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第十一話 呪いと門出の歌
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「敵が判れば、なんとか出来るのか?」
先程までの悄然とした姿とは打って変わって、公一を見るノイのは目は爛々と輝きだした。
「それをこれから確かめに行くんです。何か出来る事も有るかもしれません。さあ、入道達の後をつけてみましょう。他の奴と出くわさなければ良いのですが」
公一は自分が始末した小鬼達を他の仲間が探しに来ることを心配していた。
「そうだな、静かに後をつけていくのも面白いかもしれんな」
ノイも自然に声をひそめる様になる。
早速、二人は入道達の後を追った。二人は暗がりの中を行くすぐに身体を左右に大きく動かして歩いている入道達の後ろ姿が見える所まで追いつく事が出来た。そこからは物陰から物陰に動くことを繰り返して後に続いた。
道は歩いて出来た窪み以外は平坦で歩き易い場所だったが、通路の左右には壊れた石像が乱雑に積まれていた。後を追うだけでなく物陰に潜む者がいるか警戒しながらの追跡になった。
入道達の歩く思い足音で自分たちの気配は簡単に消すことは出来る。しかし敵も同じ条件である事を公一は忘れてはいない。
入道達は通路を左に曲がり公一達の視界から外れた。今のところは正面に続く通路からは誰もやってくる気配はない。
ノイは曲がり角に潜んでいるかもしれない敵の気配が気になるのか、公一の手首の数珠を指さす。
公一は首を左右に振り近くに敵がいない事を伝えた。
「曲がらず正面から見ていきます。もしこの先から敵が来るようなら挟み撃ちにされますから」
公一は左側からの音を気にしながら正面の暗闇を透かすように見た。
「一旦、隠れましょう。小鬼達だと思います」
その時、正面の暗がりからは重い足音と小鬼達の声が微かに響きだした。程無くして、正面通路からは数匹の小鬼が入道達を率いて姿を現した。
正面通路からこちらへと向かってきた小鬼と入道達は、隠れている公一達には全く気付かずに先程の入道達と合流する為か角を曲がっていた。
二人は暫く間を置いてから注意深く足を進め一団の後について行く。通路わきのに積まれている瓦礫は石だけでなく、壊れた籠など生活を感じさせるが混じり始めた。
通路も終わるようで、一団は部屋と通路を区別する彫刻を施された柱の間を通って行った。そこは入道達の根城の部屋らしく、小鬼の耳障りな声だけでなく入道達のくぐもった声も聞こえてくる。
二人は気付かれないように、そっと中の様子を窺う。
部屋は少し黄色味を含んだ薄暗い光で照らされている。その光の下で小鬼達は忙しく動き回り、のそのそとしか動かない入道達を槍で小突いたりしている。入道達は食事の時間さえ満足に与えられていない様で、歩きながら手に掴んでいるを物を口に運ぶ者もいた。
「なあ、一気に切り込むのも面白そうだな」
「もう大人しくするのに飽きたんですか? あと少しだけ我慢して下さいよ」
そのとき部屋の奥手の方から、悲鳴にも似た野太い叫び声が起こり辺りの空気を震わせた。
禍々しく断末魔を思わせる叫びを聞いた小鬼や入道達は、一瞬だけ動きを止め、声が聞こえる方に向かって慌ただしく動き出した。
「おい、なんか始まったぞ」
公一は身を乗り出して中を覘こうとするノイのズボンの腰を掴んで離さなかった。
「いま飛び出すと、下半身を丸出しで見栄を切る事になりますよ」
「判ってる。食い込むから、きつく持つな」
ノイは振り返るとニヤリと笑い、のの字を書くように大げさに腰を振って見せる。
奥の方から凄まじい叫び声を上げて、一回り体の大きい入道が姿を現わした。
その入道は苦悶の表情を浮かべながら、片手で頭を抱えもう片方の手は乱暴に振り回している。
暴れる巨体を押さえ込もうとして、他の入道達が必死にしがみつくが収まる気配は全くない。挙句の果てには振り払われた入道が小鬼を巻き込み押しつぶしてしまった。
暴れ回る入道の後姿を一目見てノイは眉をひそめた。
「あれだ、暴れている奴の首だ、後ろに食いついている奴だ。判るか」
身を乗り出して今にも部屋に入って行こうとするノイを公一はしがみついて止める。
「わかってる。殴りこんだりしないから、お前が落ち着け。奴の首を見みろ」
暴れ回る入道が一瞬だけ背を向けた時に、首には毒々しい色をした赤い瘤が見えた。
公一は半ば強引にノイを引っ張り、二人は元いた場所に転がり込んだ。
勢いが付きたせいで、ノイが公一を組み伏せる形になった。
「尻がみずおちに食い込んだ」
ノイはうめく公一を無視して馬乗りになったまま興奮気味に話し始める。
「首についている奴は不味いぞ」
ノイは公一の上でもぞもぞと腰を動かしながら自分の話し易い姿勢を取った。
「男を組み伏せて話すのも良いもんだな」
「そ、そんな事いってる場合ですか。説明の続きををお願いします」
「あれ、お前この格好は嫌だったのか」
ノイは悪戯っぽく笑い、ピンク色の舌を少しだけ出して自分の唇を舐めた。
公一に身体を擦りつけながら、口を公一の耳元まで近づけ囁くように説明を続けた。
「あの赤い奴は血を吸う虫の腹だ。今は腹一杯に入道の血を溜めこんだに違いないぞ」
公一はノイに衣擦れの音、ノイが耳に吹つけてくる息使いに動揺してしまう。隠そうとしても声は自然に上ずってしまっていた。
「じ、自分の国にも似た奴はいたので何と無く判ります。あれが取りつくとどうなるのですか?」
「邪道の技でな、下位の部族を強引に支配する時に使う。あれが憑りついて居る時は悦楽夢の中、離れれば悪夢と苦痛しか残らん。いまだにあの邪法が使われているのか」
「そこであれが離れる時に別の奴と付け替えるのさ。知恵の回らない奴らは、まじないで助けてもらったと信じる。同族間の結束が強い奴等ほど簡単に騙されるんだ」
「苦しいから暴れるのか。禁断症状と同じだ。無理に取ることは出来ませんか?」
「試したことは有るがダメだった。狂い死にしたよ。血を吸われて弱って死ぬか、狂って死ぬかどちらかだったな」
ノイは大きくため息をついた。
「今の奴が死んでしまえば次の奴に憑りつかせる。そうすれば、ずっと支配する事が出来る。弱みに付け込むのさ」
部屋の方からは、一層激しさを増した音が響いて来る。
「そろそろ取り換え時期だろうな。じきに腹ペコな虫を持ってくるな」
公一はノイを力強く抱きしめて囁き返した。
「この忌まわしい支配を止める時は今しか有りません」
「今すぐにか」
「はい」
「よしわかった。一暴れしてやる」
ノイは素早く身体を起こし、離れ際に手を伸ばして公一を確認した。
「良いぞ、縮こまっては無いな。一気に行くぞ」
先程までの悄然とした姿とは打って変わって、公一を見るノイのは目は爛々と輝きだした。
「それをこれから確かめに行くんです。何か出来る事も有るかもしれません。さあ、入道達の後をつけてみましょう。他の奴と出くわさなければ良いのですが」
公一は自分が始末した小鬼達を他の仲間が探しに来ることを心配していた。
「そうだな、静かに後をつけていくのも面白いかもしれんな」
ノイも自然に声をひそめる様になる。
早速、二人は入道達の後を追った。二人は暗がりの中を行くすぐに身体を左右に大きく動かして歩いている入道達の後ろ姿が見える所まで追いつく事が出来た。そこからは物陰から物陰に動くことを繰り返して後に続いた。
道は歩いて出来た窪み以外は平坦で歩き易い場所だったが、通路の左右には壊れた石像が乱雑に積まれていた。後を追うだけでなく物陰に潜む者がいるか警戒しながらの追跡になった。
入道達の歩く思い足音で自分たちの気配は簡単に消すことは出来る。しかし敵も同じ条件である事を公一は忘れてはいない。
入道達は通路を左に曲がり公一達の視界から外れた。今のところは正面に続く通路からは誰もやってくる気配はない。
ノイは曲がり角に潜んでいるかもしれない敵の気配が気になるのか、公一の手首の数珠を指さす。
公一は首を左右に振り近くに敵がいない事を伝えた。
「曲がらず正面から見ていきます。もしこの先から敵が来るようなら挟み撃ちにされますから」
公一は左側からの音を気にしながら正面の暗闇を透かすように見た。
「一旦、隠れましょう。小鬼達だと思います」
その時、正面の暗がりからは重い足音と小鬼達の声が微かに響きだした。程無くして、正面通路からは数匹の小鬼が入道達を率いて姿を現した。
正面通路からこちらへと向かってきた小鬼と入道達は、隠れている公一達には全く気付かずに先程の入道達と合流する為か角を曲がっていた。
二人は暫く間を置いてから注意深く足を進め一団の後について行く。通路わきのに積まれている瓦礫は石だけでなく、壊れた籠など生活を感じさせるが混じり始めた。
通路も終わるようで、一団は部屋と通路を区別する彫刻を施された柱の間を通って行った。そこは入道達の根城の部屋らしく、小鬼の耳障りな声だけでなく入道達のくぐもった声も聞こえてくる。
二人は気付かれないように、そっと中の様子を窺う。
部屋は少し黄色味を含んだ薄暗い光で照らされている。その光の下で小鬼達は忙しく動き回り、のそのそとしか動かない入道達を槍で小突いたりしている。入道達は食事の時間さえ満足に与えられていない様で、歩きながら手に掴んでいるを物を口に運ぶ者もいた。
「なあ、一気に切り込むのも面白そうだな」
「もう大人しくするのに飽きたんですか? あと少しだけ我慢して下さいよ」
そのとき部屋の奥手の方から、悲鳴にも似た野太い叫び声が起こり辺りの空気を震わせた。
禍々しく断末魔を思わせる叫びを聞いた小鬼や入道達は、一瞬だけ動きを止め、声が聞こえる方に向かって慌ただしく動き出した。
「おい、なんか始まったぞ」
公一は身を乗り出して中を覘こうとするノイのズボンの腰を掴んで離さなかった。
「いま飛び出すと、下半身を丸出しで見栄を切る事になりますよ」
「判ってる。食い込むから、きつく持つな」
ノイは振り返るとニヤリと笑い、のの字を書くように大げさに腰を振って見せる。
奥の方から凄まじい叫び声を上げて、一回り体の大きい入道が姿を現わした。
その入道は苦悶の表情を浮かべながら、片手で頭を抱えもう片方の手は乱暴に振り回している。
暴れる巨体を押さえ込もうとして、他の入道達が必死にしがみつくが収まる気配は全くない。挙句の果てには振り払われた入道が小鬼を巻き込み押しつぶしてしまった。
暴れ回る入道の後姿を一目見てノイは眉をひそめた。
「あれだ、暴れている奴の首だ、後ろに食いついている奴だ。判るか」
身を乗り出して今にも部屋に入って行こうとするノイを公一はしがみついて止める。
「わかってる。殴りこんだりしないから、お前が落ち着け。奴の首を見みろ」
暴れ回る入道が一瞬だけ背を向けた時に、首には毒々しい色をした赤い瘤が見えた。
公一は半ば強引にノイを引っ張り、二人は元いた場所に転がり込んだ。
勢いが付きたせいで、ノイが公一を組み伏せる形になった。
「尻がみずおちに食い込んだ」
ノイはうめく公一を無視して馬乗りになったまま興奮気味に話し始める。
「首についている奴は不味いぞ」
ノイは公一の上でもぞもぞと腰を動かしながら自分の話し易い姿勢を取った。
「男を組み伏せて話すのも良いもんだな」
「そ、そんな事いってる場合ですか。説明の続きををお願いします」
「あれ、お前この格好は嫌だったのか」
ノイは悪戯っぽく笑い、ピンク色の舌を少しだけ出して自分の唇を舐めた。
公一に身体を擦りつけながら、口を公一の耳元まで近づけ囁くように説明を続けた。
「あの赤い奴は血を吸う虫の腹だ。今は腹一杯に入道の血を溜めこんだに違いないぞ」
公一はノイに衣擦れの音、ノイが耳に吹つけてくる息使いに動揺してしまう。隠そうとしても声は自然に上ずってしまっていた。
「じ、自分の国にも似た奴はいたので何と無く判ります。あれが取りつくとどうなるのですか?」
「邪道の技でな、下位の部族を強引に支配する時に使う。あれが憑りついて居る時は悦楽夢の中、離れれば悪夢と苦痛しか残らん。いまだにあの邪法が使われているのか」
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