禁じられた遊び

らがまふぃん

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反撃

 「あなたが優秀で、そして愚かで良かった」
 自分たちの目の前で起こっている出来事が、理解出来ない。
 マリーナ・ハルベディ侯爵嬢。
 おとなしく真面目で、自己主張をせず常に控え目。それが、ここにいる全員の共通の認識だった。
 “返答の期日は疾うに過ぎた”
 “本来であれば半年前に返事をもらう予定だったが、何かと言い訳をし続けて四ヶ月、しかし、今はその言い訳すら来ない”
 どういうことかわかるかと聞くと、マリーナは、笑った。
 笑って、冒頭の言葉を言ったのだ。
 誰もが目を見開く。マリーナは構わず続けた。
 「戻った書類だけではなく、渡す前の書類にも気を配るべきでしたわね」
 戻された書類はすべて把握していた。その対応も対策もきちんと行っていた。だからこそ、読まれていない書類があるなど、誰も思わない。まして、一見重要度が高いと思えないものなど、覚えている者もいないかもしれない。
 戻されず、マリーナの手元に置かれた書類。今回に関する、一連の報告書。最初の書類は本当にいつもの重要度が低いもの。日付を追うごとに、それは重要度を増している。最後のものは、最重要だと一目でわかる、赤く染められた報告書。マリーナは八枚の紙を扇のように広げ、ひらひらと振る。
 それは、今まさに攻め込もうとしている隣国との国境にある領地を治める伯からのものだった。
 「寄越せっ」
 マリーナへの怒りは相当だが、それどころではない。とにかく打開策を見つけなくては。
 ヴェルエルンはマリーナから書類を奪い取り、目を走らせる。
 最初の日付は、一年近く前。最初はよくある些細な小競り合いだった。けれど隣国とのことなので、念のための報告であった。それが今回はだんだん大きくなり、最初の報告の日付からたった三ヶ月で緊迫した空気が漂うようになったとされている。その一月後、互いの国に犠牲者が出る。どちらが先に手を出したかは真っ向から意見がぶつかっていた。
 「なんだ、これは」
 ヴェルエルンの書類を持つ手が震えている。これほど緊急性の高い書類に、まったく見覚えがない。それどころか、最初の犠牲者報告の十日後に、王太子となったヴェルエルンが伯の領地に赴き、隣国の伯と話し合いをしていることになっているではないか。
 その話し合いの内容を精査し、王へ報告の後、国として対応すると約束した期日が半年前。返事を躱し続け、ついには音沙汰なしというあまりの不誠実さに、隣国は武器を取った。
 無辜むこの民の命を奪った悪逆非道な国、という名目で。
 元よりロウゼリア王国は、肥沃な大地と穏やかな気候に恵まれ、大きな災害も起こらない、世界でも類を見ない豊かな国なのだ。
 この地を手に入れたい国は、虎視眈々と、待っている。
 ロウゼリアに攻め入る口実を、待っている。
 「ふふ、ねえ、どんな気分?」
 マリーナは嗤った。



*つづく*
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