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らがまふぃん活動三周年記念 第四弾
こちらの話は、拙作、“美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛”シリーズの子どもの話となります。
シリーズを読まなくてもわかるように心がけたつもりですが、シリーズをお読みではない方が読んでくださって、“何で?何が?”と感じる表現をしてしまっていたら申し訳ありません。
よろしかったらお付き合いください。
*∽*∽*∽*∽*
レイガード王国。世界で見ると、中小国に分類される王国だ。
しかし侮る事なかれ。
世界の王たる国、シュヴァルタイン帝国。様々な国の文化を取り入れて発展し続け、威風堂々、帝王である姿を世界に見せつける。そんな帝国が敬意を払う国、それがレイガード王国。
帝国の皇族は、大国相手以外、滅多にその重い腰を上げることはないのだが、レイガード王国だけは、必ず皇族が対応をする。相手がレイガードの王、もしくはレイガード王国筆頭公爵家ディレイガルドの当主であれば、皇族の中でも、皇帝や皇太子が対応する。中小国の公爵家に皇族が出てくること自体、異例中の異例であり、それほど帝国は、レイガードに敬意を払っていることに他ならなかった。
ディレイガルド公爵家は、レイガード王国最古の貴族。建国当初から、実に八百年以上貴族として存続し、筆頭となって五百年以上というとんでもない歴史の貴族だ。歴代当主たちは、必ず国の要職に就き、時には兼任する者もいたほど優秀な家系だが、考え方が古く厳格、ということはない。寧ろゆるい。そして驕ることはなく、大抵のことに寛容であった。
ただし。
彼らには、必ず、逆鱗がある。
この逆鱗に、決して触れてはならない。逆鱗だ。誰しも激しく感情を昂ぶらせるだろう。けれど、ディレイガルドの逆鱗は桁違い。下手をすると、国が滅ぶ。大袈裟ではない。逆鱗に触れた一族郎党根絶やしは当たり前。それに荷担した者も当然滅びの一択。
実際、先代王家が、現ディレイガルド当主であり、当時小公爵であったエリアスト・カーサ・ディレイガルドにやらかし、国が滅びかけた。エリアストの妻であり、当時は婚約者であったアリスのお陰で事なきを得た。
代々ディレイガルドの逆鱗は、伴侶。これに何かあれば、やべぇことになる。プラスで、趣味嗜好を邪魔された時だ。これが厄介。趣味嗜好が何なのか、それを把握出来ないと、知らずに地雷を踏み抜いてしまう。
ちなみに、現ディレイガルド当主エリアストは、大抵のことに寛容と言うより、妻アリス以外なんら気持ちが動かない。アリスに繋がることは、どんな些細なことでも見逃さない。故に、あらゆることが逆鱗に触れる可能性を秘めており、わかりやすいのかさっぱりわからないのかわからない厄介さを秘めていることを付け加えておこう。
さて、そんなディレイガルド家には、エリアストとアリスの双子の子どもがいる。
双子の両親は、社交界で知らぬ者はいない有名人。父エリアストは、類い稀なる美貌を持ち、類い稀なる冷酷さを持った、妻アリスを溺愛という言葉では片付けられないほど持ちうるすべてで愛する、それ以外ミジンコほどにも関心のない男として。母アリスは、そんなエリアストの愛を大きな器で受け入れ、常に穏やかに微笑み、誰もが魅了される声の持ち主として。
そんな父親の容姿をそっくり受け継ぎ、その瞳の色だけ、母親の色を持つ双子の名前は、嫡男ノアリアスト・カーサ・ディレイガルドと、長女ダリア・カーサ・ディレイガルド。
似ているのは、容姿だけではない。その性格も、限りなく父親寄り。故に、双子の間では、毎日毎日静かな火花が散るのだ。
母であるアリス争奪戦で。
おはようからおやすみまで、あらゆる些細なことでアリスを静かに取り合う。特に、父であるエリアストには嫉妬が凄い。もちろん畏敬の念が大きい。だが、アリスを独り占めするエリアストを前にした時だけ、双子は結託する。あの手この手でアリスを引き留め、エリアストとの二人きりの時間を少しでも減らそうと画策する。だが、引き際は間違えない。エリアストから何やら不穏なものを微かに感じ取ると、双子はサッと引く。
これが、ディレイガルド家の日常だった。
そんな筆頭公爵家ディレイガルドの長女ダリアには、五歳年上の婚約者がいる。
デュイエ・ケーシー。ケーシー伯爵家次男だ。
ディレイガルドの血を継ぐ者たちは代々、何故か自分の唯一がわかった。一目見て、感じるのだという。
家族で行った旅行先で、挨拶に来たケーシー家の中に、デュイエというダリアの唯一がいたのだ。
そんな二人の馴れ初めを、少し紹介しよう。
………
……
…
それは、偶然だった。
レイガード王国にあるリスフォニア領には、フルシュターゼと言う町がある。そこへ家族旅行で来ていたディレイガルドへ、その町に隣接するケーシー領を治めていた伯爵一家が挨拶に訪れた。
ケーシーの当主は堅実であり、そんな当主に似て真面目な二人の息子と一人の娘がいる。その到着までサロンで待機していたダリアとノアリアストは、馬車が見えると応接間へ移動するべく立ち上がる。移動中、門に到着したケーシー家が馬車から降りる姿が見えた。
「玄関前まで乗り付けない。とても真面目な一家だと聞いているけれど、本当だ」
「こういう人間ばかりなら楽ね」
「まったくだね」
再び歩き出そうとしたときに、馬車から降りてくる人物を見て二人は目を見開いた。
「見つけた」
「ああ、本当だ。凄いね、なるほど」
ダリアの驚きの声にノアリアストが頷くと、それにもまた驚いた。
「あなたにもわかるの、ノア」
「不思議な感覚だけれど、私にもわかるよ。ああ、ディアの唯一だって」
「双子だからかしら」
微かに首を傾げるダリアを見て、ノアリアストは微笑む。
「おめでとう、ディア」
唯一を見つけたダリアをノアリアストが抱き締めると、その背に手を回し、優しく応えるように、ダリアは軽く叩いた。
「ありがとう、ノア。これが、お父様もお祖父様も言っていたことだったのね。一目見ればわかる、と」
ケーシー伯爵家の子ども、次男のデュイエこそが、ダリアの唯一であったのだ。
それを応接間で待つ両親に告げると、母アリスはとても喜び、父エリアストは微かに口角を上げて頷いた。
そうとは知る由もないケーシー家が緊張の面持ちで挨拶をすると、直ぐさまダリアは行動に出た。
デュイエの前に立ち、その手を差し出した。
「庭を歩きたいのです。エスコートしてくださらない」
抑揚のない話し方であり、ともすれば機嫌を損ねているようにも聞こえてしまうのだが、デュイエたちケーシー家は、ただただ驚きと緊張で言葉が出なかった。
それはそうだ。
ディレイガルド家はこの国の筆頭公爵家。自分たちからすれば、雲の上の存在。関わることなどないと思っていたのだから。
故に、ケーシー伯は困惑していた。
自慢の子どもたちではあるが、あのディレイガルドが気に入る何かがあるほどとは思えなかったからだ。
「手を、取っては、くださらないのですか」
ダリアの言葉にハッとした伯爵は、慌ててデュイエの背中を叩く。
「ご、ご令嬢をお待たせするな、デュイエ。ご令嬢、失礼いたしました」
「し、失礼、いたしました」
手袋をしているにもかかわらず、デュイエはゴシゴシとハンカチで手袋を拭くその姿に、ダリアの胸にはいい知れない感情が広がる。そして、壊れ物でも扱うように、震える手でそっとダリアの指先に触れるデュイエに、知らず口元が綻んだ。
「デュイエ、と言うのですね。わたくしはダリア。ディアと、お呼びくださいませ」
「ひえっ?!」
何とも言えない声が出てしまうデュイエさえ、なんて微笑ましいのだろう。
そんなデュイエを連れ出し、今二人、森をゆっくり散策している。
「デュイエ様は、婚約なさっていますの」
ダリアの言葉に、一瞬理解が追いつかなかったようが、すぐに首を振って否定した。
「あ、いえ、自分は、こんななので、その、なかなか、踏み出せずに、おります、です」
しどろもどろと答えるデュイエの顔を、ダリアは覗き込んだ。
*つづく*
こちらの話は、拙作、“美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛”シリーズの子どもの話となります。
シリーズを読まなくてもわかるように心がけたつもりですが、シリーズをお読みではない方が読んでくださって、“何で?何が?”と感じる表現をしてしまっていたら申し訳ありません。
よろしかったらお付き合いください。
*∽*∽*∽*∽*
レイガード王国。世界で見ると、中小国に分類される王国だ。
しかし侮る事なかれ。
世界の王たる国、シュヴァルタイン帝国。様々な国の文化を取り入れて発展し続け、威風堂々、帝王である姿を世界に見せつける。そんな帝国が敬意を払う国、それがレイガード王国。
帝国の皇族は、大国相手以外、滅多にその重い腰を上げることはないのだが、レイガード王国だけは、必ず皇族が対応をする。相手がレイガードの王、もしくはレイガード王国筆頭公爵家ディレイガルドの当主であれば、皇族の中でも、皇帝や皇太子が対応する。中小国の公爵家に皇族が出てくること自体、異例中の異例であり、それほど帝国は、レイガードに敬意を払っていることに他ならなかった。
ディレイガルド公爵家は、レイガード王国最古の貴族。建国当初から、実に八百年以上貴族として存続し、筆頭となって五百年以上というとんでもない歴史の貴族だ。歴代当主たちは、必ず国の要職に就き、時には兼任する者もいたほど優秀な家系だが、考え方が古く厳格、ということはない。寧ろゆるい。そして驕ることはなく、大抵のことに寛容であった。
ただし。
彼らには、必ず、逆鱗がある。
この逆鱗に、決して触れてはならない。逆鱗だ。誰しも激しく感情を昂ぶらせるだろう。けれど、ディレイガルドの逆鱗は桁違い。下手をすると、国が滅ぶ。大袈裟ではない。逆鱗に触れた一族郎党根絶やしは当たり前。それに荷担した者も当然滅びの一択。
実際、先代王家が、現ディレイガルド当主であり、当時小公爵であったエリアスト・カーサ・ディレイガルドにやらかし、国が滅びかけた。エリアストの妻であり、当時は婚約者であったアリスのお陰で事なきを得た。
代々ディレイガルドの逆鱗は、伴侶。これに何かあれば、やべぇことになる。プラスで、趣味嗜好を邪魔された時だ。これが厄介。趣味嗜好が何なのか、それを把握出来ないと、知らずに地雷を踏み抜いてしまう。
ちなみに、現ディレイガルド当主エリアストは、大抵のことに寛容と言うより、妻アリス以外なんら気持ちが動かない。アリスに繋がることは、どんな些細なことでも見逃さない。故に、あらゆることが逆鱗に触れる可能性を秘めており、わかりやすいのかさっぱりわからないのかわからない厄介さを秘めていることを付け加えておこう。
さて、そんなディレイガルド家には、エリアストとアリスの双子の子どもがいる。
双子の両親は、社交界で知らぬ者はいない有名人。父エリアストは、類い稀なる美貌を持ち、類い稀なる冷酷さを持った、妻アリスを溺愛という言葉では片付けられないほど持ちうるすべてで愛する、それ以外ミジンコほどにも関心のない男として。母アリスは、そんなエリアストの愛を大きな器で受け入れ、常に穏やかに微笑み、誰もが魅了される声の持ち主として。
そんな父親の容姿をそっくり受け継ぎ、その瞳の色だけ、母親の色を持つ双子の名前は、嫡男ノアリアスト・カーサ・ディレイガルドと、長女ダリア・カーサ・ディレイガルド。
似ているのは、容姿だけではない。その性格も、限りなく父親寄り。故に、双子の間では、毎日毎日静かな火花が散るのだ。
母であるアリス争奪戦で。
おはようからおやすみまで、あらゆる些細なことでアリスを静かに取り合う。特に、父であるエリアストには嫉妬が凄い。もちろん畏敬の念が大きい。だが、アリスを独り占めするエリアストを前にした時だけ、双子は結託する。あの手この手でアリスを引き留め、エリアストとの二人きりの時間を少しでも減らそうと画策する。だが、引き際は間違えない。エリアストから何やら不穏なものを微かに感じ取ると、双子はサッと引く。
これが、ディレイガルド家の日常だった。
そんな筆頭公爵家ディレイガルドの長女ダリアには、五歳年上の婚約者がいる。
デュイエ・ケーシー。ケーシー伯爵家次男だ。
ディレイガルドの血を継ぐ者たちは代々、何故か自分の唯一がわかった。一目見て、感じるのだという。
家族で行った旅行先で、挨拶に来たケーシー家の中に、デュイエというダリアの唯一がいたのだ。
そんな二人の馴れ初めを、少し紹介しよう。
………
……
…
それは、偶然だった。
レイガード王国にあるリスフォニア領には、フルシュターゼと言う町がある。そこへ家族旅行で来ていたディレイガルドへ、その町に隣接するケーシー領を治めていた伯爵一家が挨拶に訪れた。
ケーシーの当主は堅実であり、そんな当主に似て真面目な二人の息子と一人の娘がいる。その到着までサロンで待機していたダリアとノアリアストは、馬車が見えると応接間へ移動するべく立ち上がる。移動中、門に到着したケーシー家が馬車から降りる姿が見えた。
「玄関前まで乗り付けない。とても真面目な一家だと聞いているけれど、本当だ」
「こういう人間ばかりなら楽ね」
「まったくだね」
再び歩き出そうとしたときに、馬車から降りてくる人物を見て二人は目を見開いた。
「見つけた」
「ああ、本当だ。凄いね、なるほど」
ダリアの驚きの声にノアリアストが頷くと、それにもまた驚いた。
「あなたにもわかるの、ノア」
「不思議な感覚だけれど、私にもわかるよ。ああ、ディアの唯一だって」
「双子だからかしら」
微かに首を傾げるダリアを見て、ノアリアストは微笑む。
「おめでとう、ディア」
唯一を見つけたダリアをノアリアストが抱き締めると、その背に手を回し、優しく応えるように、ダリアは軽く叩いた。
「ありがとう、ノア。これが、お父様もお祖父様も言っていたことだったのね。一目見ればわかる、と」
ケーシー伯爵家の子ども、次男のデュイエこそが、ダリアの唯一であったのだ。
それを応接間で待つ両親に告げると、母アリスはとても喜び、父エリアストは微かに口角を上げて頷いた。
そうとは知る由もないケーシー家が緊張の面持ちで挨拶をすると、直ぐさまダリアは行動に出た。
デュイエの前に立ち、その手を差し出した。
「庭を歩きたいのです。エスコートしてくださらない」
抑揚のない話し方であり、ともすれば機嫌を損ねているようにも聞こえてしまうのだが、デュイエたちケーシー家は、ただただ驚きと緊張で言葉が出なかった。
それはそうだ。
ディレイガルド家はこの国の筆頭公爵家。自分たちからすれば、雲の上の存在。関わることなどないと思っていたのだから。
故に、ケーシー伯は困惑していた。
自慢の子どもたちではあるが、あのディレイガルドが気に入る何かがあるほどとは思えなかったからだ。
「手を、取っては、くださらないのですか」
ダリアの言葉にハッとした伯爵は、慌ててデュイエの背中を叩く。
「ご、ご令嬢をお待たせするな、デュイエ。ご令嬢、失礼いたしました」
「し、失礼、いたしました」
手袋をしているにもかかわらず、デュイエはゴシゴシとハンカチで手袋を拭くその姿に、ダリアの胸にはいい知れない感情が広がる。そして、壊れ物でも扱うように、震える手でそっとダリアの指先に触れるデュイエに、知らず口元が綻んだ。
「デュイエ、と言うのですね。わたくしはダリア。ディアと、お呼びくださいませ」
「ひえっ?!」
何とも言えない声が出てしまうデュイエさえ、なんて微笑ましいのだろう。
そんなデュイエを連れ出し、今二人、森をゆっくり散策している。
「デュイエ様は、婚約なさっていますの」
ダリアの言葉に、一瞬理解が追いつかなかったようが、すぐに首を振って否定した。
「あ、いえ、自分は、こんななので、その、なかなか、踏み出せずに、おります、です」
しどろもどろと答えるデュイエの顔を、ダリアは覗き込んだ。
*つづく*
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