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第三十三話 仇討 その一
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猿の剥がされた皮の山を目の前にしたノイの第一声だった。
「そうですね。本能で判っていても、実際これを見たらどうなっていたか。一体どんな奴でしょうね。こんなことをさせた奴は」
「まあ、ここに来る途中にいた赤い小鬼を見れば、性質の悪い奴としか言いようがないな」
ノイはため息をついた。
「それにしても、もっと手応えのある奴はいないのか? お前の残り物のはいい加減、飽き飽きだなあ。 面白い奴なら今度は私がやるからな。公一、絶対に邪魔するなよ」
二人がこの部屋にくる途中で出くわしたのは、赤い小鬼ばかりでノイには物足りない敵だった。
「大丈夫手すよ、貢物って言っていましたよ。ここにあるものが本当に大切なら、必ずだれかが取りに来ますよ。焦らない、焦らない」
公一はニヤリと笑った。
「じゃ公一、どのくらい待てば良いかも分かるか? 早く来たてくれないと眠たくなるぞ」
「まだ、暴れたりないんですか? わかれば苦労しませんよ。ああ、でも今度は苦労しなくてもいいかな……」
公一は右手の数珠をまさぐっていた。
「ん、なんか来たのか?」
公一は天井を見上げ指差した。
「ここは、他の部屋と比べてずいぶんと天井が高いですね」
ノイは公一の指差した天井の暗闇のなかに一段と黒い場所を見つけて声をあげた。
「おお! あの穴、なんかいるぞ。あそこだ。あそこだって! 公一見えるか? あれだよ、あれ!」
何気ない仕草で教えるつもりの公一の思案はもろくも崩れた。
「あ、静かにして! 知らないふりするつもりだったのに!」
「お前はまだろっこしいやつだ。また、何かたくらんでいたな。引っ込んでろ。このまま逃げられたどうする!」
ノイは公一を押し退けると、身体を伸び上げ天井に向かって叫んだ。
「おおい、そこのお前、こそこそしてないで降りてこい!」
「あーあっ。血の気が多い……。あ、痛ったああ……」
ノイは公一に返事の代わりの蹴りを入れた。
「戦う前に再起不能になりますって」
ノイに蹴られた公一はぼやいた。
黒い塊は、天井の暗闇にまぎれ穴から身体の半身を乗り出して、ノイ達の様子をうかがっていた。
ノイ呼び掛けに答えてか黒い塊はじりじりと動き始めた。
とたんに、耳を覆いたくなる野太い叫び声を上げ空中に跳び出し、二人めがけて猛烈な勢いで突進して来た。
公一はノイを横抱きに抱えて衝突を避けた。
黒い塊は二人が立っていた場所に激突する直前に、身体に巻き付けていた翼を広げ
大きく羽ばたいた。
羽ばたきで起こった風は突風になり砂塵をまきあげながら公一たちを襲った。
やがて巻き上がっていた砂塵が収まると、黒い塊だった物は折り曲げていた身体をゆっくりとのばし、その全身をあらわした。
身体を伸ばし終わった黒い塊は堅城の城門のように立ち塞がり二人を威圧した。
太ももから腰、そして肩までほぼ一直線で、筋骨たくましい筋肉の塊に太い手足が生えていると言っていいだろう。
手足はまるで大木で、皮膚はささくれ立った松の木の樹皮そっくりだった。
その太い足から伸びた指は、根が生えたように床に爪をくいこませて、いつでも飛びかかれるように力を蓄えていた。
ハイエナに似た頭は大きく、口元は下あごの奥まで裂けており口を閉じている今でさえ汚い歯が不規則に並んでいるのが見えた。
ノイと公一の目を引いたのは巨大な生き物の牙で、片腕では重いのか短い猪野首を支えにして担いでいた。
ハイエナの似た頭を小刻みに動かし猿達の毛皮の山の高さを見たり、辺りを見回し始めた。
「俺の手下がいない……」
喉の奥から吐き出す息が声になって響いた。
ハイエナ頭の持ち主はノイ達は赤黒く充血した目で睨む。
「お前らがやったのか? ここでこそこそと、とぐろを巻いていた役立たずは、どこにいる。怖気づいて逃げたのか」
公一が適当な返事をして誤魔化そうとした返事をノイが遮った
「ここにいる公一が一人でやったんだ。どうだ凄いだろう」
あっけらかんとノイは返事をする。
ハイエナの二の腕の筋が僅かに動いたと思った瞬間、ノイと公一の立っていた場所に牙の剣がめり込み砂ぼこりが立ち昇っていた。
「つまらん、我が剣がよごれた。我と剣を打ち合えるものはおるまい。主の元に戻り手下どもをもう一度よこすとしよう」
ハイエナは低い声で笑い、上機嫌で身体を揺すった。
「あっはっは! 公一、こいつなかなかと面白奴だぞ」
ハイエナはギョッとして振り返った。
ハイエナの視線の先にはノイと公一が怪我一つ負うことなく立っていた。
ハイエナは床に突き刺さった剣を引き抜き、剣の破壊力ですり鉢状になった石の床をまじまじと見つめた。
「よく、避けることが出来たな。それだけでは……」
ノイはハイエナが言い終わる前に声を立てて笑った。しかも指をさしての大笑いだった。
「なにがおかしい!」
「ああ、確かにそれだけじゃないな。お前は二度も死んでるんだ。判らんのか? 二の腕だ、二の腕だよ」
可笑しさのあまり涙目になっていた目尻をぬぐい付け加えた。
「別の所は教えてやらんがな。あとは自分で考えろ」
ハイエナがいぶしげに二の腕を見ると、細い真っ直ぐの傷が血を流していた。
ハイエナは内心、肝を冷やしていた。自分の身体を傷を負わせるも者がいようとは思いもよらぬことだった。
ハイエナは内心の動揺を悟られぬよう怒鳴り声を上げた。
「この程度の傷がどうだと言うのだ!」
「お前がいいならそれでいい。私には関係の無い事だからな」
ノイは至って平静だった。
その平静さがハイエナの癇に障った。
「ゴーダ様にお仕えする者の中で随一の剣だ。まともに受ける覚悟もない奴つべこべぬかすな」
「聞いたか公一、ゴーダという名前覚えておけよ」
ハイエナは無言で剣を正眼に構えた。
公一も迎え撃とうと槍を構えようとしたが、ノイがその穂先をガッチリと掴み、
公一に槍をハイエナに向ける事を許さなかった。
「公一、ここは私に任せてもらいたい。サルの仇だけでなく私にも関係があるのだ」
ノイが槍の穂先を握る手は小刻み震え血管が浮き出ていた。
「そうですね。本能で判っていても、実際これを見たらどうなっていたか。一体どんな奴でしょうね。こんなことをさせた奴は」
「まあ、ここに来る途中にいた赤い小鬼を見れば、性質の悪い奴としか言いようがないな」
ノイはため息をついた。
「それにしても、もっと手応えのある奴はいないのか? お前の残り物のはいい加減、飽き飽きだなあ。 面白い奴なら今度は私がやるからな。公一、絶対に邪魔するなよ」
二人がこの部屋にくる途中で出くわしたのは、赤い小鬼ばかりでノイには物足りない敵だった。
「大丈夫手すよ、貢物って言っていましたよ。ここにあるものが本当に大切なら、必ずだれかが取りに来ますよ。焦らない、焦らない」
公一はニヤリと笑った。
「じゃ公一、どのくらい待てば良いかも分かるか? 早く来たてくれないと眠たくなるぞ」
「まだ、暴れたりないんですか? わかれば苦労しませんよ。ああ、でも今度は苦労しなくてもいいかな……」
公一は右手の数珠をまさぐっていた。
「ん、なんか来たのか?」
公一は天井を見上げ指差した。
「ここは、他の部屋と比べてずいぶんと天井が高いですね」
ノイは公一の指差した天井の暗闇のなかに一段と黒い場所を見つけて声をあげた。
「おお! あの穴、なんかいるぞ。あそこだ。あそこだって! 公一見えるか? あれだよ、あれ!」
何気ない仕草で教えるつもりの公一の思案はもろくも崩れた。
「あ、静かにして! 知らないふりするつもりだったのに!」
「お前はまだろっこしいやつだ。また、何かたくらんでいたな。引っ込んでろ。このまま逃げられたどうする!」
ノイは公一を押し退けると、身体を伸び上げ天井に向かって叫んだ。
「おおい、そこのお前、こそこそしてないで降りてこい!」
「あーあっ。血の気が多い……。あ、痛ったああ……」
ノイは公一に返事の代わりの蹴りを入れた。
「戦う前に再起不能になりますって」
ノイに蹴られた公一はぼやいた。
黒い塊は、天井の暗闇にまぎれ穴から身体の半身を乗り出して、ノイ達の様子をうかがっていた。
ノイ呼び掛けに答えてか黒い塊はじりじりと動き始めた。
とたんに、耳を覆いたくなる野太い叫び声を上げ空中に跳び出し、二人めがけて猛烈な勢いで突進して来た。
公一はノイを横抱きに抱えて衝突を避けた。
黒い塊は二人が立っていた場所に激突する直前に、身体に巻き付けていた翼を広げ
大きく羽ばたいた。
羽ばたきで起こった風は突風になり砂塵をまきあげながら公一たちを襲った。
やがて巻き上がっていた砂塵が収まると、黒い塊だった物は折り曲げていた身体をゆっくりとのばし、その全身をあらわした。
身体を伸ばし終わった黒い塊は堅城の城門のように立ち塞がり二人を威圧した。
太ももから腰、そして肩までほぼ一直線で、筋骨たくましい筋肉の塊に太い手足が生えていると言っていいだろう。
手足はまるで大木で、皮膚はささくれ立った松の木の樹皮そっくりだった。
その太い足から伸びた指は、根が生えたように床に爪をくいこませて、いつでも飛びかかれるように力を蓄えていた。
ハイエナに似た頭は大きく、口元は下あごの奥まで裂けており口を閉じている今でさえ汚い歯が不規則に並んでいるのが見えた。
ノイと公一の目を引いたのは巨大な生き物の牙で、片腕では重いのか短い猪野首を支えにして担いでいた。
ハイエナの似た頭を小刻みに動かし猿達の毛皮の山の高さを見たり、辺りを見回し始めた。
「俺の手下がいない……」
喉の奥から吐き出す息が声になって響いた。
ハイエナ頭の持ち主はノイ達は赤黒く充血した目で睨む。
「お前らがやったのか? ここでこそこそと、とぐろを巻いていた役立たずは、どこにいる。怖気づいて逃げたのか」
公一が適当な返事をして誤魔化そうとした返事をノイが遮った
「ここにいる公一が一人でやったんだ。どうだ凄いだろう」
あっけらかんとノイは返事をする。
ハイエナの二の腕の筋が僅かに動いたと思った瞬間、ノイと公一の立っていた場所に牙の剣がめり込み砂ぼこりが立ち昇っていた。
「つまらん、我が剣がよごれた。我と剣を打ち合えるものはおるまい。主の元に戻り手下どもをもう一度よこすとしよう」
ハイエナは低い声で笑い、上機嫌で身体を揺すった。
「あっはっは! 公一、こいつなかなかと面白奴だぞ」
ハイエナはギョッとして振り返った。
ハイエナの視線の先にはノイと公一が怪我一つ負うことなく立っていた。
ハイエナは床に突き刺さった剣を引き抜き、剣の破壊力ですり鉢状になった石の床をまじまじと見つめた。
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ノイはハイエナが言い終わる前に声を立てて笑った。しかも指をさしての大笑いだった。
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可笑しさのあまり涙目になっていた目尻をぬぐい付け加えた。
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ハイエナは内心、肝を冷やしていた。自分の身体を傷を負わせるも者がいようとは思いもよらぬことだった。
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ノイは至って平静だった。
その平静さがハイエナの癇に障った。
「ゴーダ様にお仕えする者の中で随一の剣だ。まともに受ける覚悟もない奴つべこべぬかすな」
「聞いたか公一、ゴーダという名前覚えておけよ」
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公一も迎え撃とうと槍を構えようとしたが、ノイがその穂先をガッチリと掴み、
公一に槍をハイエナに向ける事を許さなかった。
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