上 下
61 / 83

61私はゲスを集めし者

しおりを挟む
やっぱり魔王様をトップに一枚岩と言われる魔国にも、反乱分子がいるらしい。

魔国にあるデビル冒険者ギルドの副ギルマス、ジュライと約束通り魔国に向かうふりをして7日目。あと1日でブライト王国の国境だが、ちょっと寄り道をしている。

今日が10日に1度だけ許されたゲルダとの逢瀬の日。湖がある方へ走っていた。
沼ラボで治療中の彼女が外に出られるのは4時間。時間を有効に生かすため、裕福層向けのリゾート宿を取り、名物のトラウト料理を用意するつもりだ。

そして、準備したあとにゲルダを沼の底から出す。

お腹から下のゲル太のために、まだ見せたことがない白いムチムチボディースーツに着替えて、粗末なローブを羽織ってきた。

ルンルン気分で走っていたら、何人かの人間が追ってきた。

「人間が12人。ジュライの関係者と思われたかな。スピードを倍加させたら撒けるけど、ご飯食べてるときに押し掛けられたくない。片付けるか」

逃げると決めたから、襲撃者の痕跡を消す。

方向性を変えたら、こんな便利なスキルもないのだ。

森があったから、徹底的に殺ってもいいように、300メートルほど奥に入り30メートルほどの丸い草地で待った。



自分の低い探知力に今さらショックは受けないが、人間12人ではなく魔族14人だった。

「ふうっ。サーシャさんですね。ちょっとお話を聞いてもらえないでしょうか」
「私に話すことはないわ」

「強気ですね。ジュライと何を話したか聞きたいんですよ。足は速いですが、感じる魔力ではレベル30前後ですよね。ここには50越えも5人いますよ。分が悪いと思いますよ」
「ジュライ本人に聞きなさい。人を呼ぶわよ」
「好都合なことに誰もいません。少なくとも5キロ圏内に人はいないようです」

ジュライの監視もなし。約束は守っているようだ。

「何者かは聞かない。追ってきたから敵と見なした。だけどサービスで1分以内に去るなら殺さない」

「押さえつけるか」
「粗末なローブを着ているが、なんか見てるとムラムラするんだよな」
「連れて帰る前に遊んでいいよな」


「殺し合いで承ったわ。1メートル沼」

ぽちょん。ローブを脱いで、ムチムチスーツになった。

沼様の意思だろうか。私のとこにはどんな敵でも人格者が来ない。世界有数の理知的民族「魔族」ですら、こんなのだ。

クズ、ゲス、スケベの中から、「沼」に導かれし精鋭がやってくる。

魔国に行かないから、魔族を殺してもいい。

「そういや沼レベル6の「沼5メートル」は放棄したけど、沼の底は幾らか操作できるようになったって言ってたな」

それに、「沼」自体も吸い込む力というか、何か変化を感じる。

思いつきで沼の底を実戦に投入することにした。


レベル6になって広がった「沼の底」の可動域。ゲルダのことで忘れかけてて、検証してなかった。

いきなし実戦はない?

私の魔力が少ないからと、推定レベル150をレベル30と判断した程度の相手だもん。素手で殺せる。

「沼レベル6の「沼5メートル」は放棄したけど、沼の底は幾らか操作できるようになったって言ってたな」

ただ念じるだけだと、普段通り目の前2メートル、上2メートルの位置に沼の底が現れそうだった。

イメージしていくと横10メートル、上10メートルの可動域。泥団子の発動範囲と同じだ。

「なにぶつくさ言ってるんだよ!」

実は戦闘が始まっている。投げナイフ、剣檄、ファイアボールが飛んで来るが、遅く感じる。走りながら、1人も逃がさないように移動して沼に敵をキャッチしている。

「使ってみるか、前方、高さ共に4メートルで沼の底。出てこい、2メートル岩石」

とっぷん。ず、ず、ずとん!

「・・なんだこりや」
「空中から岩が出てきたな」

迫力はあるが・・。発動遅い。

「誰だってよけられるな。戦闘中の使用は保留」

沼レベル6の恩恵はもうひとつあった。
ちょうど土魔法使いを沼に捉えたときだ。

「変な穴に沈められてたまるか、壊してやる。ストーンニードル!」

すると、魔法が沼の上で発動したが、沼の上に出た分のストーンニードルが沼に沈んだ。

「へえ~。そうか、沼様は外に干渉できないから理解してないだけで、「沼」の細かな進化もあるんだ。ぎゃっ」

ダメージは小さいが、お尻にファイアボールを食らった。

「火魔法か。もう次の準備してる。そうだ実験のチャンス」

ぺちょっ。
2メートル泥団子を火魔法使いが術を出すときに投げつけた。

「ファイアトルネード!うああっ」

ぺちょっ。ぽちょん。とぷぷぷ、とぷっ。とぷっ。

「魔法使いと魔法を吸い込んだよ。沼の中身表示は?」

ストーンニードル0・5、ファイアトルネード0・8になってた。
0・8は一回分の8割をとらえたのだろうか。それとも何かの基準の8割なのか。

「疑似だけど、初の魔法だ。前上に4メートル、ファイアトルネード0・8放出」

ゴオオオオ!

魔法使いはレベル50の1人のだったのだろう。プラスして魔法に長けた魔族。
渦巻く炎が一気に7人の敵を焼き、3人をヤケドさせた。

そして私も火に巻かれている。

「あっちち。半分にしとけば良かったよ」

ここで知ったが、沼の底にも10メートルルールは生きていた。

命令した炎は少しずつ降ってきて、発動が終わらない。

何とか避けてるが、熱い。

沼に何か沈むとき10メートルしか離れられないのと同様に、沼の底から炎が出終わるまで10メートルしか遠ざかれないのだ。

それに空中4メートル地点からの10メートルだから、炎が落ちる場所からの距離は6メートルくらいに見える。

「ちっくしょう。ゲル太を喜ばせるためのボディースーツは煤で汚れるし、髪の毛もチリチリ。私のエロボディーは「ゲスのエサ」以外の使用が禁じられているのか・・」

ゴスッ、ゴスッ。ゴスッ、ゴスッ、ゴスッ。

腹を立てた私は、残った敵を丹念に倒した。

「お尻がヒリヒリしてきた」


仕方なくワンピに着替え、湖の方に向かった。


しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ナイトメア

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

お爺さんの鳥の巣ぼうし

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

存在しない男の最終記録を見る

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

我、輝夜の空に君を想ふ。

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

バレンタインっ……などっ……!

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:3

処理中です...