本当は、愛してる

双子のたまご

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第九章

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「本当に良いの?」

お会計を終わらせて弥鶴君と一緒にお店を出る。
瑠璃ちゃんはお手洗いへ。
店の出口から少し離れたところで瑠璃ちゃんを待つ。

「いーよ。
元々今日は俺と瑠璃で奢る予定だったの。」

「…ありがとう。ご馳走さまでした。」

「いえいえ~
今度、翠ちゃんの誕生日プレゼント買いに行こうって瑠璃をデートに誘う予定だったので。
ダシに使わせていただくお礼も兼ねて。」

「弥鶴君…遠慮なくなってきたね…」

「まぁな」

二人で笑う。

「はぁ~いい誕生日だった。」

「お、そうかぁ!
それは良かった良かった。」

「次は二人の記念日、祝わせてよね」

「はは、そうだな!」





「おい!!!」





急に怒鳴り声が聞こえた。
やだ、酔っぱらいのケンカ?
振り向こうとした時、凄い力で腕を引っ張られた。

「ちょっ、」

弥鶴君の焦った声が聞こえる。
引っ張られた先で固い何かにぶつかる。
人?誰、何。
引っ張った人の顔を見る。




…なんで。









「…たつみさん」










なんで、ここに。
龍海さんは無言でこちらを見下ろしている。

「ちょっと!なんですか急に」

弥鶴君が慌てて間に入る。

「…誰だこいつは。」

「…」

「翠ちゃん、知り合い?大丈夫?」

「こいつは君の恋人なのか。」

龍海さんは弥鶴君のことを無視して質問を続ける。

「それとも君はこいつのことが好きなのか」

「なにを、言って…」

「お前は翠の何なんだ。」

固まってしまって要領を得ない私の返事に痺れを切らしたのか、矛先が弥鶴君に向いた。

「っ、龍海さん、」

「お前、翠のことが好きなのか。」

「は…?」

「龍海さん、やめてください!」

「君はこいつを庇うのか!」

「ちがっ」






「ちょっと!!!」






お店の方を振り返る。
瑠璃ちゃんがお店から出てきていた。

「私の友達になんなの!」

「瑠璃!」

弥鶴君が瑠璃ちゃんに駆け寄る。

「危ないから来るな」

「だって翠ちゃんが、」

「お前に何かあったらどうすんだ!」

「弥鶴君!」

二人がこちらを振り向く。
私を掴む龍海さんの手にぐっと力が入った。

「…大丈夫だから。この人、知り合いだから。」

「翠ちゃん…」

「瑠璃ちゃん、びっくりさせてごめんね。
弥鶴君、瑠璃ちゃんのこと送ってあげて。」

「…本当に大丈夫か?」

「うん、また職場でね。」

「…わかった。行こう、瑠璃」

「翠ちゃん…」

「大丈夫だよ、今日はありがとう。」

「…うん…」

二人とも心配そうな顔をしながら、何度か振り返っては駅の方へ向かっていった。

「…」

「…」

「…離してください。」

「…嫌だ。」

「どうして」

「逃げるかもしれないだろう」

「逃げないです」

「…」

「逃げたってどうせ追い付かれるでしょう。」

「…君と、話をしたいだけだ。」

「…分かりました。」

「…」

そっと、龍海さんの手が離れた。
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