7 / 52
第二章
Ⅰ
しおりを挟むうちの抗争に巻き込まれた、源元 紅。
兄さんと一緒にこの世界に入って、一般人を巻き込んでしまったの初めてだ。
「…ねぇ龍海。被害にあった子、調べてくれる?」
「…」
「その子の家族に、会いに行こう。」
「…何故」
「謝りに。」
「うちの組員が撃ったんじゃない。」
「そういうことじゃない。このままにしちゃ駄目だ。」
「…」
「…自分がやったことは良いことも、悪いことも、返ってくるよ。」
「…」
「僕達の仕事は良いことじゃないね。悪いことが多いね。
でも悪いことに慣れちゃ駄目だ。
もしも、
…もしも、僕達家族に同じことが起きたとき…よくあることだと、悲しめない人間になっちゃ駄目だ。」
「…あぁ。」
「…被害にあった子、調べてくれる?」
「…分かった。」
「…うん、ありがとう。よろしくね。」
兄さんの疲れた笑顔を、久しぶりに見た。
一般人一人、調べることなんて造作もない。
部下に指示を出し、三日で大体出揃った。
源元 紅。両親はいない。仕事は通訳者。
抗争があった日は、着いていっていた日本人歌手の海外ツアーから戻ってくる日だった。
家は俺達の家からさほど遠くない。
駅から10分のマンション。
姉と二人暮らし。姉の名前は源元 翠。
姉は薬剤師。調剤薬局に勤務。
…俺達の家の近所の調剤薬局。
世間は狭いものだと思った。
あの薬剤師の知り合いかもしれないな。
姉の顔写真も添付されている。
この人に、会いに行くのだ。
写真に目をうつす。
知り合い、程度なら良かったのに。
添付された写真にはあの薬剤師の女が写っていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる