最恐お兄ちゃん

らがまふぃん

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最終話 私だけの

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「どうしてそんなことまで知っているの?」
「お祖父様の日記にあったんだよ。いや、あれは日記と言っていいのかな。サホへの愛が綴られた、叙情詩?かな?」
「そんなものが」
「でも、お祖父様の気持ち、よくわかった。サホの側にいると、よくわかる」
 ああ、やっと、抱きしめられる。
「サホに出会わせてくれたお祖父様に、感謝なんて言葉では足りないほど、感謝しているよ」
 家族としての抱擁ではなく。
「お祖父様の愛とは違うけれど」
 血の繋がりはなくても、孫ほどの年齢差では叶わなかった。
「私は、サホと、その」
 恋人としての時間。
「夫婦になりたいんだ」
 体の奥まで私で満たしたい。
「お願い、サホ」
 もう、逃げられないよ。
「ずっと、ずっとサホの側で、愛させて」
 また、一緒にいられるね。

 永遠に、一緒。

 さあ、花嫁姿を見せてくれ。

 私の、私だけの





 騙されてあげるよ、お兄ちゃん。

 はっきり覚えているのは、前世。
 前世でも、なんとなく思うことがあった。
 お兄ちゃんとは、前にも会ったことがなかっただろうかって。
 お兄ちゃんって呼びながら、どこか違う気がしてた。妹を見る目じゃないって気付いてた。
 ずっと、ずうっと前から、お兄ちゃんとは一緒だった、気がしてた。
 お兄ちゃんはいろんなことを知っていて、でもちっとも偉そうにしないで。
 いたって普通の人間だけど、きっと普通じゃないって感じてた。
 お兄ちゃんは、転生先は選べないけど、必ず私と同じ世界に生まれる。そしてきっと、お兄ちゃんはうつわを選べる。
 前世では、一緒に死んだ。
 お兄ちゃんが私を守るために抱きしめたことを覚えてる。
 超人的な身体能力があるわけでも、魔法が使えるわけでもない。地球ではそんな只人として生まれたけれど、その魂は特別。私という魂と、必ず一緒にいられる。そしてお兄ちゃんは、かつての生をすべて覚えている。お兄ちゃんと私の魂が必ず一緒になるようにした時からの、すべての記憶を。
 前世では一緒に死んじゃったから、お兄ちゃんは死を受け入れた。きっと私が生き残っていたら、他の人の体を乗っ取って私の側に現れただろう。それほどまでに、私を、私という魂を愛している。
 私自身を愛してくれているわけではない、と嘆くつもりはない。魂レベルで愛されていることが、堪らなく堪らない。どんな外見や性格うわべでも愛してくれるのだ。なかみを見てくれている。それを、私自身を愛していない、と思う人もいるだろうけど、私は外見や性格うわべに左右されないその真っ直ぐさに、愛しさを覚える。
 どんな私でも受け入れるその器の大きさは、世界よりも大きいと思う。
 実際今世での私の容姿は、お世辞にも賛辞を述べられるほどのものはない。
 瞳の色がわからないくらい細い目に、濃い目の茶色にところどころ金やら赤やらが混じる何色と言っていいかわからない髪色。お肌も特筆すべきことがないが、特筆すべきことがないことが褒められる要素になるかもしれないという感じだ。
 そんな私でも、お兄ちゃんからしたら、細目は日向ぼっこで気持ちよさそうにしている猫みたい、髪色は三毛猫みたい、とのことで、とにかく猫のようで愛らしいという。褒め上手め。
 ゲルトおじいちゃんの体に、もうお兄ちゃんはいなくて。
 エーヴァルトさんの魂と入れ替えた。
 だから、エーヴァルトさんに会ったとき、驚いたんだよ。だから、ゲルトおじいちゃんの体になったエーヴァルトさんに、お兄ちゃんって呼びかけなかったんだよ。前世の言葉を使ったのは、私たちが話している言葉を周りが聞いていたから。意味がわからない言葉で話しているっていつも思っていたこと、知ってたから。
 ゲルトおじいちゃんのときにお兄ちゃんだって気付いたんだよ。エーヴァルトさんと入れ替わって気付かないはずがない。
 お兄ちゃんは、いつだって私のヒーローだった。

 ヒーローに恋をしないヒロインは、ヒロインじゃないんだよ、お兄ちゃん。

 私の、私だけのヒーロー。



*おしまい*
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
なんとなくきょうだいものを書きたくなりまして。
ちなみに咲穂たんへの愛が綴られた叙情詩は存在しません。
兄ちゃんの記憶持ちを誤魔化す嘘です。
匂わせましたが、ゲルトじいちゃんの血を引く人もいません。
気が向きましたら番外編あるかもです。
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