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第一章
Ⅰ
しおりを挟む両親が他界したのは、私が18歳、妹の紅が16歳の時だった。
雨の日の交通事故。
不運でしかなかった。
悲しみにくれる暇はなかった。
やらなくてはならないことは山積みだった。
あの頃の私は、紅と生きていくことだけを考えていた。
大学は奨学金制度を使った。
勉強が趣味のようだった私の生活が、幸か不幸か役に立った。
薬剤師を目指して、薬学部に進学した。
安定して、紅とも生活できる収入が得られるだろうと思った。
紅は高校卒業後働くと言った。
でも本当は英語を学びたいようだった。
好きな海外アーティストの通訳になるのが夢と言っていた。
紅に夢を諦めてほしくはなかった。
紅を説得するのは骨が折れた。
元々、勉強は苦ではない。
大学の成績も維持し、それ以外の時間は働いた。
紅も努力していた。
大学進学後は留学の機会を逃さず、試験のための勉強にも打ち込んでいた。
生活と留学の必要経費のために紅も働いていた。
紅は私と違って友達が多い。
紅が友達と遊ぶ時間が減ってしまったのは心苦しかった。
大学卒業後は国家試験を突破して、無事 薬剤師の職に就いた。
両親が他界してから約6年。
走り続けた6年。
新卒一年目の帰り道、夜空を久しぶりに見た気がした。
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