くそう、細マッチョめ。私が動けないのをいいことに、兄が調子に乗り始めている。舐めるな。甘噛みするな。
 「あの、すみません。謝ります、謝るから、やめて。ふ、あは、ははは、く、くすぐっ、た、い」
 兄の舌にぞわぞわする。髪の毛が首筋をくすぐって、我慢出来ずに笑ってしまった。すると、兄が私を抱えたまま、床に倒れた。
 「うおおお、危ねぇ。どうしたリィン様」
 兄は何も言わずにただ私を抱き締めている。一体何なんだ。
 暫くして、ようやく兄が動いたかと思うと、私の体を反転させて、兄と向かい合わせで抱き合う形となった。そのままクルリと上下が入れ替わり、兄が私に覆い被さる形となる。何がしたいんだ。
 「お仕置きのつもりだったんだけどね」
 顔の赤い兄が困ったように笑っている。
 「ダメだよ、真白。そんな可愛いの、ずるいよ」
 こういうの、何て言うんだ。壁に手をつくヤツは壁ドンだから、これ、床に手をついてるから床ドン?まあ、壁か床かの違いだが、これが乙女たちのときめきが止まらない、壁ドンならぬ床ドンか。なるほど。この後どうしたらいいんだ。みんなどうしてたかな。思い出せ。グーパン。アッパー。ボディーブロー?ふむ。なぜ私の記憶は恋愛ものから格闘ものへシフトするんだ。
 「真白。こういうときはね、目を閉じるんだよ」
 ガン見している私に、兄が苦笑しながら頬を撫でる。うん、それはない。目を閉じたら兄は絶対私にちゅーするだろ。謹慎の時も、隙あらばちゅーしようとしてきたからね。
 「キス魔のリィン様の前でそんなことしません。それでリィン様、千年聖女はどこへ逃げたのでしょう」


*つづく*
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