最恐お兄ちゃん

らがまふぃん

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新たな始まり

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「俺はちっともかまわないんだけど。が好奇の目にさらされるなんて、赦せないよね?」
 お祖父様は笑っているのに。本能が恐れている。
「今までは幼馴染みとか同級生とかだったけど。前回は兄妹。今回は年の差」
 最早、何を言っているかわからない。ただ、もう意味などどうでもいい。
「前回は父性本能もあったからまだ我慢出来たけどさあ。今回もおあずけなんて、ありえないよねえ」
 本能が警鐘を鳴らしている。
 逃げろ、と。
以外、どうだっていいからなあ。たとえそれが、血の繋がった子孫であろうと」
「お、じい、さま」
 逃げろ。今すぐに。
 動け。恐怖に竦んでいる場合ではない。
「さてさて。もう眠るといいよ。キミのはもう終わり」
 逃げろ。
「その体、黙って俺に差し出そうか」

 逃げるんだ!


………
……



「初めまして。キミがサーフォニア?私はエーヴァルト」
 王子然としたキラキラ男子に、サーフォニアは驚いたように目を見開く。
「祖父に代わって、これからは私がキミを守るよ」
 愛おしそうに微笑むエーヴァルト。
「安心して。ずっと、ずうっと一緒にいよう」
 サーフォニアに向けるものとは一転、ベッドに横たわり、もう声すら出せないゲルトに、エーヴァルトは冷たい視線を落とす。
「お祖父様、これからは私があなたの大切な子をお守りしていきます。だから、安心してお休みください」
 。体調を尋ねたエーヴァルトに、ゲルトはそう言った。
 エーヴァルトは悟る。
 入れ替わった後は、ゲルトの体が邪魔になる。生きていられては困る、余計なことを言われては面倒だ、と。
 いつ死んでもおかしくない状況を作り上げるために自ら少量の毒を摂り続け、エーヴァルトが帰国すると、話をする前に、遅効性の毒をほぼ致死量口にしていたのだ。
 そして、自分が留学させてもらったのは、入れ替わるため。離れている時間が長いほど、性格が変わっていてもおかしくないと家族は思うだろう。入れ替わりにより性格が変わったことを、ただ家族に疑問を持たせないためだけのものだったのだ。
 絶望したような表情を見せるに、は優しく微笑む。周囲も、冷酷な男が、愛した少女と離れ離れになる現実に、絶望しているのだと思った。ゲルトのもういくらもない命を感じ、あれほど大切にしていた子と離れなくてはならない無情に涙を誘われる。
 エーヴァルトが戻り、バルシュミーデ一族の長であるゲルトに帰国の挨拶をしに部屋を訪れると、ゲルトは饒舌に語ったという。なぜサーフォニアを探していたか、サーフォニアがどういう存在かを、饒舌に。
「お祖父様は、次期当主となる私に、サーフォニアを守って欲しくて呼び戻したと。お祖父様の話を聞き、私は、サーフォニアを守ると誓いました」
 決して誰にも明かされることのなかったゲルトの思いを、ゲルトの弟の孫であるエーヴァルトに語ったという。
 久しく見ていなかったエーヴァルトの成長に、親であるバルシュミーデ公爵当主夫妻は頼もしく感じた。帰国後話す間もなくゲルトの元へ行き、話を終えたエーヴァルトと久しぶりに対面して思う。纏う空気が、ゲルトに似ている、と。
 エーヴァルトにすべてを託したゲルトは、倒れた。
 意識は混濁し、目を開いても僅かな時間。
 誰もが、もう長くはないと悟る。
「サホ、お祖父様にご挨拶を」
 エーヴァルトに促され、サーフォニアはゲルトの痩せた大きな手を取った。
〖ありがとう、ございました〗
 ゲルトは必死に何かを訴えるようにサーフォニアを見つめ、その手に縋りつくが、エーヴァルトによって無情にも離される。
「お祖父様、ご安心ください。あなたの想い、私がしっかり受け継ぎました」
 深々と頭を下げるエーヴァルトに、もう声すら出せないゲルトは、それでも何かを訴えるように、最期の時まで唇を震わせていた。



*つづく*
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