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第二章
Ⅱ
しおりを挟む「…あの薬局の…この子か。
この子だったんだね。」
「…獅音兄さん、たっくん…」
「…」
「…ごめんね、龍海。」
「何故謝るんだ。」
「…僕が、調べさせたから。
知らなくて良いことだったかもしれないのに。」
「別に俺はこの女のことはなんとも…っ、」
兄さんの顔を見て、言葉が詰まる。
「…明日、行ってくるよ。
龍海は来なくても、大丈夫だよ。」
「…いや、俺も行く。」
「…そう。」
兄さんが席を立ち、部屋を出ていく。
黙っていた琥珀が口を開く。
「…獅音兄さんはさ、嬉しかったんだと思うよ」
「…」
「獅音兄さんもたっくんも、私に太陽の下歩いて欲しいって言ってくれるでしょ…
獅音兄さんは、たっくんにも同じように思ってたと思うよ…」
「それは…」
「たっくんが獅音兄さんに着いていって、獅音兄さんは安心したと思うけど…
同じくらい、辛かったと思うよ。」
「…」
「だから、たっくんが恋したかもって、嬉しかったんだよ。
思春期なんて、あってなかったようなものじゃん…
たっくんを太陽の下へ戻せた気がしたんじゃないの。」
「兄さんが、そう言ってたのか。」
「ううん。でも…私も、そう思ったから…」
雨が、降っていた。
「行こうか、龍海。」
「…兄さん。」
「…なぁに」
「俺は、兄さんに着いてきたことを後悔していない。」
「…」
「兄さんが俺や琥珀を守ってきてくれたから、俺達も兄さんを守りたいと思ったんだ。」
「…」
「俺達皆、太陽の下にいると思う。」
「っ、」
「…」
「…龍海。」
「あぁ。」
「行こうか。」
「あぁ。」
「…ありがとうね。」
「…あぁ。」
「こんにちは。はじめまして。
千歳 獅音と言います。よろしくね。」
源元 翠は、真っ黒な瞳でこちらを見ていた。
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