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74 アルバさんの涙
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孤児院に行く前にギルドに寄った。
昼に預けていた獲物の査定額は1860万ゴールド。
本来なら2300万ゴールドが見込めたが、ざく切りの獲物も多かったために減額されたそうだ。
「すごいユリナさん」
「何で薬草採取なんかしたの?」
「ふふっ。教会に連れて行って」
「本当に寄付してくれるんだ」
「そう。だから、夕御飯も食べさせて」
「もちろん。許可を出すのはシスターだけどな」
「あはは」
ギルドから教会までは1キロ。寄付するために現金で報酬を受け取ったが、危ない目をした男達が3人付いてきてる。
子供達を先に教会に行かせて、私は路地に入り不埒な輩を待ち伏せすることにした。
が・・。
現れた男達の後ろから、見たことがある人が急接近。
「おい姉ちゃん、羽振りがよさ・・」
「うおっ、なんだ」
「うがっ」
あっという間に、両足の足先が反対側に向いた男達が地面に転がった。
「アルバさん」
「ちょうど通りかかったら、評判が悪い冒険者がユリナ様を襲う話をしながら歩いてたんです」
「助けに来てくれたんだ。ありがとう」
「・・いえ」
私には動きが正確に見えなかった。
スマトラさんといい、陰の実力者ってやつ、間違いなし。
「孤児院に寄付しようと思って大金を持ってるから狙われたかな」
「じゃあ、念のためにご一緒します」
「アルバさん、ご飯は?」
「まだですが」
「押しかけて、寄付したついでにご飯ももらいましょ」
「俺まで、いいのかな?」
「いいのいいの。こんなの勢いよ」
教会に着いた。
先に子供達が話をしていてくれて、このオルシマ教会に800万ゴールドを寄付。
カナワの教会にも800万ゴールドを送ってもらうことにした。
そしてビッグチキン、ターキーを各3羽出して、肉祭りとなった。
「アルバさん、食べてる?」
「あ、はい」
「浮かない顔ね。ごめん、強引に誘ったけど、口に合わなかったかな」
「そんなことはありません。ユリナ様に誘ってもらってうれしいです」
「何か心配ごとでも?」
「・・いえ。実は俺ら兄弟も孤児ですが、子供がこんなに笑うのが不思議で・・」
「え?当たり前でしょ・・」
いや、貴族の匂いがするスマトラさんに暗殺者のような動きをするアルバさん。
壮絶な過去を持っているのかも。
『超回復』で体は治した。だけど本物の聖女ではないは私に、心までは治せない。
せめて、できることを。
「今は笑えてる?」
「・・はい。ユリナ様に顔と頭のやけどの跡を治療をしていただいてからは、笑えるようになりました」
「また、どこか痛くなったら来てね。もう大丈夫だよ。もっと笑えるよ」
「う、うう・・」
「泣いてもいいよ。なんか辛いことがあったんだね。これから幸せになれるよ、きっと」
「あ、ありがとう。ございます」
「また、ここに一緒に来て、夕飯をごちそうになろうね」
「・・はい」
アルバさんの涙を見たら、リスクがあっても今後も『超回復』の出し惜しみはやめようと思う。
持ち込みのエールを飲んで、大人は乾杯。
気分が良くなり、子供達13人とシスター、神父様に『超回復』をかけまくった。
重病人なし。効果は神父様の慢性疲労が良くなっただけだ。
◆
次の日にギルドでレベル測定をした。ジャスト40。HPは気持ちいいくらい、最低基準の120だった。
レベル60を早く目指したいが、Bランクになれるまで10か月ある。
1日で街を出るのも味気ない。10日ほど孤児院の子供達と、冒険者活動をしたい。
すると、昨日一緒に行動したアラン、ジョン、メリー、ハンナに声をかけられた。
向こうから臨時パーティーを申し入れてきた。
街の北4キロにあるエキサ初級ダンジョンに行って、私がいるうちに荒稼ぎしたいらしい。
目的は孤児院の年下の子供の食費稼ぎ。二つ返事で乗った。
ダンジョンの敵は、5階まではウサギとスライムのみ。
たまに出る1角ウサギも低レベルで強くない。
子供達に『超回復』。スキルでドーピングして30分で初級ダンジョンに到着した。
スキルは「疲労回復スッキリ気功術」と、適当な名前にした。
一階はスライムだらけ。20~25センチ楕円の水色のふにふにボディーの中に核がある。
ボディーに手を触れても、溶かされることもない。
何かを食べている感じではなく、いつの間にか消滅していて、いつの間にか発生している。
「ユリナさん、スライムなんか珍しいの?」
「私が前にいたとこでは、あんまり見なかった」
「なにつついてるの?」
「いや、破裂するかと思って」
「攻撃もしてこないけど、つついても壊れないよ。核を壊したときだけ、でろんってなるんだよ」
この世の不思議物体とか、不思議生物とか呼ばれる。
「む、物体と生物。無機物、有機物に対応しているってことかな?」
「ユリナさ~ん。早くラビットが出る3階より下に降りようよ。下層にもスライムはいるから、そこで遊んでよ」
スライムに興味が湧いた。
思い切って5階まで降りると30のスライムを収納した。それから子供らの期待通りに、ウサギ捕獲を手伝った。
逃げられて最初は追いつけないが、こちらのスタミナは、私の『超回復』を使って無尽蔵。
子供と一緒に走り続け、疲れたウサギを次々と捕まえた。
普段は4人で3階のウサギ3匹ほど。15000ゴールドが目安だが、今回は大量。
大きくて値段が高くなる5階のウサギを13匹も捕まえた。推定売却金額は99500ゴールド。
メリーやハンナの顔見知りも、途中で連行した。
以前の私のような貧乏そうな子供たち4人。狩りを手伝い、普段より多くの獲物を獲得してもらった。
『超回復』は本来は人を助けられるスキル。
殺伐とした場面の方が多かったが、何だか気分は穏やか。揺れていた精神状態も、わずか2日で落ち着いてきた。
「しばらく食えない子供たちの手伝いをしながら過ごすのもいいな」
スライムを使った実験は今夜、街の外でやろう。
昼に預けていた獲物の査定額は1860万ゴールド。
本来なら2300万ゴールドが見込めたが、ざく切りの獲物も多かったために減額されたそうだ。
「すごいユリナさん」
「何で薬草採取なんかしたの?」
「ふふっ。教会に連れて行って」
「本当に寄付してくれるんだ」
「そう。だから、夕御飯も食べさせて」
「もちろん。許可を出すのはシスターだけどな」
「あはは」
ギルドから教会までは1キロ。寄付するために現金で報酬を受け取ったが、危ない目をした男達が3人付いてきてる。
子供達を先に教会に行かせて、私は路地に入り不埒な輩を待ち伏せすることにした。
が・・。
現れた男達の後ろから、見たことがある人が急接近。
「おい姉ちゃん、羽振りがよさ・・」
「うおっ、なんだ」
「うがっ」
あっという間に、両足の足先が反対側に向いた男達が地面に転がった。
「アルバさん」
「ちょうど通りかかったら、評判が悪い冒険者がユリナ様を襲う話をしながら歩いてたんです」
「助けに来てくれたんだ。ありがとう」
「・・いえ」
私には動きが正確に見えなかった。
スマトラさんといい、陰の実力者ってやつ、間違いなし。
「孤児院に寄付しようと思って大金を持ってるから狙われたかな」
「じゃあ、念のためにご一緒します」
「アルバさん、ご飯は?」
「まだですが」
「押しかけて、寄付したついでにご飯ももらいましょ」
「俺まで、いいのかな?」
「いいのいいの。こんなの勢いよ」
教会に着いた。
先に子供達が話をしていてくれて、このオルシマ教会に800万ゴールドを寄付。
カナワの教会にも800万ゴールドを送ってもらうことにした。
そしてビッグチキン、ターキーを各3羽出して、肉祭りとなった。
「アルバさん、食べてる?」
「あ、はい」
「浮かない顔ね。ごめん、強引に誘ったけど、口に合わなかったかな」
「そんなことはありません。ユリナ様に誘ってもらってうれしいです」
「何か心配ごとでも?」
「・・いえ。実は俺ら兄弟も孤児ですが、子供がこんなに笑うのが不思議で・・」
「え?当たり前でしょ・・」
いや、貴族の匂いがするスマトラさんに暗殺者のような動きをするアルバさん。
壮絶な過去を持っているのかも。
『超回復』で体は治した。だけど本物の聖女ではないは私に、心までは治せない。
せめて、できることを。
「今は笑えてる?」
「・・はい。ユリナ様に顔と頭のやけどの跡を治療をしていただいてからは、笑えるようになりました」
「また、どこか痛くなったら来てね。もう大丈夫だよ。もっと笑えるよ」
「う、うう・・」
「泣いてもいいよ。なんか辛いことがあったんだね。これから幸せになれるよ、きっと」
「あ、ありがとう。ございます」
「また、ここに一緒に来て、夕飯をごちそうになろうね」
「・・はい」
アルバさんの涙を見たら、リスクがあっても今後も『超回復』の出し惜しみはやめようと思う。
持ち込みのエールを飲んで、大人は乾杯。
気分が良くなり、子供達13人とシスター、神父様に『超回復』をかけまくった。
重病人なし。効果は神父様の慢性疲労が良くなっただけだ。
◆
次の日にギルドでレベル測定をした。ジャスト40。HPは気持ちいいくらい、最低基準の120だった。
レベル60を早く目指したいが、Bランクになれるまで10か月ある。
1日で街を出るのも味気ない。10日ほど孤児院の子供達と、冒険者活動をしたい。
すると、昨日一緒に行動したアラン、ジョン、メリー、ハンナに声をかけられた。
向こうから臨時パーティーを申し入れてきた。
街の北4キロにあるエキサ初級ダンジョンに行って、私がいるうちに荒稼ぎしたいらしい。
目的は孤児院の年下の子供の食費稼ぎ。二つ返事で乗った。
ダンジョンの敵は、5階まではウサギとスライムのみ。
たまに出る1角ウサギも低レベルで強くない。
子供達に『超回復』。スキルでドーピングして30分で初級ダンジョンに到着した。
スキルは「疲労回復スッキリ気功術」と、適当な名前にした。
一階はスライムだらけ。20~25センチ楕円の水色のふにふにボディーの中に核がある。
ボディーに手を触れても、溶かされることもない。
何かを食べている感じではなく、いつの間にか消滅していて、いつの間にか発生している。
「ユリナさん、スライムなんか珍しいの?」
「私が前にいたとこでは、あんまり見なかった」
「なにつついてるの?」
「いや、破裂するかと思って」
「攻撃もしてこないけど、つついても壊れないよ。核を壊したときだけ、でろんってなるんだよ」
この世の不思議物体とか、不思議生物とか呼ばれる。
「む、物体と生物。無機物、有機物に対応しているってことかな?」
「ユリナさ~ん。早くラビットが出る3階より下に降りようよ。下層にもスライムはいるから、そこで遊んでよ」
スライムに興味が湧いた。
思い切って5階まで降りると30のスライムを収納した。それから子供らの期待通りに、ウサギ捕獲を手伝った。
逃げられて最初は追いつけないが、こちらのスタミナは、私の『超回復』を使って無尽蔵。
子供と一緒に走り続け、疲れたウサギを次々と捕まえた。
普段は4人で3階のウサギ3匹ほど。15000ゴールドが目安だが、今回は大量。
大きくて値段が高くなる5階のウサギを13匹も捕まえた。推定売却金額は99500ゴールド。
メリーやハンナの顔見知りも、途中で連行した。
以前の私のような貧乏そうな子供たち4人。狩りを手伝い、普段より多くの獲物を獲得してもらった。
『超回復』は本来は人を助けられるスキル。
殺伐とした場面の方が多かったが、何だか気分は穏やか。揺れていた精神状態も、わずか2日で落ち着いてきた。
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スライムを使った実験は今夜、街の外でやろう。
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