転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

170話 フィオナの魔法のお披露目

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 ルナシオン王国としては、国内の貴族よりも周辺国の王子との結婚のほうが、王国全体の力を強化するには有効だと思ったのだろう。その意図を感じ取ると、なんとも言えない気持ちが湧き上がった。

「……親に言われて、俺と仲良くしてるとか、そういうことなのか?」レイニーはふと気になり、隣で嬉しそうにしていたフィオナに尋ねた。彼女が楽しそうな様子を見せるたびに、どこか引っかかるものを感じていたからだ。

 フィオナはその質問に驚いたような表情を浮かべた後、少しムスッとしながら答えた。「え? そんな訳ないじゃない! 親に言われたからって、わたしがこんな風に嬉しそうにすると思う?」

 彼女は言葉を切り、一瞬考えるような仕草を見せてから続けた。「まあ……親に言われたら従うかもしれないけど。でも、わたしから積極的に動いたりするなんて絶対にないわ。そういうのは全然面白くないもの。」

 その言葉にはフィオナらしい率直さが込められていて、彼女の真剣な気持ちがはっきりと伝わってきた。レイニーは彼女の反応を聞いて少し安心しながらも照れ笑いを浮かべる。「そっか、ならよかったよ。フィーがそんなこと考えてるなんて嫌だしな。」

 フィオナはその言葉に満足したような笑みを浮かべながら、「そうでしょ? だって、レイニーくんといるのが楽しいからよ。それだけなの!」と胸を張って言った。その無邪気で素直な言葉に、レイニーは心がほっとするのを感じた。

 それに、思い返してみれば……フィオナと初めて出会った時も、あの子はムスッとしてそっぽを向いていたよな。親から何か言われていたとしたら、もう少し愛想良くしていてもおかしくないはずだ。むしろ、その時の彼女の態度は、王女らしいというか、こちらにまったく興味がないように見えていた。

 それを振り返ると、彼女が親の指示で俺に近づいている可能性は低いだろう。実際、あの時は俺から話しかけてみて、少しずつ距離を縮めて仲良くなったくらいだったし。

 それに……今ではあんなに嬉しそうに俺に寄り添ってきたり、笑顔を向けてくれる。あのフィオナが、親から言われたからという理由だけでそんな態度を取るとは思えない。彼女の行動や言葉には、確かな自分の意志が感じられる。それが、俺に向けられているのだと思うと、少し不思議な気持ちになる。

 馬車で直接、小高い丘までやって来た。ここは見晴らしが良く、広々とした開放的な空間だ。周囲は青々とした林に囲まれていて、穏やかな風景が広がっている。その林の奥から、どうやら低級の魔物が現れるという話だ。

 ただ……林の方を見つめながら、じっと魔力の流れを感じ取ってみると、どうにも不穏な気配が漂っている。結構な数の魔物の反応がはっきりと伝わってくるのだ。それだけならまだしも、その中には明らかに低級ではない、少なくとも中級程度の魔物の存在も混ざっているようだ。

「フィーが相手するには少し多すぎるかも……」と内心呟きながらも、彼女がここにどれほどの覚悟と練習の成果を見せるつもりなのか、気になってしまう。目の前の広い丘とその奥に広がる林は、穏やかな光景でありながらも、どこか不気味な緊張感を漂わせていた。

 とはいえ、俺も一緒にいるし、何かあったらバリアを張れば安全だ。無秩序の森の魔物に比べれば、ここに現れる魔物なんてプロの格闘家と保育園児ほどの差がある。そう考えると、大して心配する必要はないだろう。

 そんなことを考えている間に、護衛と衛兵たちが丘に拠点を作り始めていた。しっかりした手際でテントを設営し、周囲を警戒している。彼らの動きには緊張感があり、場の空気を引き締めているようだ。

 え? あ、あぁ……なるほど、そういうことか。てっきり林の中に入り込んで魔物を討伐するのかと思っていたけれど、違ったんだ。フィオナはキレイな薄水色のドレスを着たままだし、よく考えれば、大切な王女様を魔物が潜む林に入れるなんてあり得ないよな。

「わたし、ここから魔法で攻撃するの! レイニーくん、ちゃんと見ててね!」とフィオナが嬉しそうに言いながら立ち上がった。その瞳は期待に輝いていて、今日の成果を見てもらおうという気持ちがひしひしと伝わってくる。そんな彼女の様子を見て、俺は思わず微笑みながら頷いた。

 フィオナがレイニーの手をしっかり握りながら、林の方へと歩き出した。その瞬間、草むらの中からガサガサと音が響き渡り、何かが動いている気配がした。レイニーはフィオナの行動をじっと見守りながら、警戒心を強めた。

「来たわね……!」フィオナが低く呟き、すぐに構えを取ると詠唱を始めた。その声は澄んでいて力強く、彼女の体が次第にふんわりと輝き始める。彼女の美しい金髪は優しく風に揺れ、薄水色のドレスもまるで魔法に呼応するかのようにふわりと舞っていた。

構えた手には赤々と輝く小さな火球が現れ、その光は周囲の木々や草むらを照らし出す。火球は彼女の魔力に反応して徐々に力を増し、見る者に期待と緊張を抱かせる。
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