転生したら王族だった

みみっく

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第一章 - 出会いと成長

81話 シオンと仲直り

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「んっ!」と、レイニーがオーラと槍を消し、柔らかな笑顔で腕を広げた。その姿をチラッと見たシオンは、恥ずかしそうに、そして気まずそうにしながらも、そっとレイニーに抱きついた。

「……ごめんなさい……レイニーさまぁ……」シオンは安心したのか、ホッとしたのか、涙をぽろぽろと流しながら謝罪した。その様子にレイニーは優しく微笑みながら、シオンの頭を撫でて、ぷにぷにと柔らかな頬を触った。

「……ボクの、ほっぺ……すきなの?」シオンは落ち着きを取り戻し、レイニーの膝の上に座りながら振り向き、首を傾げて問いかけた。その仕草は愛らしく、思わず微笑んでしまうほどだった。

「うん。気持ちが良いかな~好きだよ。ぷにぷにって♪ そうそう……ごめんねのキスしてもらおうかなぁ~」レイニーはニヤリと微笑みながら頬を差し出した。

「我は……まおうだぞぉ……。そんな……こと、しないぞぉ……しない……。ちゅ……っ。はぅ……。んっ、ちゅっ……」シオンは一度拒否しながらも、レイニーの頬をじっと見つめていた。そして目の前に差し出された頬に唇が触れると、その感触が心地よかったのか、自分から何度もキスをしてしまった。

 その瞬間、シオンは我に返り、顔を真っ赤に染めて俯いた。しかし、その表情にはどこか嬉しそうな色が浮かんでいた。そんな可愛らしいシオンの頬に、レイニーはそっとキスを返した。

「ぁ……うぅ……レイニーさまぁ……」ますます顔を赤くして、振り向きレイニーの胸で顔を隠した。

「仲直りのキスだよ~」と言いながら、レイニーはシオンの頭を優しく撫でた。

「はい……。仲直り……ありがとうございます……はぅ……」シオンはお礼を言いながら甘えるようにレイニーに寄り添った。その姿に、完全に敵意や悪意、害意が消え去り、代わりに忠誠と好意が感じられるようになった。

 しばらくして、セラフィーナがゆっくりと目を覚ました。「ん……っ。はっ……あら?えっと……シオン?あなた、自分のやったことを分かっているのかしら?……あれ?レイニー様?……なぜ、仲良くされている?」状況が理解できず、戸惑いながら隣に座るセラフィーナ。その表情には困惑が浮かんでいた。

 シオンはセラフィーナに向き直り、素直に頭を下げて謝罪した。「……ごめんなさい。もう二度とおかしな考えは持ちません……レイニー様に忠誠を誓います。」その言葉には真剣さが込められていた。セラフィーナは嘘を見破るスキルを持っているため、シオンの言葉が本心であることをすぐに理解した。

「……次は、許しませんからね……シオン!」セラフィーナは厳しい口調で言い放ったが、その目にはどこか安心した色が見えた。その一言で、シオンはセラフィーナに対して強くものを言えなくなり、完全に頭が上がらなくなった。

「……うん。しないよ。」シオンは天使のようなセラフィーナに素直に返事をし、その場の空気は少しずつ穏やかさを取り戻していった。
  
 改めてシオンに森と魔物の維持管理、そして村の結界の管理を任せたところ、彼は問題なくその役割をこなしてくれていた。数日が経つ頃には、村の仲間たちも自然とシオンに気軽に話しかけるようになり、少しずつ打ち解けていった。

「シオン、凶暴なウサギを捕まえてだって!」ミアが元気よく駆け寄り、声をかける。目を輝かせながら頼みごとをするミアに対して、シオンはムスッとした表情を浮かべる。

「我に……気安く声をかけるなぁ!不敬なヤツめ……」と言いながら、ムスっとした可愛い顔で睨みつけてきた。その威厳ある(?)態度に、ミアは思わずニヤリと微笑んだ。

「え?ふぅ~ん……わかったぁ。そう言ってたってレイニーくんに伝えておくねっ。じゃあ♪」ミアはいたずらっ子のような笑顔を浮かべ、そそくさと立ち去ろうとした。

「えぇ?わぁ、わ……。だめ、だめっ!フロストホーンだな。わかった、捕獲しておく!で、レイニー様は、どこにいるんだぁ?ボクが、直接届けるっ!なぁ、どこだ?」と、シオンは慌てた表情に変わり、思わず必死に声を上げた。

「えっと……り、リビングにいたよ。」ミアは驚きながらも、シオンの焦った反応に思わず素直に答えてしまった。

 シオンが結界の外に出かけてすぐに戻り、リビングに向かってきた。その表情はまるで子供が親に褒めてほしいと願うような、愛らしい仕草で、思わず微笑んでしまうほどだった。

「ありがと、シオン。これ美味しいよねぇ~!あとで、一緒に食べようね♪」レイニーが優しく声をかけると、シオンは嬉しそうに頷きながら答えた。

「うん。たべるぅ。」甘えた声で素直に返事をするシオン。その仕草があまりにも可愛くて、レイニーは思わずシオンを抱き上げ、膝の上に乗せてぎゅっと抱きしめた。

「はぅ……。わ、我は……まおうだぞぉ……。不敬だ……ぞぉ……お前なんか……すぐに、たおし……。ううぅ……、レイニーさまぁ、ほっぺも……触って……?」シオンは一度威厳を保とうとするものの、甘えた声でお願いをしてきた。その姿にレイニーは微笑みながら、ぷにぷにと柔らかな頬を触り、そっと頬ずりをした。

 シオンは満足げな表情を浮かべながら、静かにリビングを後にした。その背中には、かつての魔王の威厳とは異なる、どこか愛らしく穏やかな雰囲気が漂っていた。

 リリスはその姿を見送りつつ、首を傾げながら疑問を口にした。「……なぁ、レイニー様……アイツ、本当に魔王なのかぁ?ただの、甘えんぼうに見えるけど……?」

 レイニーはクスリと微笑みながら答えた。「たしかに見た目は……ね。でも、からかったり、怒らせたりしたらリリスじゃ対応できないんじゃない?魔王の力は、そのまま残してあるからさぁ~。」

 リリスは驚いた顔を見せたが、さらに続くレイニーの言葉に思わず息を呑んだ。「確認をしたければ……渡した首飾りを取ってみれば分かるよ♪」その首飾りは、シオンの魔王の威圧や負のオーラを無効化する付与魔法が施されており、皆がそれを身に着けているおかげで、彼の存在がより穏やかに感じられるようになっていた。
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