ヴァンパイアと聖女様

刹那

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第4話

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リズが王宮に住むようになり数ヶ月経ち、後半月で結婚式が行われるという時、それはおこった。
リリアナは週二回、いつものようにご飯を作り楽しく食事をしていた。しかし、急にリズが苦しみだし、倒れたのだ。

「リズ!リズ!」と名前を呼ぶが返事はない。すぐに医師を呼び一命を取り留めたが、未だに目を覚まさない状態だった。
「リリアナ、大丈夫だよ。」とヴィルガーはリリアナの肩を抱く。

数週間後、リズがようやく目を覚ました。しかし、リリアナが近づくと怯えたようにびくりと肩を震わせ、心配になりリリアナが手を伸ばすと悲鳴をあげ、リリアナを拒絶する。

「リズ…。」

「…いや、やめて!殺さないで!」

リリアナは取り敢えず部屋を出る。

何が起きたの?
どうして、私を見て怯えるの?

訳がわからず、リズに怯えられ混乱していたが、それでも、リズのことを心配し、いつものように怪我が治るよう、主へお祈りしている時だった。複数の騎士がリリアナを囲み。拘束する。

「これは、どういうことですか?!」とリリアナが聞けば、騎士達は「リズ様殺害容疑で連行します。これは国王の命令です。」と淡々と述べていく。しかし、リリアナは何を言われているのか理解できなかった。

リズ…殺害?
ヴィルガー様の…命令。

リリアナは目の前が真っ暗になる感覚が襲いその場にへたり込む。そんなリリアナを、騎士たちはなんの感情の浮かばない瞳で見つめ、細い腕を掴み牢屋へと連れて行く。

何が起きたのかわからず、混乱するリリアナの耳にやけに鮮明に鉄の扉が閉まる音だけが耳に響いた。

どうして……。

「お願いします。ヴィルガー陛下をお呼びください。…私は無実です。お願いします。」と何度も何度も、喉が枯れるほど訴えても誰も耳を貸そうとはしない。

それどころか、日に日に警備たちの目は冷たくまるでゴミを見るようにリリアナを見る。

いったい、どのぐらい日にちが経ったのか。

喉は枯れ、手足は枯れ木のように細く、骨が浮き出て、あの美しい聖女様と呼ばれたリリアナの見る影はなかった。

しかし、リリアナの瞳は光を失っていなかった。
ヴィルガーが、愛したみんなが信じてくれていると、信じていたからだ。

「…リリアナ・ローズ・セシリア。」

「ヴィルガー様!」

はやり、ヴィルガー様は私を信じてくださっていた。きっと、これは何かの間違いだったのです。

リリアナは力の入らない体を必死に動かし、ヴィルガーに近づく。

しかし、ヴィルガーから出た言葉もその視線も思いもよらないものだった。

「君を明日日が昇り次第、死刑に処す。」

その声は本当にあの優しいヴィルガー様なのでしょうか。
この瞳もあのヴィルガー様なのでしょうか。
これは、やっぱり悪い夢なのでしょうか。
と考えてみるが現実は残酷なものだった。

「ヴィー様。私は無実です。お願いします。信じてください。」

お願い、ヴィー様。

「…けがわらしいその身で僕の名前を呼ばないでくれるか?」

…主よ。これはあなた様がお与えになった試練だとおっしゃるのでしょうか?

「…信じていただけないのですか?」

「僕の最愛のリズを殺すとして、本当は直ぐにでも殺すとしたんだよ?でも、リズが止めるから…。リズに感謝してほしいぐらいだ。」と言い残すともうこれ以上ここにいたくないというようにヴィルガーは消えて行った。

主様、どうかお許しください。私はこの試練を乗り越えられそうにありません。

リリアナの頬にひとしずくの涙が落ちる。

皮肉にも、明日は本来ヴィルガーとリリアナの結婚式の日だった。
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