最深部からのダンジョン攻略 此処の宝ものは、お転婆過ぎる

aradoar234v30

文字の大きさ
16 / 51

第十六話 ムラサキ 陽 その四

しおりを挟む
「ばーか。小鬼のさきっぽ。食べれるものなら食べてみろ」

 ムラサキは激怒したらしく色を濃くして叫んだ。

「小娘、これをみて驚くなよ。嫌でも赤い水に入りたくなるぞ」

 ムラサキの体に走る黄色斑模様が生木を裂く音に似たを立てて開いた。
 殿様ガエルの卵みたいだな
全身に赤い目玉が現れおのおの目玉は動きを確かめる様にてんでばらばら動いていたがいつせいに二人を見つめた。
「これでどうだ。良く見ろ。じっと見ろ。そこから飛び降りろ」

 暫く赤目玉の黒い瞳を覘きこんでた公一だったが、手を振ってみて黒い瞳の動きを観察した。
「きもちわるっ。何か動く。俺この手の物は大嫌いですよ」
「私は何とも思わんがな」
 ムラサキの予想に反して二人の反応は薄いものだった。

 ムラサキは焦っていた。そのせいか先程までの饒舌ぶりはすっかりひそめ、むっりと押し黙った。
 自分の眼力は神格以外の生き物全て誘惑し、この血の池に引きずり込む事が出来るはずだった。

 それが有ってはならない事に全く効果が無い人間が、一人ならず二人も現れたのだ。たかが人間と侮っていたムラサキには驚愕な出来事が発生したのだった。

 後は自分の腕力と手数に頼り有無を言わせず始末をつけるしかない。しかし自分で動くことを厭い怠惰を決め込んでいたムラサキの攻撃は、公一の動きに遅れを取る事となった。

 次の攻撃の為か床一面を覆っていた赤い水は、潮が引くよりも早く消え失せ辺りは忌まわしい静けさに包まれた。

 公一も攻撃に備えるべく呪文を唱える。
「知恵の光、命の全てを生む光よ。この悪しき暗闇を、その光で照らしたまえ」

 公一は呪文に応える様に淡い暖かな光を灯した短剣で、大きな真円を空中に描いた。公一を中心に描かれた真円は決して消える事のない美しい帯となった。

 光は部屋におりのように積もった陰までも照らし出した。
 そう、このムラサキの根源である形の無い憎悪、生への執着をも全てを。

「これで、お前はどこにも逃げれないぞ。自由になりたければ俺を倒せ」

「ぬかせ、それはお前らも同じだ。お前さえ倒せばよかろう。こっちには時間はいくらでも有る」
 赤い水が四方八方から襲い掛かりる。その水流としぶきの隙間を縫う様に四本の触手が公一たちを切り刻むために鋭くはしった。

 触手は公一達のを包む光の輪の中に入ると、一瞬にして枯葉のように燃えてしまい細かな灰となった。が、一本だけは公一の目前まで迫った。

 ノイはチラリと視線を公一に向けたが直ぐにムラサキを睨める。

「はっははは、判ったぞ。君のその術にはムラがあるねえ。こっちは手数を増やして行けばいつかは君を捕まえるか、そこから突き落とすことが出来るな」
 ムラサキは勝利を確信してか上機嫌になった。

「そうしたら、暫くは私のオモチャになってもらおうか。これが受け切れるかな」

  無数の触手が水面から飛び出し公一覆い隠す様に襲った。
「そら、モタモタしていると串刺しなるぞ」

 その内の数本は公一自ら短剣で切り払らなければ避ける事は出来なかったなかった。

 公一に切り払われた触手は、平たい頭に有る口を大きく開いたまま、無数の鋭い牙をむき出しにして燃え尽きた。

「公一、手を貸そうか?」
「いえ、少しだけ時間を下さい」
 ノイの力なら地の底から炎を呼び、辺り一面を溶岩の大河に変えることも出来るだろう。
 間違いなく目の前の敵の肉体は滅ぶ。だが、また邪悪なものはいつの日か再び形をとり悪さをするはずだ。

 例えあたりを蒸発させコイツが二度と出てこれないとしても、他の連中まで巻き込んでしまう。あの入道達も間違いなく滅ぶ。

 それは優しいノイの望むところでは無い。絶対に無い。

 公一はムラサキに向かって叫んだ。
「ところであんた。海って知っているか? 海の生き物って食ったことあるか」

「時間稼ぎか? そんな物知るか。食った事もない」

 今度はノイは挑発する。
「残念奴だ海を知らないとはな。それでは物をもっと美味く食べる方法も知らないんだな?」

「私が海とやらを知らなくても、お前たちは私の腹の中に納まるのさ」

 ノイと公一には十分すぎる答えだった。
「そうか、塩を知らないんだな。じゃあ今、私が見せてやる」


「ノイ様出来るだけ濃い海の水を呼んで下さい」
「承知しているよ」

 ノイは右手を高く上げて叫んだ。
「海龍よ命じる。お前の溜息をここに顕せ」
 広間は一気に磯香りと海風が吹き渡り、ノイの指さした先には大量の海水が渦を巻いた。
 ノイが指先をムラサキに向けると、海水はしぶきになって広間を駆けムラサキを飲み込んだ。

 ノイは再び指を掲げると海水は再びノイの頭上に集まりムラサキが顔を出した。
 
「これが海か? こんなもので私がどうとでもなると思ったのか? ただ身体かひりつくだけだぞ」

 ノイの指先の海水は次第に水分を失い真っ白の雪になって宙を舞い踊った。

「そんな粉で何が出来る?」
 塩の事を全く知らないムラサキは嘲笑った。

 ムラサキが嘲笑うのはそこまでだった。

 塩は礫になり突き刺さった。塩はムラサキの醜い肌から全ての水分を奪い始めた。

「痛い、イタイ、ナンダコレハ」

 痛みに耐え兼ね身体を細切れにして逃げようとしたが、塩の鋭い結晶はそれを許さなかった。
「前は詰めが甘かったな。今度は絶対に逃がさんぞ」
「ノイ様、塩を固めてください」

「お前、私はそんなに甘くないぞ。見ていろ、こうするのさ」
 塩は吹雪は荒れ狂い逃げ惑う赤い塵を痛め付けた。

「仕上げだ」
 ノイが人差し指を軽く動かすと吹雪は竜巻になり広間中心で渦を巻いた。
「よし出来たぞ」

 竜巻は消え去り巨大な球体が残された。

「塩の結晶ですか」
 
「いや石にしてやった。こいつは二度と出れない」
「溶けたり砕けたりしませんか?」

「お前は鈍い奴だな。この私が石にしたんだ。この世界が変わるまで、このままさ」
「それにお前の封じの呪いもかけてある。誰も近寄ることは出来ないよ」
 
 公一は溜息しか出せなかった。

「それにしても良く思い付いたな」

「塩は浄めに使います。元いた世界で似た生き物を見たことがあるんです。血が好きな事と塩や強い酒、あと火も嫌いました」

「それでか。お前がいなかったらまた逃げられたよ。お手柄だった。誉めてやる」

 ノイは満足そうに声を立てて笑った。笑い声は広間に響き、広間は清浄の空間となっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...