転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

151話 フィオナと連絡が途絶えた?

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 久しぶりに王城へ帰宅し、近況報告をしていると、母親がふと思い出したように口を開いた。

「最近、フィオちゃんが来ていないわね……。レイニーが放ったらかしにするから、可哀想に。」母は呆れたようにため息をつきながら、こちらを見てくる。

 そういえば……確かに最近フィオナと会っていない。出した手紙の返事も届いていないし、連絡もないな……。放ったらかしにしすぎたのか? いや、もしかして他に仲の良い友達ができたのかも……それならそれでいいけど、少し寂しいなぁ。

「こっちから遊びに行くのも良いかもな。ビックリさせてやろーっと♪」ふと、思いついたように口にした。

 メンバーは……途中でアリシアの領土を通過するし、アリシアを連れて行くかぁ。彼女はグリムファング王国の状況を把握しているし一時帰宅を名目にすれば、ついでにフィオナのところへ行く口実にもなるしな。

 あ、ついでじゃないや。メインはフィオナに会いに行くだなぁ。

 王城を出る準備をしながら、少しだけ胸が躍る。フィオナの驚いた顔が目に浮かぶようだった。

 俺はアリシアに、グリムファング王国へ向かうことを伝えた。すると、彼女は目を丸くしながら、少し動揺した様子で聞き返してきた。

「……それって、わたしに国へ帰れと……!? ……な、なんででしょう? わ、わたし、なにかしました!?」声には焦りが滲んでいる。

「ん? え? 違うってっ!」俺は慌てて手を振りながら説明した。「俺の友達に会いに行くために、ちょっとアリシアの領地を通るだけだよ。それで、ついでにダミエンに近況報告でもどうかなーって思ったんだよ。」

 アリシアはしばらく俺を睨みつけるようにじっと見つめていたが、やがて深く息をついて肩の力を抜いた。「ビックリさせないでくださいよっ!? もお!」そう言いながら、ホッとした表情を見せた。「でも、ありがとうございますっ。久しぶりにゆっくりするわよー♪」

 その様子に安心しつつ、俺は少し真剣な顔で付け加えた。「あ、他の人には内緒で頼むね! 連れて行くと……問題が起きる事しか想像できなくなる……。」問題を起こさないセラフィーナやルミエールに留守を任せるのが賢明だった。

 アリシアもその意図を理解したようで、「あ、あぁ……ですね。」と頷いた。しかし、その次の瞬間、少し顔を引き攣らせながら言葉を続けた。「……グリムファング王国が吹き飛ぶイメージがしてきますね……。」

 俺たちは極秘に準備を進め、翌日、こっそりと転移をしてグリムファング王国の近くの森へと降り立った。辺りには静寂が漂い、木々がざわめく音だけが響いていた。フィオナと会うまでに、どんな事態が待ち受けているのか――少しばかり緊張が走った。

 グリムファングの森に面した町は、防護壁に囲まれ、まるで城塞のような厳重な構造になっていた。町の入口には武装した兵士が大勢立ち並び、監視の目を光らせている。その緊張感のある空気に、俺は眉をひそめながら呟いた。

「……厳重なんだな? そんなに頻繁に魔物が町へ入り込むのかなぁ?」

 すると、近くにいた警備の兵士の一人が冷静に答えた。「いえ、極稀にですが……この森の魔物は異様に強いので、それに備えて配備されている兵士ですね。」その言葉には、どこか怯えにも似た警戒心が滲んでいた。

 俺たちが町の入口へ近づくと、兵士たちが次々と集まり、不審な動きを見せた。やがて、一人の兵士が前へ出て、硬い表情で告げる。

「悪いな。王国への立ち入り禁止になっているんだ。他の町へ行ってくれ。」

 その言葉を聞いた瞬間、アリシアの表情が変わった。

「ちょっと、貴方ね!」アリシアは不快感を露わにし、大きな声で兵士を睨みつけた。しかし、周囲の状況を考え、ぐっと息を飲んだ後、大きくため息をつきながら落ち着きを取り戻した。「はぁ……まあ、貴族が徒歩で護衛も連れずにいるのだから、仕方ないわね。」と言いながらも、その顔にはまだ納得できない様子が残っていた。

 そこで、アリシアは気を取り直して冷静な声で言い直した。「わたしは、戦略指揮官ダミエンの娘よ。」

 しかし、兵士はその言葉を鼻で笑いながら答えた。「は? そんなところのお嬢様が町娘のような格好をして、護衛もつけずに国外へ? ありえんだろ。ウソをつくなら、もっと上手く嘘をつけよな。帰った帰った!」そう言うと、犬を追い払うように手でシッシッとジェスチャーをする。

 その態度にアリシアの眉がピクリと動く。「……ここの隊長を呼びなさいっ! まったく……!」落ち着きを取り戻していたはずの彼女が、再び怒りの炎を燃やす。

『あぁ~あ~しーらなーい!』俺は時間が掛かりそうだと察し、アリシアの怒りに巻き込まれないように少し離れた場所に座り込んで観戦することにした。

 まあ、隊長を呼べと言われて、『分かりました』って素直に呼んでくる兵士はいないだろう。そんなことをしていたら隊長は大忙しになってしまう。

 すると、後ろから多少偉そうな兵士が現れ、アリシアを見据えながら低い声で言った。「嬢ちゃん、諦めが悪いと拘束することになるぞ!」

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