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78 潰すルートは残りひとつだけ
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メルカに第三王子配下の中ボスココヤシを任せて、私は手下への牽制だ。
狙いは150人の足止め。ビビらせる。
「噴水の中に「沼の底」。ヘルアイス0・2」
ビシビシビシビシ。噴水の水が、空を舞っている分も含めて凍った。
幸いに、私が「水の精霊」を使うと知っているらしい。噴水から兵士全員が少し離れている。被害者はいない。
「こ、これはヘルアイス。こんな高等魔法まで」
「お、おい。発動の瞬間が分からなかったぞ」
「誰かがココヤシとメルカの戦いに茶々を入れたら、周囲の人間も氷漬けにする。戦いが終われば、私達は去る。だから動かないで」
メルカとココヤシの戦いは、美しかったと表現するべきだろうか。
メルカは、ココヤシの剣の一撃をリーチが長い槍で受け流した。そのまま槍の石突きで足を払いに行ったが、よけられ反撃が来た。
メルカが反撃の横なぎを跳んで避け、槍を縦に叩きつける。
避ける。反撃。跳ぶ。かわす。横なぎ。ジャンプ。反撃。
本物の刃を持って、演舞のようなすれすれの攻防。私もココヤシの兵士も見とれている。
「男女問わずモテるやつは、戦いまできれいだな」
ギイン。均衡を崩れたのはメルカからだった。ボウクンペンギンから受けた傷が癒えきっていない彼女は、ココヤシの上からの一撃を避けきれず槍で受けた。
防戦一方となった。
「取った」
「こなくそ!」
「メルカ!」
脳天を割られそうになるメルカは、槍で合わせてココヤシの足を刺そうとした。
だけど、完全に後手だ。
どすっ。
完全に後手なのに、メルカの槍はココヤシの右太ももに刺さっている。
逆にココヤシの剣はメルカの脳天ではなく、左肩を斬っただけ。
相討ちで収まった。
「え、ココヤシ・・。なんで最後に攻撃の手を緩めたの?」
「ぐっ。・・相打ちだけど、勝負は俺の勝ちだよなメルカ」
「どういうこと」
「俺の首は仕方ない。だが、そこらにいる部下は俺に付いてきただけの純粋な奴らだ。分かるよな」
「助命のお願いね」
「そうだ。お前が死んだら、あの美人な精霊使いが全員殺しそうだからな。これに賭けてみた」
「貸しを返せってことだね」
「どうだ。頼みを聞いてくれるか」
「了解した。ただ、あなた方は、最低2日間はこの街にとどまって」
「ふむ、そんだけでいいのか。そっちの精霊使いさんも、それでいいか」
「いいわよ、メルカ」
「で、俺の首はどうする」
「いらないよ。とにかく2日間、この街に「あなたが」いてくれればいい」
ココヤシがこの街にいることを強調するメルカ。これで少し分かった。
明日、私達は首都ガントシティまで行って、第三王子を倒しに行く。その前に私達はトコブシ王女と合流する。
ココヤシの足を刺して戦えなくしたメルカの表情が緩やかだ。達観したかのような顔つきはきになるが、緊張感が溶けた様子だ。
メルカと同行して、何度かやったおかしな戦い。ボウクンペンギンと戦ったりして、最後は私に頼めば簡単に勝てるココヤシ戦を自分でやった。
メルカは傷を負いながら「トコブシ姫の死亡フラグ」を1個ずつ潰していった。
「直感」が発動してしまったメルカには、どんな風に運命が枝分かれしても、トコブシ姫が死神に連れ去られるビジョンが見えていたのだと思う。
だけど私が現れて、「沼」を使えば立ったフラグのと沼に回収される戦いも増えたのだと思う。
だけど避けられない部分は、メルカ自身が引き受けた。
ガント上陸からの敵兵殺し、ボウクンペンギン戦、勝った戦いのあと兵士3人との戦い、ココヤシ戦。細かな言動を気にすれば、さらに不可解な部分があった。
「メルカ、あんた傷だらけだけど、これで満足なんだよ」
「何か気付きましたか」
「あんたの難しいスキル絡みだから予想でしかない。だけどあんたには、トコブシ姫を殺す人間、殺される事象の派生まで見えるんだね」
「・・はい」
「予想以上に高度だね。最後にトコブシ姫の心臓まで剣が届くのが、ココヤシだけじゃなかったんだ」
「はい。厳密に言えば、ココヤシ軍です。止め方は、ココヤシとの戦い方が条件だったんです。サーシャさんのおかげで何とかなりました」
「難しいね。具体的には」
「ココヤシが五体満足なら、ココヤシがトコブシ姫を殺す「直感」でした」
「私のおかげとは、何なの」
「さっきのココヤシ兵の一団70人全員に姫を殺す要素があったんです」
「?」
「ココヤシは部下に慕われています。ココヤシを殺せば、部下の誰かが私の主君である姫を殺していました。またサーシャさんが足止めだけしてくれましたが、部下の誰かが死んでいれば、その同僚が姫に復讐をしていました。確実に」
「闇のゲルダを伴侶に持つ私だから理解しようと思ってる。けど、普通はそんな因果律を信じるやつかいないよね」
「普通は。だけど私は運がいいことにサーシャさんと出会いました。明日、死神の最後の抵抗があります。太陽が沈むまでに「何か」があります。それを防ぐことでトコブシ姫を生かすことで、死亡ルートが完全に消えます」
「ここまで付き合ったから、最後まで見届けるよ」
「ありがとうございます」
夜になって、傷だらけのメルカが熱を出した。本当なら今日がゲルダとの逢瀬の日だが、メルカを放置するのもまずい。
ゲルダとも面識ができたメルカが私達がデートしている間に重体になったりしたら、2人とも後味が悪い。
「沼様」
『なんだサーシャ』
「今日が本当はゲルダに会える日なんだけど、メルカが熱を出したの。デートは明日になるけど、ごめんって言ってもらえる?」
・・・
『大丈夫だ。明日を楽しみにしているそうだ』
「伝言に使って、ごめんね沼様」
『悪いと思うなら、明日は間違いなく不満と悪意でドロドロの第三王子を私のとこに送ってこいよ』
「おっけ~」
私が珍しく看病した甲斐があり、メルカは幾らか元気を取り戻した。
狙いは150人の足止め。ビビらせる。
「噴水の中に「沼の底」。ヘルアイス0・2」
ビシビシビシビシ。噴水の水が、空を舞っている分も含めて凍った。
幸いに、私が「水の精霊」を使うと知っているらしい。噴水から兵士全員が少し離れている。被害者はいない。
「こ、これはヘルアイス。こんな高等魔法まで」
「お、おい。発動の瞬間が分からなかったぞ」
「誰かがココヤシとメルカの戦いに茶々を入れたら、周囲の人間も氷漬けにする。戦いが終われば、私達は去る。だから動かないで」
メルカとココヤシの戦いは、美しかったと表現するべきだろうか。
メルカは、ココヤシの剣の一撃をリーチが長い槍で受け流した。そのまま槍の石突きで足を払いに行ったが、よけられ反撃が来た。
メルカが反撃の横なぎを跳んで避け、槍を縦に叩きつける。
避ける。反撃。跳ぶ。かわす。横なぎ。ジャンプ。反撃。
本物の刃を持って、演舞のようなすれすれの攻防。私もココヤシの兵士も見とれている。
「男女問わずモテるやつは、戦いまできれいだな」
ギイン。均衡を崩れたのはメルカからだった。ボウクンペンギンから受けた傷が癒えきっていない彼女は、ココヤシの上からの一撃を避けきれず槍で受けた。
防戦一方となった。
「取った」
「こなくそ!」
「メルカ!」
脳天を割られそうになるメルカは、槍で合わせてココヤシの足を刺そうとした。
だけど、完全に後手だ。
どすっ。
完全に後手なのに、メルカの槍はココヤシの右太ももに刺さっている。
逆にココヤシの剣はメルカの脳天ではなく、左肩を斬っただけ。
相討ちで収まった。
「え、ココヤシ・・。なんで最後に攻撃の手を緩めたの?」
「ぐっ。・・相打ちだけど、勝負は俺の勝ちだよなメルカ」
「どういうこと」
「俺の首は仕方ない。だが、そこらにいる部下は俺に付いてきただけの純粋な奴らだ。分かるよな」
「助命のお願いね」
「そうだ。お前が死んだら、あの美人な精霊使いが全員殺しそうだからな。これに賭けてみた」
「貸しを返せってことだね」
「どうだ。頼みを聞いてくれるか」
「了解した。ただ、あなた方は、最低2日間はこの街にとどまって」
「ふむ、そんだけでいいのか。そっちの精霊使いさんも、それでいいか」
「いいわよ、メルカ」
「で、俺の首はどうする」
「いらないよ。とにかく2日間、この街に「あなたが」いてくれればいい」
ココヤシがこの街にいることを強調するメルカ。これで少し分かった。
明日、私達は首都ガントシティまで行って、第三王子を倒しに行く。その前に私達はトコブシ王女と合流する。
ココヤシの足を刺して戦えなくしたメルカの表情が緩やかだ。達観したかのような顔つきはきになるが、緊張感が溶けた様子だ。
メルカと同行して、何度かやったおかしな戦い。ボウクンペンギンと戦ったりして、最後は私に頼めば簡単に勝てるココヤシ戦を自分でやった。
メルカは傷を負いながら「トコブシ姫の死亡フラグ」を1個ずつ潰していった。
「直感」が発動してしまったメルカには、どんな風に運命が枝分かれしても、トコブシ姫が死神に連れ去られるビジョンが見えていたのだと思う。
だけど私が現れて、「沼」を使えば立ったフラグのと沼に回収される戦いも増えたのだと思う。
だけど避けられない部分は、メルカ自身が引き受けた。
ガント上陸からの敵兵殺し、ボウクンペンギン戦、勝った戦いのあと兵士3人との戦い、ココヤシ戦。細かな言動を気にすれば、さらに不可解な部分があった。
「メルカ、あんた傷だらけだけど、これで満足なんだよ」
「何か気付きましたか」
「あんたの難しいスキル絡みだから予想でしかない。だけどあんたには、トコブシ姫を殺す人間、殺される事象の派生まで見えるんだね」
「・・はい」
「予想以上に高度だね。最後にトコブシ姫の心臓まで剣が届くのが、ココヤシだけじゃなかったんだ」
「はい。厳密に言えば、ココヤシ軍です。止め方は、ココヤシとの戦い方が条件だったんです。サーシャさんのおかげで何とかなりました」
「難しいね。具体的には」
「ココヤシが五体満足なら、ココヤシがトコブシ姫を殺す「直感」でした」
「私のおかげとは、何なの」
「さっきのココヤシ兵の一団70人全員に姫を殺す要素があったんです」
「?」
「ココヤシは部下に慕われています。ココヤシを殺せば、部下の誰かが私の主君である姫を殺していました。またサーシャさんが足止めだけしてくれましたが、部下の誰かが死んでいれば、その同僚が姫に復讐をしていました。確実に」
「闇のゲルダを伴侶に持つ私だから理解しようと思ってる。けど、普通はそんな因果律を信じるやつかいないよね」
「普通は。だけど私は運がいいことにサーシャさんと出会いました。明日、死神の最後の抵抗があります。太陽が沈むまでに「何か」があります。それを防ぐことでトコブシ姫を生かすことで、死亡ルートが完全に消えます」
「ここまで付き合ったから、最後まで見届けるよ」
「ありがとうございます」
夜になって、傷だらけのメルカが熱を出した。本当なら今日がゲルダとの逢瀬の日だが、メルカを放置するのもまずい。
ゲルダとも面識ができたメルカが私達がデートしている間に重体になったりしたら、2人とも後味が悪い。
「沼様」
『なんだサーシャ』
「今日が本当はゲルダに会える日なんだけど、メルカが熱を出したの。デートは明日になるけど、ごめんって言ってもらえる?」
・・・
『大丈夫だ。明日を楽しみにしているそうだ』
「伝言に使って、ごめんね沼様」
『悪いと思うなら、明日は間違いなく不満と悪意でドロドロの第三王子を私のとこに送ってこいよ』
「おっけ~」
私が珍しく看病した甲斐があり、メルカは幾らか元気を取り戻した。
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