転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

181話 彼の本性と、伝説の存在

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「こいつは、ガルムっていうんだ……。見ての通り……巨体で暴れ出すと手に負えないんだぞぉ……レイニーさまぁ……ねぇ、逃げよっ!」

 シオンは怯えた表情を浮かべながら、必死にレイニーの袖を掴んで訴えた。その声には過去の経験から来る恐怖がにじみ出ていて、彼がガルムに対して抱いているトラウマが垣間見えた。

 きっとシオンは過去にガルムと関わり、痛い目に遭ったことがあるのだろう。ガルムの放つ負のオーラはシオンのそれと同じ性質を持っており、まさに闇の世界の象徴といえる存在だ。しかし、その負のオーラの威圧が当然効かないという事実が、かえってガルムの危険性を際立たせていた。

「へぇ、こいつガルムっていうんだぁー」

 レイニーは少し呑気な表情でガルムを見上げながら返事を返した。

「確かに強そうだけど……でも、面白いねぇ♪ どんな力を持ってるのか試してみたくなるぅ~。」

 彼の軽い言葉にシオンは驚き、さらに焦った様子で強く袖を引っ張った。

「いやいや……レイニーさまぁ、試すとかありえないですってばぁ! 本当に危ないんだからぁ……! あいつが暴れると森が全部消えちゃうんだぞっ!」とシオンは必死に説得しようとするが、レイニーはどこか楽しそうな雰囲気のままだった。

 そんなやり取りをよそに、ガルムは二人を静かに見つめながら様子を伺っているようだった。その目には興味と警戒心が入り混じり、次の行動を決めるための計算が垣間見える。

 レイニーは少しだけ真剣な表情を浮かべながらガルムの目を見据えた。

「……まあ、とりあえず話してみるかぁ~。それがダメならその時考えればいいよねっ。」

 そうレイニーが呟き、ガルムに対して静かに歩み寄る。

 一方で、シオンは「わ、わぁぁ……レイニーさまぁぁ!」と叫びながら、さらに焦って彼を引き止めようとしていた。その必死な様子に、レイニーは少しだけ振り返りながら、楽しそうな笑みを浮かべた。

「……って、くっさ~い! ねぇ、きみ……臭いよぅ! ねぇ……ちゃんと水遊びしてるぅ?」

 レイニーは顔をしかめながらガルムを見つめ、軽い口調で話しかけた。その言葉に、シオンは驚きつつもさらに怯えた様子を見せた。

 ガルムはその言葉がちゃんと通じているのか、大きな頭を動かしながら自分の臭いを嗅ぐような仕草を見せた。その動作にはどこか気まずそうな雰囲気が漂い、巨大な存在でありながら少しだけ人間味を感じさせるものだった。

「ほら、シオンくん。意外と素直じゃん、この子。」

 レイニーは楽しげに言いながら、ガルムの反応を観察していた。一方で、シオンは「いやいや、そんなこと言ってる場合じゃないですってばぁ!」と焦りながら離れた木の裏に避難をしていた。

 ガルムは俺に興味を持ったのか、巨大な頭を動かして匂いを嗅ぎながら、大きな腕を振り上げてきた。その仕草はまるでおもちゃを扱うような軽い動きで、前足の肉球で叩いてくる素振りを見せた。敵意も殺意も感じなかったが、その圧倒的な体格と力に、瞬時にバリアを張って防ぐしかなかった。

「危なぁ~! 遊びだか確認だか知らないけど……俺よりデカい腕で叩かれちゃ普通なら死んでるってぇ~。」レイニーは心の中で叫びながら、冷や汗をかいた。こわいこわい。ガルムの動きは遊びのように見えるが、その巨大な腕の威力を考えると、まともに受けたら命の保証はない。

「あぁ、あれを避けようとして動いたら、爪に当たっちゃうだろ。それで、シオンくんは恐れてるのかな?」

 レイニーはふとシオンの怯えた様子を思い出しながら考えた。確かに、普通なら怖くて避けようとするだろう。でも、あの鋭くて凶悪な爪をまともに喰らったら即死だろうなぁ……。

 シオンは遠くの木の陰から、怯えた声で叫んでいた。

「だからぁ……レイニーさまぁぁ! 逃げましょうってばぁ!」

 その必死な様子に、彼が過去にガルムと関わり、痛い目に遭ったことがあるのだろうと感じた。

 俺はガルムの動きをじっと見つめながら、どう対応すべきかを考えた。遊びのつもりで叩いてきたとしても、その力は尋常ではない。
 
「ちょっとぉ~危ないなぁー! まったくぅ。それよりキレイにするから動かないでーっ!」

 レイニーはガルムに腕をかざし、洗浄魔法を掛けた。その魔法の光がガルムの暗黒の毛皮を包み込み、徐々に汚れを取り除いていく。

 ガルムはその行動に対して何の抵抗も示さず、まるで信用しているかのように身動き一つせずにお座りの体勢になった。その巨大な体が静かに佇む姿は、威圧感を放ちながらもどこか穏やかさを感じさせるものだった。

「ふむ、意外と素直じゃん。」

 レイニーは軽く笑いながらガルムの様子を観察した。一方で、離れた場所の木の陰から俺たちを見ていたシオンは、驚いた顔をしていた。

「えぇっ!? ガルムが動かないなんて……そんなことあるのぉ?」と、信じられない様子で呟きながら、怯えた表情を浮かべていた。
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