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懐疑
レム公爵家がテレーゼの死を認めないまま、一年の月日が流れる。
「は?何だって?」
「こちらも何故そんなことになったのかっ」
十五歳になり、立太子したヴェルエルンは焦った。側近も訳がわからないと混乱している。
「とにかく今一度その書類を探しておりますっ。殿下は今後について陛下がお呼びですので、至急陛下の下へお願いいたしますっ」
側近はそれだけ言うと、慌ただしく退室した。
「どういう、ことだ?」
ヴェルエルンは茫然と呟く。
何故、隣国と、戦争になる?
ヴェルエルンは口元を押さえ、荒くなる息を何とか抑え込む。自身の心臓の音がうるさい。とにかく、国王に話を聞かなくては、と足を急がせた。
………
……
…
会議室には、国の重鎮が揃っていた。皆険しい顔をして、手元の書類を睨んでいる。
ヴェルエルンが入室すると、一斉に皆がヴェルエルンを向き、厳しい視線を投げた。知らず、ヴェルエルンは息をのんだ。
「“返答の期日は疾うに過ぎた”と言っている。何のことかわかるか」
ヴェルエルンが席に着く前に、王が苛立ったように言った。ヴェルエルンは扉の前に立ったまま話を聞くことになった。
「“本来であれば半年前に返事をもらう予定だったが、何かと言い訳をし続けて四ヶ月、しかし、今はその言い訳すら来ない”とのことだ。どういうことだ、これは」
全員の厳しい目に晒されながら、ヴェルエルンは意味がわからなかった。
「申し訳ありません。まったく覚えがないのですが、どのような内容の話かわかるようにお願いいたします」
「知らん、と申すか」
「期日のあるものは、すべて迅速に対応しております。何を見落としているか」
そこまで言うと、王が机を叩いた。ヴェルエルンの肩が跳ねる。
「これほど重要なことを知らない、だと?」
重鎮たちも、呆れた溜め息を吐く。その態度に、ヴェルエルンは我慢ならなかった。
「お待ちください。私の仕事を知ってもらうために、妃候補にも仕事を手伝ってもらっておりました。もしかしたら、その者が知っているやもしれません」
「そんな重要なものを妃に、ましてまだ候補に任せるなど」
ヴェルエルンは発言者を睨む。
「重要なものを任せるはずがない。何かの手違いで混ざっていたのかもしれないという、可能性の話だ」
「万が一混ざっていたとしたら、すぐにでも殿下にお知らせするはずでしょう?妃候補との関係は良好ですか、殿下」
ヴェルエルンは舌打ちをしたい衝動に駆られる。
「今はそんなことを議論する場ではない。弁えろ。陛下、すぐに候補を呼んで参りますので、一旦失礼いたします」
王の視線は冷たいままだ。ヴェルエルンは一礼して部屋を出た。
部屋を出ると、思い切り舌打ちをして、ヴェルエルンはマリーナの元へと向かう。
マリーナに与えた部屋に押し入る。
「マリーナ!貴様、何をした!」
怒鳴り込んできたヴェルエルンに、マリーナは全身を震わせる。怯えるマリーナを見て、僅かに留飲が下がる。
「すぐに来い。陛下がお呼びだ」
「へ、陛下、が?」
青ざめ、ますます震えるマリーナに、この件が済んだらどんな仕置きをしてやろうかと、嗜虐思考を巡らせ、ヴェルエルンは冷静さを取り戻していった。
しかし、そんな時は来ないなど、知る由もない。
*つづく*
「は?何だって?」
「こちらも何故そんなことになったのかっ」
十五歳になり、立太子したヴェルエルンは焦った。側近も訳がわからないと混乱している。
「とにかく今一度その書類を探しておりますっ。殿下は今後について陛下がお呼びですので、至急陛下の下へお願いいたしますっ」
側近はそれだけ言うと、慌ただしく退室した。
「どういう、ことだ?」
ヴェルエルンは茫然と呟く。
何故、隣国と、戦争になる?
ヴェルエルンは口元を押さえ、荒くなる息を何とか抑え込む。自身の心臓の音がうるさい。とにかく、国王に話を聞かなくては、と足を急がせた。
………
……
…
会議室には、国の重鎮が揃っていた。皆険しい顔をして、手元の書類を睨んでいる。
ヴェルエルンが入室すると、一斉に皆がヴェルエルンを向き、厳しい視線を投げた。知らず、ヴェルエルンは息をのんだ。
「“返答の期日は疾うに過ぎた”と言っている。何のことかわかるか」
ヴェルエルンが席に着く前に、王が苛立ったように言った。ヴェルエルンは扉の前に立ったまま話を聞くことになった。
「“本来であれば半年前に返事をもらう予定だったが、何かと言い訳をし続けて四ヶ月、しかし、今はその言い訳すら来ない”とのことだ。どういうことだ、これは」
全員の厳しい目に晒されながら、ヴェルエルンは意味がわからなかった。
「申し訳ありません。まったく覚えがないのですが、どのような内容の話かわかるようにお願いいたします」
「知らん、と申すか」
「期日のあるものは、すべて迅速に対応しております。何を見落としているか」
そこまで言うと、王が机を叩いた。ヴェルエルンの肩が跳ねる。
「これほど重要なことを知らない、だと?」
重鎮たちも、呆れた溜め息を吐く。その態度に、ヴェルエルンは我慢ならなかった。
「お待ちください。私の仕事を知ってもらうために、妃候補にも仕事を手伝ってもらっておりました。もしかしたら、その者が知っているやもしれません」
「そんな重要なものを妃に、ましてまだ候補に任せるなど」
ヴェルエルンは発言者を睨む。
「重要なものを任せるはずがない。何かの手違いで混ざっていたのかもしれないという、可能性の話だ」
「万が一混ざっていたとしたら、すぐにでも殿下にお知らせするはずでしょう?妃候補との関係は良好ですか、殿下」
ヴェルエルンは舌打ちをしたい衝動に駆られる。
「今はそんなことを議論する場ではない。弁えろ。陛下、すぐに候補を呼んで参りますので、一旦失礼いたします」
王の視線は冷たいままだ。ヴェルエルンは一礼して部屋を出た。
部屋を出ると、思い切り舌打ちをして、ヴェルエルンはマリーナの元へと向かう。
マリーナに与えた部屋に押し入る。
「マリーナ!貴様、何をした!」
怒鳴り込んできたヴェルエルンに、マリーナは全身を震わせる。怯えるマリーナを見て、僅かに留飲が下がる。
「すぐに来い。陛下がお呼びだ」
「へ、陛下、が?」
青ざめ、ますます震えるマリーナに、この件が済んだらどんな仕置きをしてやろうかと、嗜虐思考を巡らせ、ヴェルエルンは冷静さを取り戻していった。
しかし、そんな時は来ないなど、知る由もない。
*つづく*
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