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最前線
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地球規模の異常気象と飢餓、戦争。それに伴う環境破壊は地球の持つ自己修復機能をはるかに超えるものとなっていた。人間の手による環境浄化も各国、企業の権益を守ろうとする勢力により遅々として進まず人類を含む生態系は破滅の道を歩むしかなかった。水資源の枯渇、最終的には温暖化による海面の上昇、その後の急激な低下に至り漸く人類は自分達の力だけではこの局面の打開を出来ない事を悟った。
そこで人類は人工知能に最適化の判断を任せ、自然環境の復活の為に最後の人的資源とエネルギーを投入し再起を図るための計画を実行した。
しかし人工知能が提示した命令は人類が恐慌に陥いるには十分過ぎる代物だった。
「少尉、多分右翼に展開している部隊からの伝令です」
後方を警戒しいてた曹長が怒鳴りながら伝令に向かって拳を上げた。
伝令と思われる兵士は陣地後方の砲撃で壊れかけたカフェテリアのテーブルを盾に小銃を高く揚げて合図を送っている。
この自然体験施設を訪れた恋人達や家族連れに食事や飲み物を供していた建物は、爆風のせいでテーブルや椅子が散乱してしまい平和だった頃の面影を今では全く残してはいなかった。
少尉の階級で呼ばれるには不釣り合いな小柄の女性は、砂漠戦迷彩を施した軍服を身に着け、陣地の傾斜に腹ばいになって前方の建物を注意深く偵察していた。陣地と言っても砲弾が爆発し土が吹き飛ばされた僅かなへこみを利用しているだけのものだ。しかし姿勢さえ低くしていれば敵の射線からは遮蔽されており命の保証ついて言えば問題は無い。
「今や指令も人力が頼りか。おい、大隊本部、中隊本部からの通信はどうか?」
通信兵は小型ヘッドセットを手で覆い、少しでも空中に浮かぶ雑音の中から確かな情報を逃すまいと受信機のを操作している。
「雑音のみで今のところは何も発信されていません。アンテナをもう少し伸ばせば他の隊の通信が拾えると思いますが」
「いや、やめておこう敵に指揮所が有る事を教える事もない。無線封鎖中と考えよう」
「少尉、伝令がお客さんを連れてきたみたいです」
筋骨逞しいラテン系の曹長が後方を指さしている。
「おい、余り身を乗り出すなよ何処から撃たれるか判らんぞ」
少尉と呼ばれた若い女性は自分のヘルメットを叩く仕草をした。辺りを見回し新手の敵が現れる兆候が無いか五感を研ぎ澄まし警戒を続けている。今のところは彼女の瞳に映る敵の姿は無かった。
現在は敵側も再編成中らしく一帯に響いていた銃声は止み陣地の周辺は一時の静寂に包まれていた。戦闘の激しさを物語る様に火災による煙と舞い上がった爆煙のせいで辺りは見通しは酷く悪いもになって双方の視界を限定するものとなっていた。
「それにしても、さっきまでの撃ち合が嘘のようですな」
浅黒い肌の曹長は白い歯をにっと見せた。本来なら男前の明るい笑顔なのだがこれから起こる事を考えると単なる気休めにしかなっていなかった。
「こちらも弾薬と増援が欲しいところだな。あと重機関銃の一個分隊でもいてくれれば楽なんだが」
女性少尉は耳の穴を掻く仕草をしながら答えた。
「畜生め、さっきのグレネードのせいで耳鳴りが止まん」
「少尉、それは贅沢ってもんですよ。まあ、本音を言わせてもらえば中隊本部付の機動歩兵が一体欲しいですな」
曹長は伝令たちに手でもっと背を低くするように合図を送っている。
「あのロボットか? あの入り口の先にあるをAI壊すのに機械の手助は受けたくないな」
少尉は本音を吐き出し薄い唇をきつく結んだ。
その時、伝令と他の三人の兵士が陣地に飛び込むように滑り込んで来た。
軍服はボロボロで激しい銃火の洗礼を受けてきたようだった。最前線に張り付いている彼女率いる小隊の連中の格好も似たり寄ったりの状態ではあるが。
飛び込んで込んでくるなり男たちの一人がワザとらしく言って見せた。
「ここが噂のタカの小隊か、小隊長はどこか?」
このAIとの戦争において戦功で名を馳せ、前線の兵士で知らぬものが居ないはずの鷹華に対して良い感情を持つものばかりではなかった。
「やれやれ、またこの手合いか」
鷹華はあきれるしかなかった。すぐににでも命が失われかねない場所で度胸付の空威張りか、女性である鷹華に対抗心を燃やす者は必ず名前を間違える。当然ワザとだが。
その手の類の男達は戦闘が始まった途端、冷たくなって地面に横たわるのが常だった。
これから死んでしまう可哀想な男に腹を立てても仕方ないと思った鷹華はニッコリと微笑んで敬礼をした。
「中々、酷い目にあったようですね中尉殿。始めまして私は鷹華少尉であります」
男は一瞬だけ無表情になったが、すぐにあからさまな作り笑いを浮かべた。
「君がエスコートだと思うと心強いな。私は第511特殊工兵隊サイモン中尉。宜しく頼む」
お互い中腰になりながら握手を交わした。ひとしきりの挨拶が済むと伝令が
鷹華に話しかけた。
「少尉殿、お話中、失礼します。中隊長からの指令をお伝えします。貴殿の率いるA小隊は正面入り口から突入せよとのことです。合図は右翼のB小隊、C小隊の攻撃開始が合図の代わりとなります」
「了解した。増援の予定はあるか?」
伝令はすぐさま返事をした。
「ハッ! 機動歩兵一体と工兵三名の増援を送るとのことです」
「ご苦労。司令部に帰って了解した旨の報告を頼む」
鷹華に敬礼をした伝令は返礼も待たず踵を返して陣地から飛び出していった。少しでも被弾の確立を下げようと腰を落とし次の遮蔽物を目指して一目散に走り去って行った。
伝令を見送った鷹華はサイモン中尉に顔を向けた。
「中尉殿、これから行う戦闘と最終目的についての打合せを行いたいと思いますがいかかでしょうか」
先程のから丁寧な扱いを受けている中尉はまんざらでもなく上機嫌で頷き自分の目的を話し出した。
「君達が目標としている施設制御棟に有る『環境及び生体系制御システム』、一般兵士たちが言うAIの事だが、それを私の手で攻略する」
中尉は大きく息を吸い続けた。
「最終的にはAIが鎮座する制御室を占領後、我々側のプログラムをインストールをして再教育をしてやるのさ」
「中隊から我々小隊への指令は制御棟への突入路の確保でありました。指令が追加された訳ですね」
「そう理解してもらうと話は早い。もう一班は中隊本部と行動を共にしている。私としてはこの機会を逃したくはないのさ。他の連中を出し抜いて私を一番先に制御室に連れて行けば英雄だ。それに君の名前にも箔が付くぞ」
「了解しました。小隊は中尉の護衛を行い制御室の占領を目指します」
「うむ、宜しくたのむ。制御室占拠後この装置を持ち込んで接続を行う。僅かな時間だが動作時間は稼げ。プログラムの書き換えさえ終了してしまえば我々の勝利だ。他の連中が敵の注意を引いているうちに一気に突入する」
鷹華は楽観的な観測に基づいた結末に、内心ウンザリとしたがおくびにも出さなかった。しかし現実の困難な状態を知らせるのも仕事の内だ。
「ここから目標の扉まで30mも有りませんが、施設の扉の前には未だ偵察も出来ていない受付事務所が有ります。あの中に敵がいるとなると全滅の憂き目になります」
中尉はいらだった様子で鷹華に背を向けた。
「そこを考えるのが歴戦の強者だろう。私は技術屋だからね戦い方はお任せする。私も自分の部下との打合せもあるのでね」
鷹華は黙って敬礼をするしかなかった。
そばでずっと黙っていた曹長が言葉を選びながら鷹華に声をかけた。
「これは難しい指令をもらいましたね」
鷹華は一瞬目を閉たあと指示を口にした。
「曹長、命令の伝達と弾薬の分配を頼む。それと突撃班の編成だ。他の班から六人引っ張って来てくれ。あとロケットランチャー、スモーク、白リン手榴弾を集めてきてくれ。ライフルグレネードも何発か残っていたな」
「突撃班は二つに分ける。最初は私とサイモン中尉とで行く。その後に続く班はの指揮は曹長に任せる。残りの技術兵士編成に入れろ」」
「承知しました。直ちに取り掛かります」
曹長は重いはずの弾薬ケースを軽々と持ち小走りで他の分隊の立てこもっている場所に向かって行った。
本当に増援は間に合ってくれるか、相手が先に攻撃を仕掛けてこないか等
考えているうちに時間だけは時間だけは過ぎていく。
僅かな時間ではあったが一人になった鷹華は10年前の事を思い出していた。
10年でここまで世界の状況は変わってしまう物なのか、そこまで人類はこの地球を飽食し痛めつけていたと思うと暗澹たる気分にしかなれない。
サイモンの咳払いで考え事を中断するしかなかった。
「休息中にすまない。そっちの話は決まったかね」
「ええ、基本は何とか。中尉には私の突撃班と同行していただきます」
サイモンは途端に怖気付いて震える声で鷹華に頼み込んだ
「私は安全が確保出来てから……」
「サイモン中尉、最初にお断りしておきますが敵前逃亡は私の小隊では即刻銃殺ですよ。臆病風に吹かれて蹲ってる奴はケツを思いっきり蹴り飛ばします。覚えておいてください」
鷹華は悪戯っぽく笑いホルスターから自動拳銃を抜いて見せた。
「英雄候補がガタつくんじゃないよ。もし二人が倒れたら後続の連中が装備を拾って突入は続行される。それに持っているアタッシュケースは見たところ特別性で少しぐらいの衝撃では何ともないでしょう」
「お前どうかしてる。良く笑いながら言えるな」
「可笑しいのは中尉の方だと思います。ここで少しでも躊躇して突入が失敗したら人類は終わりですよ。必ず私についてきてください。あと一つお尋ねしたいことが有ります。ここの施設立体映像の投影器の場所を教えてください」
サイモンは鷹華の気迫に飲まれてしまい素直に質問に答えた。
「良く判りました。有益な情報有難うごさいます。突入まであちらでお休みください」
後姿は来た時とは大きく違い自信を失いトボトボと歩く姿は何とも気の毒な物だった。
「ありゃ、生きては帰れませんよ」
鷹華の背後で様子を見ていた曹長はため息をついた。
「しょうがないだろう。あれが指揮を執るような事になってみろ突入前に失敗するよ」
鷹華は若い女性らしく口を尖らせた。
「確かに指揮系統は、はっきりささせるべきですが突入前に死なれるのも困ります」
「あとは運まかせさ中尉も私もな。取りあえず座ろう中腰のままでは疲れる」
二人は地面に腰を下ろし部隊の現状につてい再確認を始めた。
そこで人類は人工知能に最適化の判断を任せ、自然環境の復活の為に最後の人的資源とエネルギーを投入し再起を図るための計画を実行した。
しかし人工知能が提示した命令は人類が恐慌に陥いるには十分過ぎる代物だった。
「少尉、多分右翼に展開している部隊からの伝令です」
後方を警戒しいてた曹長が怒鳴りながら伝令に向かって拳を上げた。
伝令と思われる兵士は陣地後方の砲撃で壊れかけたカフェテリアのテーブルを盾に小銃を高く揚げて合図を送っている。
この自然体験施設を訪れた恋人達や家族連れに食事や飲み物を供していた建物は、爆風のせいでテーブルや椅子が散乱してしまい平和だった頃の面影を今では全く残してはいなかった。
少尉の階級で呼ばれるには不釣り合いな小柄の女性は、砂漠戦迷彩を施した軍服を身に着け、陣地の傾斜に腹ばいになって前方の建物を注意深く偵察していた。陣地と言っても砲弾が爆発し土が吹き飛ばされた僅かなへこみを利用しているだけのものだ。しかし姿勢さえ低くしていれば敵の射線からは遮蔽されており命の保証ついて言えば問題は無い。
「今や指令も人力が頼りか。おい、大隊本部、中隊本部からの通信はどうか?」
通信兵は小型ヘッドセットを手で覆い、少しでも空中に浮かぶ雑音の中から確かな情報を逃すまいと受信機のを操作している。
「雑音のみで今のところは何も発信されていません。アンテナをもう少し伸ばせば他の隊の通信が拾えると思いますが」
「いや、やめておこう敵に指揮所が有る事を教える事もない。無線封鎖中と考えよう」
「少尉、伝令がお客さんを連れてきたみたいです」
筋骨逞しいラテン系の曹長が後方を指さしている。
「おい、余り身を乗り出すなよ何処から撃たれるか判らんぞ」
少尉と呼ばれた若い女性は自分のヘルメットを叩く仕草をした。辺りを見回し新手の敵が現れる兆候が無いか五感を研ぎ澄まし警戒を続けている。今のところは彼女の瞳に映る敵の姿は無かった。
現在は敵側も再編成中らしく一帯に響いていた銃声は止み陣地の周辺は一時の静寂に包まれていた。戦闘の激しさを物語る様に火災による煙と舞い上がった爆煙のせいで辺りは見通しは酷く悪いもになって双方の視界を限定するものとなっていた。
「それにしても、さっきまでの撃ち合が嘘のようですな」
浅黒い肌の曹長は白い歯をにっと見せた。本来なら男前の明るい笑顔なのだがこれから起こる事を考えると単なる気休めにしかなっていなかった。
「こちらも弾薬と増援が欲しいところだな。あと重機関銃の一個分隊でもいてくれれば楽なんだが」
女性少尉は耳の穴を掻く仕草をしながら答えた。
「畜生め、さっきのグレネードのせいで耳鳴りが止まん」
「少尉、それは贅沢ってもんですよ。まあ、本音を言わせてもらえば中隊本部付の機動歩兵が一体欲しいですな」
曹長は伝令たちに手でもっと背を低くするように合図を送っている。
「あのロボットか? あの入り口の先にあるをAI壊すのに機械の手助は受けたくないな」
少尉は本音を吐き出し薄い唇をきつく結んだ。
その時、伝令と他の三人の兵士が陣地に飛び込むように滑り込んで来た。
軍服はボロボロで激しい銃火の洗礼を受けてきたようだった。最前線に張り付いている彼女率いる小隊の連中の格好も似たり寄ったりの状態ではあるが。
飛び込んで込んでくるなり男たちの一人がワザとらしく言って見せた。
「ここが噂のタカの小隊か、小隊長はどこか?」
このAIとの戦争において戦功で名を馳せ、前線の兵士で知らぬものが居ないはずの鷹華に対して良い感情を持つものばかりではなかった。
「やれやれ、またこの手合いか」
鷹華はあきれるしかなかった。すぐににでも命が失われかねない場所で度胸付の空威張りか、女性である鷹華に対抗心を燃やす者は必ず名前を間違える。当然ワザとだが。
その手の類の男達は戦闘が始まった途端、冷たくなって地面に横たわるのが常だった。
これから死んでしまう可哀想な男に腹を立てても仕方ないと思った鷹華はニッコリと微笑んで敬礼をした。
「中々、酷い目にあったようですね中尉殿。始めまして私は鷹華少尉であります」
男は一瞬だけ無表情になったが、すぐにあからさまな作り笑いを浮かべた。
「君がエスコートだと思うと心強いな。私は第511特殊工兵隊サイモン中尉。宜しく頼む」
お互い中腰になりながら握手を交わした。ひとしきりの挨拶が済むと伝令が
鷹華に話しかけた。
「少尉殿、お話中、失礼します。中隊長からの指令をお伝えします。貴殿の率いるA小隊は正面入り口から突入せよとのことです。合図は右翼のB小隊、C小隊の攻撃開始が合図の代わりとなります」
「了解した。増援の予定はあるか?」
伝令はすぐさま返事をした。
「ハッ! 機動歩兵一体と工兵三名の増援を送るとのことです」
「ご苦労。司令部に帰って了解した旨の報告を頼む」
鷹華に敬礼をした伝令は返礼も待たず踵を返して陣地から飛び出していった。少しでも被弾の確立を下げようと腰を落とし次の遮蔽物を目指して一目散に走り去って行った。
伝令を見送った鷹華はサイモン中尉に顔を向けた。
「中尉殿、これから行う戦闘と最終目的についての打合せを行いたいと思いますがいかかでしょうか」
先程のから丁寧な扱いを受けている中尉はまんざらでもなく上機嫌で頷き自分の目的を話し出した。
「君達が目標としている施設制御棟に有る『環境及び生体系制御システム』、一般兵士たちが言うAIの事だが、それを私の手で攻略する」
中尉は大きく息を吸い続けた。
「最終的にはAIが鎮座する制御室を占領後、我々側のプログラムをインストールをして再教育をしてやるのさ」
「中隊から我々小隊への指令は制御棟への突入路の確保でありました。指令が追加された訳ですね」
「そう理解してもらうと話は早い。もう一班は中隊本部と行動を共にしている。私としてはこの機会を逃したくはないのさ。他の連中を出し抜いて私を一番先に制御室に連れて行けば英雄だ。それに君の名前にも箔が付くぞ」
「了解しました。小隊は中尉の護衛を行い制御室の占領を目指します」
「うむ、宜しくたのむ。制御室占拠後この装置を持ち込んで接続を行う。僅かな時間だが動作時間は稼げ。プログラムの書き換えさえ終了してしまえば我々の勝利だ。他の連中が敵の注意を引いているうちに一気に突入する」
鷹華は楽観的な観測に基づいた結末に、内心ウンザリとしたがおくびにも出さなかった。しかし現実の困難な状態を知らせるのも仕事の内だ。
「ここから目標の扉まで30mも有りませんが、施設の扉の前には未だ偵察も出来ていない受付事務所が有ります。あの中に敵がいるとなると全滅の憂き目になります」
中尉はいらだった様子で鷹華に背を向けた。
「そこを考えるのが歴戦の強者だろう。私は技術屋だからね戦い方はお任せする。私も自分の部下との打合せもあるのでね」
鷹華は黙って敬礼をするしかなかった。
そばでずっと黙っていた曹長が言葉を選びながら鷹華に声をかけた。
「これは難しい指令をもらいましたね」
鷹華は一瞬目を閉たあと指示を口にした。
「曹長、命令の伝達と弾薬の分配を頼む。それと突撃班の編成だ。他の班から六人引っ張って来てくれ。あとロケットランチャー、スモーク、白リン手榴弾を集めてきてくれ。ライフルグレネードも何発か残っていたな」
「突撃班は二つに分ける。最初は私とサイモン中尉とで行く。その後に続く班はの指揮は曹長に任せる。残りの技術兵士編成に入れろ」」
「承知しました。直ちに取り掛かります」
曹長は重いはずの弾薬ケースを軽々と持ち小走りで他の分隊の立てこもっている場所に向かって行った。
本当に増援は間に合ってくれるか、相手が先に攻撃を仕掛けてこないか等
考えているうちに時間だけは時間だけは過ぎていく。
僅かな時間ではあったが一人になった鷹華は10年前の事を思い出していた。
10年でここまで世界の状況は変わってしまう物なのか、そこまで人類はこの地球を飽食し痛めつけていたと思うと暗澹たる気分にしかなれない。
サイモンの咳払いで考え事を中断するしかなかった。
「休息中にすまない。そっちの話は決まったかね」
「ええ、基本は何とか。中尉には私の突撃班と同行していただきます」
サイモンは途端に怖気付いて震える声で鷹華に頼み込んだ
「私は安全が確保出来てから……」
「サイモン中尉、最初にお断りしておきますが敵前逃亡は私の小隊では即刻銃殺ですよ。臆病風に吹かれて蹲ってる奴はケツを思いっきり蹴り飛ばします。覚えておいてください」
鷹華は悪戯っぽく笑いホルスターから自動拳銃を抜いて見せた。
「英雄候補がガタつくんじゃないよ。もし二人が倒れたら後続の連中が装備を拾って突入は続行される。それに持っているアタッシュケースは見たところ特別性で少しぐらいの衝撃では何ともないでしょう」
「お前どうかしてる。良く笑いながら言えるな」
「可笑しいのは中尉の方だと思います。ここで少しでも躊躇して突入が失敗したら人類は終わりですよ。必ず私についてきてください。あと一つお尋ねしたいことが有ります。ここの施設立体映像の投影器の場所を教えてください」
サイモンは鷹華の気迫に飲まれてしまい素直に質問に答えた。
「良く判りました。有益な情報有難うごさいます。突入まであちらでお休みください」
後姿は来た時とは大きく違い自信を失いトボトボと歩く姿は何とも気の毒な物だった。
「ありゃ、生きては帰れませんよ」
鷹華の背後で様子を見ていた曹長はため息をついた。
「しょうがないだろう。あれが指揮を執るような事になってみろ突入前に失敗するよ」
鷹華は若い女性らしく口を尖らせた。
「確かに指揮系統は、はっきりささせるべきですが突入前に死なれるのも困ります」
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