最深部からのダンジョン攻略 此処の宝ものは、お転婆過ぎる

aradoar234v30

文字の大きさ
30 / 51

第三十話 宿敵

しおりを挟む
こちらの方々の助成によって何とか連れてくることができました。こっちも死にかかりです」

 虎の「お使い」は公一の方に向かって咥えていた潜む者を投げよこした。
床に叩きつけられ重く湿った音をたてた半身は、残り血液をまき散らしながらおぞましくのたうった。


「ほう、これがサルの仇か。悪巧みの報いにしてはまだ甘いな。おっと、まずは礼を言わんとな」
 ノイは「お使い」達に向かって話しかけた。

「何処の神の使いかは知らぬが、この公一への助成、痛み入る。公一の主人として礼を言わせてもらう」

 虎の「お使い」は言葉を受けて身を躍らせノイの目の前に降り立った。
 ノイが両手を差し出すと虎の「お使い」は頭を垂れた。ノイは「お使い」に感謝の気持ちを表すために太く逞しい首に抱き付いた。

 虎はノイから離れると耳を覆いたくなる位の咆哮をあげ空に駆け出し消えて行った。
 ムカデの「お使い」は体の炎を燃え上がらせた途端一瞬で消え失せてしまった。

「うん、中々の連中だったな。公一にしては上出来じゃないか。こいつを連れてくるのもわけもなかったろう」

 ノイは潜む者の頭を蹴り飛ばしながら続けた。

「さてと、こっから、こいつらが勝負ができるかだな。で、サルの具合はどうだ」


 公一は老猿の後ろから支えながら起こして、潜む者が良く見えるように頭を向けてやった。

 老猿は閉じていた目を薄く開き潜む者をしばらくの間見つめていた。
 「フン……」

 はた目でも判るくらいの軽蔑の思いが詰まった息が鼻から漏れた。

「まだ、大丈夫だな。公一はどう思う?」

「勝負に耐えれるかってことですか。戦いに意味はあるとお思いですか?」

「お前の言いたいことはわかる。こいつはもう寿命だ。この有様だ例え勝ったとしても帰る場所もないかもしれん」

 公一は暗澹となる気持ちを抑えて老猿を支え脈を取った。
「この人の意地次第でしょう。さっきよりも落ち着いてくれました」

「おいサル、私の言うことがわかるな。わかるなら、なんか返事でも合図で何処でもいいから動かせ」

 老猿はノイの問いかけに答えて右手をゆっくりと上げて拳を作った。

「おお、いいぞ。わかるんだな。それにやる気満々じゃないか」

 公一は支えている分だけ老猿が力を振り絞ってノイに応えているのがわかる。
 ノイの顔を窺うと目が合った。

 少しだけ眉をひそめていたが口調は明るいままだった。しかし瞳の中に深い憂いの陰が見て取れた。

 ノイは老猿を急かす様に手を叩いた。

「それ、急いで立ち上がれ。そして剣を雄々しく構えろ。いつものお前の様に」

 ノイは表情とは裏腹に務めて明るく振る舞い歌う様に老猿を励ました。
 そう、これはノイの神から与えられた重要な仕事の一つ、どんなに悲しくても祝福という勇気を与え死地に赴かせる事。

 公一は黙って見守るしかなかった。最期を迎えようとしている戦士の動きを
 
 老猿はノイの「励まし」という祝福を受けてゆっくりと立ち上がろうとした。
 関節一つ一つを確かめながらの動きは、支えている公一の指先に老猿の関節の震えが悲鳴のように響く。

「剣はまだ構えるなよ。出来るだけ楽な格好でまていろ。今度はこいつの番だ」

 ノイはもう一度、潜む者のそばに近づき頭を蹴った。
「死んだふりは止めろ。サルを待たせるんじゃない。さっさと起き上がれ」

 蹴られた潜む者は恨めし気にノイを見上げた。

「一つ条件がある……」

「この期に及んでか? まあ、聞いてやる言ってみろ」

「勝ったら、こいつを喰ってもいいか。それを聞きたい」

 ノイは振り向き老猿に尋ねた。

「おいサルよ、文句は無いか」

 老猿は頷いた。頷いた動作で身体が大きく前後に揺れ公一を慌てさせた。

「だろうな。負けるつもりは無いってことだな」

 ノイは潜む者に言った。

「仕様した。もし勝ったとしても喰い終ったら逃げるなよ。今度は公一がお前の相手になる。それに聞きたいことが有るからな」

 公一もノイと同じ考えで、潜む者が猿であることを止める事を手助けした者の存在について聞き出したかった。

「よし、決まった。そろそろ始めるとするか。お前はいつまで這いつくばっているんだ。早く起き上がれ。そうしないとサルにかわって私が始末してやるぞ」

 潜む者は忌々しげに舌打ちをして残った胴体を使って体を起き上がらせた。
 
「まるで蛇だな。サルと比べると随分と違う者になったな」

 
 ノイは勝負を見届けるために老猿と潜む者の中間に立った。

「サルいつものように構えろ。待ってやる必要は無いぞ」


 老猿は一歩、また一歩と進み身体を進める足の運びで剣を頭上高く持ち上げた


 一方の潜む者は両手を後ろ手に回し上半身を左右に揺らめかせていた。
 潜む者は老猿の構えが乱れることを待っての受けの姿勢を取ったのだった。

 ノイは潜む者の待ちの姿勢を決して攻めようとはしなかった。
 一対一の戦いにこれ位の駆け引きは同然と思ってたからだった。

 老猿はには時間が無く、潜む者には今まで蓄えていた力が無い。
 両者は一撃で勝敗を決する覚悟を決めての動きだった。

 老猿の動きが少し鈍った瞬間だった。

 僅かなよろめきを見逃さず潜む者は背中に回していた腕を大きく広げた。
 その両手には体の中に隠していた剣が握られ刃先は異様な光を宿していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...