最深部からのダンジョン攻略 此処の宝ものは、お転婆過ぎる

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第五話 出発準備 その1

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お前、簡単だろう?  小鬼たちの出入りしているとこから歩いて行くだけで良いんだから」
 広間からすぐにでも出たいノイは出口の方を指さし公一を急かす。

「ちょっと待って、武器とか色々な事を考えないといけないですよ」
「ノイ様、ここから降りられますか?」

「ああ、問題ない。お前が我が半身となったおかげで力が半分になったからな。変化する必要もないぞ」
 ノイは祭壇からひらりと飛び降り、大きく伸びをして肩を回した。
「見ろ、なんともないぞ」

「さっき隠れた場所にどなたかの遺骨が有りました。あそこに行きましょう。何か役に立つ物を持ってるかもしれません」

「ああ、あいつの所か。たしか荷物を持ったてな。行ってみるか」
 
 早足で歩きながら公一はノイに話しかけた。
「大丈夫みたいですね」

「もちろんだ。母なる神のおっしゃるとおり、呪いの罠からすり抜けることが出来た。まあ力も半分だ。自由になれたんだ我慢もするよ」

 二人は遺骨の横たわっている場所に戻った。
「こいつは私がここまで運こんでやったのさ。子供のかっこになっても造作もなかったが、荷物はどこに置いたかな。随分前だったからナア」

「どうやって、ここまで来たんでしょうね。あと目的とか、何か言っていませんでしたか?」

 ノイは公一と横たわる白骨を見比べながら
「ああ、王家の印とかを取りに来たらしい。此処に来た時は手負いで息も絶え絶えだったからな。詳しくは判らんよ。あと指輪はこいつから貰った」
 ノイは右手を上げ薬指にはめた指はを公一に見せた。

「ここまで来る間に、随分と苦労した様子ですね」
 公一は、しゃがみ込んで、まだ骨に残っている矢じりを触りながら呟いた。
 
 ノイは呆れ気味に、
「そりゃそうだろう。ここが一番の奥だからな」

「え⁉ これ以上深い所は無いって意味ですか?」

 ノイは公一の顔をまじまじと見つめた。
「えー、お前、今頃何を言っているんだ」
 
「じゃ、この広間から出ると強い奴らがゴロゴロいるって事ですよね」

「お前、当たり前の事聞いて来るなよ。私が捕まっていて財宝もこれだけ置いてあるんだぞ。お前、もしかして頭が……。胸だけでなく頭もやられていたのか可哀想に」
 ノイは肩を落とし溜息をついた。

「勘弁して下さいよ。俺いきなりですよ。ここに連れ込まれたの」
 公一はがっくり肩を落とした。

 ノイは公一の抗議を無視して続けた。
「まあ、おまえの頭がアレなのこの際だから仕方がない。それより荷物を探すぞ」

「あー、もう、格式が落ちるような返事を……っいてて」
 返事は背中への平手打ちだった。

 公一は叩かれた背中辺りをさする仕草をして
「でも、さっきの小鬼達に、この場所見つかりませんでしたね」

「ああ、こいつの寝てる場所の辺りは聖域だから奴らは自然によける。判っていたとしても、あいつら程度の力では入ってこれない。悪さも出来んよ。だから、お前にも此処に隠れるように言ったんだよ」

「財宝を運び込めなかったから、この場所だけ広くなっているのか」

 公一は白骨が身に付けていた衣類を調べながら
「ああ、マントの留め具に紋章が入ってますね」

 ノイは少し離れた宝の山の旗を指さした。
「アレと同じだな。こいつと関係あるかもな」

 公一はノイの指さす方に身を向け、
「おお、旗だ。罰当たりだけどあれをもらっていこう。布が欲しかったんですよ」

 二人は手分けをして辺りを物色し使えそうな物を探した。
 当然のことながらノイは役に立たず公一について回るだけだったが。
「私には人間の道具は良くわからん。お前の好きで良いぞ」
 この一言だけだった。

「さて、使えそうなものはこれだけですね」
 公一は何とか使えそうな道具を床に並べた。
 旗、火打石、打ち金、火口、麻ひも、マント、皮の上下の服、革製の靴、ロープ。それと革の肩掛けのカバン。中には短剣と砥石、ローソク、カンテラ、裁縫道具、予備の着替え。武器はハンマーと拾った変わった矢じり付いたの矢。

「さて、この中で一番大事な物がて出来ました。本です。もしかしたら魔法の力が宿ってるかもしれません」
 本はページをめくるたびに羊皮紙は乾いた音をたてる。
 
「ああ、助かる。簡単な絵地図が書いていりますよ。これで闇雲に進まなくてすみます」

 ノイは鷹揚に頷いた。
「そっちの方は、お前に全て任せた」

 公一は地図から目を離さずノイに尋ねた。
「じゃ、ノイ様は一体何をしてくれるのですか」

 ノイは公一の正面に立ち胸をはった。
「細かい事はお前がやれ、私の望みは敵であるズンダをおもっいっきりぶっ飛ばすことだ」

「ノイ様らしいや、しかし我慢も必要な時も有りますよ」
 ノイは返事もせず視線を逸らす。

 公一はヤレヤレと溜息をつしかできなかった。
「じゃあ、まずは自分の器用さを試してみますか」

 公一は並べた荷物の前に腰を下ろした。

 「ああん、もうノイ様、玉を触らないで下さい」
「もう、突っつかないで。お願いですから。そこは大事なところだからダメです。棒の先もいけません」
 皮を伸ばすようにしごき、手を出してくるノイに文句を言った。

 ノイは公一のやる事、全てに興味を持ち何かにつけ、ちょっかいを出してくる。
「うーん、上手く出来たかな?」
 
 公一は自分の目の前に皮紐を結えたハンマーを吊り下げてバランスを確認した。
 ノイは公一の顔とハンマーを見比べながら尋ねた。
 「さっきから何をやっているんだ?」

 「ちょっとした工夫です。自分の国ではこれを流星鎚って呼んでます。もう少し小さいやつで鎖分銅っていうのも有りますよ」

「それにしても人間って奴は不思議な生き物だな。神からの贈り物だけでなく自分で何かを作るのだから」

「それが神からの贈り物ですよ。大事なのは使い方です」
 公一は立ち上がって
「上手く出来たか試してみましょう」

 小鬼が落としていったハンマーの先には、皮紐で補強したロープが取り付けられている。
「まっすぐ飛んで手元に帰ってくるか良く見てて下さい」

 公一は右手に持ったハンマーを右足で踏み込みながら下手投げの要領で投げる。
 手元のロープがピンと伸びきった瞬間、左手でハンマーを器用に引き寄せ一回転させてから今度は反対側に下手投げで投げた。

 これを何回か繰り返しハンマーの到達距離を伸ばしいく。
 足を踏み変えたりロープを肘で操ったりして投げる角度、方向を調節して行く。

「ふう、まあまあかな。ハンマーの柄が邪魔だけど何とかなるか」
 公一は手を止め
「ノイ様どうです? やってみますか」

 ノイは目を輝かせ大きくうなずいた。
 何回か失敗したもののノイは器用に公一の真似をして見せた。
「やってみたが余り面白くない舞だ。もっと何かなあ、足らんなあ」
 と納得いかない様子。
 公一は苦笑して、
「ノイ様、これは使い方が判らないと本当に踊りぐらいしかなりませんよ」

 ノイは公一を真剣な眼差しで見つめた。
「公一、舞と言う物はだな、母なる神にささげ、人を鼓舞するのもだ。良く見ていろよ」
 いきなり身に着けていた布を捨て美しい裸体を公一の目前に晒した。
 
 ノイの引き締まった体には無駄がなく、それでいて女性の持つ美しい曲線で形どられている。未発達では有るが呼吸に合わせて優しく上下する乳房、肩から流れる腰の線。
そして挑発する様に組んだ腕を天に向かって突きだす。

 ノイは目を閉じてゆっくりと空中に浮かび上がる。
掲げられた手を大きく左右に開き、今度は両手で自分を抱くように激しく体を打つ、その鋭い音は天井に届き地下の広間に響き渡った。

 それが始まりだった。ノイは空中を狂ったように身体をくねらせ舞う。時にはツバメの様に素早く、蝶の様にヒラヒラと飛び鱗粉を撒くように淡い光を放った。
 そのまばゆい光は公一の瞳を妖しく輝かせた。

「戦勝の舞どうた。猛って来ただろう」
 ノイはどうだと言わんばかりに胸をはり公一の前に降り立った。公一の目の前に惜しげもなく晒された、初々しく膨らむ胸はノイの呼吸に合わせ大きく上下した。

 
「この戦勝を願う舞を見た男たちは猛り、必ず戦に勝って帰って来た有難い舞なんだぞ」

「判りましたから早くこれを身に着けて下さい」
 公一は慌ててノイの肩に布を掛けようとした。
 
 ノイはチラリと公一を見て
「それにしても、お前はどこを猛らせているのだ」
 素早く股間に手を伸ばしてくる。
 公一は前を押さえながら後ずっさった。

 ノイは声を立てて笑い公一を指さす。
「そこには何を隠している? 三本目の足か?」

 ノイは笑ながら目尻の涙を拭いて公一の変化をはやし立てた。
「そっちの方は健康そうじゃないか。辛気臭い顔してるから下もダメかと思ったぞ」

「もう、からかうのは止めにして、これで肌を隠して下さい」
「肌を隠したかったら捕まえてみろ」

 ノイは子供を産むには若すぎる形よく引き締まった臀部を見せつけながら、ワザと捕まえられない速さで逃げ回った。

 布を持った公一は反射的にノイのを追いかけた。
 ノイは走りながら公一に声を掛けた
 「自由に走れる、お前が来てくれて本当に良かった」
 捕まる寸前でするりと舞い上がったりして公一を困らせた。

「ノイ様、空中に浮き上がるのは勘弁して下さい。降参しますから」
「なんだ、もう降参か。しょうがない捕まってやろう」
 ノイは公一の胸に身体をぶつけるように飛び込んで来た。
  
公一はノイを優しく受け止めて溜息交じりに尋ねる。
「どうやって飛ぶんですか?」

 ノイは公一の胸から顔を上げ口を尖らせた。
「お前は失礼な事を言う奴だな。私の背中に羽ばたく羽根なんかないぞ」
 と言って背中をみせた。 

 公一はゆっくりと指が触れるか触れない程度でノイの背中を撫ぜてみた。
「すべっすべで何もないですね」 
 ノイはむず痒さに体を丸めて公一を睨んだ。

「変なさわり方するんじゃない。羽根や翼で飛ぶ奴と一緒にするな」
「もう、早くよこせ」
 ノイは手を突き出して公一の持っていた布をひったくった。
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