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第二十話 試し合い
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ノイが勢いをつけて投げた石は天井に激突して粉々に砕け散った。投げた石の破片だげてなく天井を装飾していたモザイクもはがれ落ち始めた。
得物を構え向き合っている二人に砕けた岩が雨のように降りそそぐ。
それが合図だった。
大剣をトンボに構えいてた大猿は破片が降り続くなか猛烈な勢いで公一に迫る。
構えが物語っていたのは最上段から剣を振り降ろすことで、一撃で槍ごと敵を切り伏せる明確な意思だった。
自分の膂力と剣技に絶対の自信を持っている証左だった。
対する公一は身体を低くして槍を構え、槍の穂先に近い場所を握っている。
間合いを狂わせ剛剣の速度に合わせて初太刀の一撃をいなす、大猿の剛に対して柔を選択した。
大猿は公一の槍の構えを見ても一切の迷うことなく大剣を公一の脳天めがけて振り下した。
公一は槍を竿立ちにして剣先を迎え撃った。
大剣の切っ先は公一の垂直に立てた槍の穂先にあたり、そのまま柄を滑って火花を散らして床に突き刺さった。
公一は僅かに動かした槍の穂先で一つで剣先をかわして見せた。柄は握らず相手の剣に槍を押し付け打だけで豪剣の動きを制したのだった。
今度は公一が動く番だった。垂直に立っていた槍を相手側に倒し、大剣を打ち下ろし前のめりになった大猿の胸に槍の穂先を突き立てようとした。
大猿ははなから公一の狙いはお見通しで、突き刺さった大剣を軸に剣ごとバク転をして難なくかわした。
初手はお互いの立ち位置が入れ替わるだけに終わり力と技は拮抗してにらみ合いになった。
「にらめっこなんかするなよな。殴り合えば強さはわかるもんだ。いっそ私もまぜろ」
ノイは駆け引きなどお構い無しに二人の間に割って入ってきてしまった。
大猿とはしては興ざめだったのだろう片手で目を覆い天を仰ぐ仕草をして大げさに
口を開けて見せた。
「なんだよ文句が有るのか? 公一ちょっと来い」
「えっ? 俺ですか」
「そうだ。こいつの横に立て」
「ちょと待ってて下さいよ」
公一は槍を荷物の置いてある場所に持って行いき大慌てで大猿の横に並んだ。
大猿と公一は訳が分からず思わず顔を見合わせた。二人ともノイに調子を狂わされてしまい先程までの緊張感はどこかに行ってしまった。
大猿も仕方が無いと言った様子で大剣を下ろしている。子供の言っている事だと思い大目見てくれたようだ。
そんな二人にノイは注文をつけた。しかも猫なで声でだ
「ねえ少し間をあけてよ。うん、そんな感じ。あとお腹を見せてみて」
ノイはニッコリと笑って二人の腹をさわる。
「二人とも硬くて強そうだね」
誉められた大猿はまんざらでもなく、どうだと胸をはってみせた。一方の公一はノイのイタズラの凄さを知っている。これから何をされるかと思い気が気ではなかった。
「公一はだらしの無い恰好してるね。貫禄で負けているよ。もっと胸を張ってね」
ノイは公一に近づき姿勢を良く見えるように直してくれた。
離れ際に小声でささやいた。
「絶対負けるなよ。負けたらお仕置きは覚悟してけ」
ニッコリと微笑んで
「うん、公一も強そうになったよ。じゃあ私がお腹を叩くから我慢できた方が強い人で良いね?」
ノイは公一と大猿のヘソの下を手のひらで叩いた。この位は二人にとって痛くもかゆくもなかった。
大猿は自慢げに歯茎まで出してみせた。
「二人とも凄いね。こっちの手が痛いぐらいだよ。次のはもう少し強くたたくから我慢できるかな。まず公一からいくね」
ノイは公一の斜め前の右側に立ち、手のひらを公一の腹に当てた。
「公一、小細工なしだ。変な技使って逃げようと思うな。よっと!」
ノイは公一の返事も待たず手首を効かせた張り手を腹に食い込ませた。
一瞬、公一は白目をむき膝が崩れそうになった。何とか立て直した公一だったが顔の色は真っ青になっていた。
大猿はノイの張り手の威力を見ても姿勢は堂々として崩さない。青い顔をしている公一の横顔をちらと見ただけだけで嘲る様子も見せなかった。
「同じ強さで叩くからねっ!」
大猿を衝撃が襲った。
何故か女の足もとに無様にうずくまっている自分の姿が見えた。
大猿は我に返った。隣の男がうつ伏せに倒れた重い音が響いたからだった。
こちらを向いて倒れた男と目が合っただけで言わんとしていることが痛いほど理解できた。
公一は青い顔で床を叩いた後、腕をを上げ左右に振った。
大猿も公一に倣った。
「なんだ、もう降参したのか。これでこの中では私が一番強いって事だな」
「しかし、つまらんな。よし今度は追いかけっこだ。私に触られたら背中を叩くからな覚悟しろよ」
二人は背中を容赦なく叩かれ痛さの余りに飛び上がり、仲良く走り出す羽目となった。
ノイは追いつく度に二人の背中を叩いた。
「あれ、痛いけど何か力が湧いてきました」
ノイに腹を叩かれ息も絶え絶えだった公一は逃げながらノイに向かって叫んだ。
「当たり前だ。これも祝福の一つだ。有難く思え」
「あっちの大猿も何か楽しそうですね」
「あいつ叩かれると笑うんだよ」
確かに大猿も楽しんでいた。昔の無邪気な子供の頃を思い出して。
自分より年長者をからかい追いかけられたあの昔の事を。
自分が笑ながら走るのはいつ以来だろう。大猿は泣き笑いになっている自分に気がつき走るのを止めてしまった。
公一は大猿の涙の理由が判らず戸惑ってしまい見守る事しか出来なかった。
「なあ、公一。こいつはな群れから追い出されたはぐれ者なんだよ」
「どういう事ですか?」
「他の若い奴に負けたのさ」
大猿は流れる涙をぬぐおうともぜず静かに泣いていた。
「だが変だな。私のあれを耐えれるなら、余程の理由が無いと群れを追い出される事は無いはずだが」
「もっと強い奴がいたとか? あの太刀筋はかなりの物ですよ」
「おかしな話だな」
大猿は泣いたせいか気分も落ち着いたのか振り返って手振りで話し掛けてきた。
「驚いた。話しが出来るのか」
大猿は両方の手の人差し指を立てて何回かバツ印を作り、その後で右手の人指し指で自分を指さし、もう一方で二本指を立てた。
「二対一で負けたのかな。確かめてみます」
試しに公一は自分と大猿を指さした。
大猿は大きくうなずく。
今度は二本指にしてみる。
あからさまなに嫌な表情をして首を大きく横に振った。
「間違いないですね。卑怯な目にあったみたいです」
「そうか卑怯か……」
ノイは押し黙ってしまった。
「む?」
公一は手首に目をおとした。
「近くに来てるか?」
「はい。片づけてきます」
公一は短く答え自分の槍の置いてある場所に戻った。大猿も公一の槍の近く置いてあった大剣を手に取ると再びトンボに構え公一と肩を並べた。
剣を構えた大猿は先程見せていた泣き顔とは違い戦士の顔つきに戻っていた。
広間につながる通路の方から騒がしい足音と急かす叫び声が聞こえてくる。
今まで出会った小鬼達と違い野太い声だった。
広間に侵入してきた一団は公一の横にいる大猿を一回り小さくした十数匹の大猿立ちで武器は小鬼達とは違い体格に合った物を携えていた。
広間に入ってくるとすぐに公一達に気が付きジリジリと近づいくる。猿たちは毛を逆立て歯をむき出しにして脅しをかけてきた。
公一は隣の大猿に目をやると大猿は静に剣を構え落ち着いたものだった。
「公一。この猿のお手並み拝見といこうか。お前も手伝ってやれよ」
ノイの言葉を合図に大猿と公一は敵に突進していった。
得物を構え向き合っている二人に砕けた岩が雨のように降りそそぐ。
それが合図だった。
大剣をトンボに構えいてた大猿は破片が降り続くなか猛烈な勢いで公一に迫る。
構えが物語っていたのは最上段から剣を振り降ろすことで、一撃で槍ごと敵を切り伏せる明確な意思だった。
自分の膂力と剣技に絶対の自信を持っている証左だった。
対する公一は身体を低くして槍を構え、槍の穂先に近い場所を握っている。
間合いを狂わせ剛剣の速度に合わせて初太刀の一撃をいなす、大猿の剛に対して柔を選択した。
大猿は公一の槍の構えを見ても一切の迷うことなく大剣を公一の脳天めがけて振り下した。
公一は槍を竿立ちにして剣先を迎え撃った。
大剣の切っ先は公一の垂直に立てた槍の穂先にあたり、そのまま柄を滑って火花を散らして床に突き刺さった。
公一は僅かに動かした槍の穂先で一つで剣先をかわして見せた。柄は握らず相手の剣に槍を押し付け打だけで豪剣の動きを制したのだった。
今度は公一が動く番だった。垂直に立っていた槍を相手側に倒し、大剣を打ち下ろし前のめりになった大猿の胸に槍の穂先を突き立てようとした。
大猿ははなから公一の狙いはお見通しで、突き刺さった大剣を軸に剣ごとバク転をして難なくかわした。
初手はお互いの立ち位置が入れ替わるだけに終わり力と技は拮抗してにらみ合いになった。
「にらめっこなんかするなよな。殴り合えば強さはわかるもんだ。いっそ私もまぜろ」
ノイは駆け引きなどお構い無しに二人の間に割って入ってきてしまった。
大猿とはしては興ざめだったのだろう片手で目を覆い天を仰ぐ仕草をして大げさに
口を開けて見せた。
「なんだよ文句が有るのか? 公一ちょっと来い」
「えっ? 俺ですか」
「そうだ。こいつの横に立て」
「ちょと待ってて下さいよ」
公一は槍を荷物の置いてある場所に持って行いき大慌てで大猿の横に並んだ。
大猿と公一は訳が分からず思わず顔を見合わせた。二人ともノイに調子を狂わされてしまい先程までの緊張感はどこかに行ってしまった。
大猿も仕方が無いと言った様子で大剣を下ろしている。子供の言っている事だと思い大目見てくれたようだ。
そんな二人にノイは注文をつけた。しかも猫なで声でだ
「ねえ少し間をあけてよ。うん、そんな感じ。あとお腹を見せてみて」
ノイはニッコリと笑って二人の腹をさわる。
「二人とも硬くて強そうだね」
誉められた大猿はまんざらでもなく、どうだと胸をはってみせた。一方の公一はノイのイタズラの凄さを知っている。これから何をされるかと思い気が気ではなかった。
「公一はだらしの無い恰好してるね。貫禄で負けているよ。もっと胸を張ってね」
ノイは公一に近づき姿勢を良く見えるように直してくれた。
離れ際に小声でささやいた。
「絶対負けるなよ。負けたらお仕置きは覚悟してけ」
ニッコリと微笑んで
「うん、公一も強そうになったよ。じゃあ私がお腹を叩くから我慢できた方が強い人で良いね?」
ノイは公一と大猿のヘソの下を手のひらで叩いた。この位は二人にとって痛くもかゆくもなかった。
大猿は自慢げに歯茎まで出してみせた。
「二人とも凄いね。こっちの手が痛いぐらいだよ。次のはもう少し強くたたくから我慢できるかな。まず公一からいくね」
ノイは公一の斜め前の右側に立ち、手のひらを公一の腹に当てた。
「公一、小細工なしだ。変な技使って逃げようと思うな。よっと!」
ノイは公一の返事も待たず手首を効かせた張り手を腹に食い込ませた。
一瞬、公一は白目をむき膝が崩れそうになった。何とか立て直した公一だったが顔の色は真っ青になっていた。
大猿はノイの張り手の威力を見ても姿勢は堂々として崩さない。青い顔をしている公一の横顔をちらと見ただけだけで嘲る様子も見せなかった。
「同じ強さで叩くからねっ!」
大猿を衝撃が襲った。
何故か女の足もとに無様にうずくまっている自分の姿が見えた。
大猿は我に返った。隣の男がうつ伏せに倒れた重い音が響いたからだった。
こちらを向いて倒れた男と目が合っただけで言わんとしていることが痛いほど理解できた。
公一は青い顔で床を叩いた後、腕をを上げ左右に振った。
大猿も公一に倣った。
「なんだ、もう降参したのか。これでこの中では私が一番強いって事だな」
「しかし、つまらんな。よし今度は追いかけっこだ。私に触られたら背中を叩くからな覚悟しろよ」
二人は背中を容赦なく叩かれ痛さの余りに飛び上がり、仲良く走り出す羽目となった。
ノイは追いつく度に二人の背中を叩いた。
「あれ、痛いけど何か力が湧いてきました」
ノイに腹を叩かれ息も絶え絶えだった公一は逃げながらノイに向かって叫んだ。
「当たり前だ。これも祝福の一つだ。有難く思え」
「あっちの大猿も何か楽しそうですね」
「あいつ叩かれると笑うんだよ」
確かに大猿も楽しんでいた。昔の無邪気な子供の頃を思い出して。
自分より年長者をからかい追いかけられたあの昔の事を。
自分が笑ながら走るのはいつ以来だろう。大猿は泣き笑いになっている自分に気がつき走るのを止めてしまった。
公一は大猿の涙の理由が判らず戸惑ってしまい見守る事しか出来なかった。
「なあ、公一。こいつはな群れから追い出されたはぐれ者なんだよ」
「どういう事ですか?」
「他の若い奴に負けたのさ」
大猿は流れる涙をぬぐおうともぜず静かに泣いていた。
「だが変だな。私のあれを耐えれるなら、余程の理由が無いと群れを追い出される事は無いはずだが」
「もっと強い奴がいたとか? あの太刀筋はかなりの物ですよ」
「おかしな話だな」
大猿は泣いたせいか気分も落ち着いたのか振り返って手振りで話し掛けてきた。
「驚いた。話しが出来るのか」
大猿は両方の手の人差し指を立てて何回かバツ印を作り、その後で右手の人指し指で自分を指さし、もう一方で二本指を立てた。
「二対一で負けたのかな。確かめてみます」
試しに公一は自分と大猿を指さした。
大猿は大きくうなずく。
今度は二本指にしてみる。
あからさまなに嫌な表情をして首を大きく横に振った。
「間違いないですね。卑怯な目にあったみたいです」
「そうか卑怯か……」
ノイは押し黙ってしまった。
「む?」
公一は手首に目をおとした。
「近くに来てるか?」
「はい。片づけてきます」
公一は短く答え自分の槍の置いてある場所に戻った。大猿も公一の槍の近く置いてあった大剣を手に取ると再びトンボに構え公一と肩を並べた。
剣を構えた大猿は先程見せていた泣き顔とは違い戦士の顔つきに戻っていた。
広間につながる通路の方から騒がしい足音と急かす叫び声が聞こえてくる。
今まで出会った小鬼達と違い野太い声だった。
広間に侵入してきた一団は公一の横にいる大猿を一回り小さくした十数匹の大猿立ちで武器は小鬼達とは違い体格に合った物を携えていた。
広間に入ってくるとすぐに公一達に気が付きジリジリと近づいくる。猿たちは毛を逆立て歯をむき出しにして脅しをかけてきた。
公一は隣の大猿に目をやると大猿は静に剣を構え落ち着いたものだった。
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