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118 誰も喜ばなくても
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イーサイド男爵家のことを心の中に封印しすぎて、肝心な人のことを忘れていた。
アリサの心の拠り所だった、育ての親ともいえるサマンサさんのことだ。
アリサが1人だけ、また会いたいと言った人。
不遇の子供時代を過ごしたアリサが私にも優しくしてくれた。きっとサマンサさんのお陰だ。
場合によっては、アリサのことを話さないといけないと思う。
そう考えると、気が重い。
モナの死をモナの親代わりだった孤児院のシスターに伝え時と同じくらいだ。
一人でイーサイド領に向かっている。・・つもり。
ミールには追従を断った。
私の身を案じて駆けつけてくれたマルコ達、新参の「闇属性」の若者5人もやめさせた。
彼らを巻き込みたくない。
道は東の海岸まで行き、海沿いを南北に走る街道を使う。
幅10メートルでメインの南北街道に比べたら狭いけど、そこを300キロくらい移動する。
早すぎるとジュリア殺しの犯人と疑われかねないから、急ぎ足くらいの早さで進んでいる。
日が傾く前に漁村を見つけた。村長さんに許可を取って、村の端っこで野営することにした。
が・・・。私にはさっぱりだか、恐らくミールやマルコは近くにいるのではないだろうか。
気配ゼロ。
「ミール、マルコ君、ほかのみんなも怒らないから出ておいで」
返事はない。いないならいい。
「いる・・。怒らないでね」
「ふえっ。いたんだね、ミール。それも20メートルくらいの近くに」
「うん、マルコもいるし、最近オルシマに来たばっかのメンバーもみんないる」
「え?」
「気付いてたかもしれないけど、7人いる」
「あ、ああ、そ、そうだよね」
誰1人として感知できず。闇属性の隠蔽力っておかしい。
みんな、私を心配して来てくれた。追い返すことはしない。
「マルコ君、おいで」
アフターサービス。マルコ君の右手をつかんで「なんとなく触診」。問題なし。
熱い視線を感じると、マルコが連れてきたオカザ、ドウブ、ホワロ、リリオ、バトダの5人が私達を凝視していた。
「ほ、本当にユリナ様は闇属性を気になさらないんだ。ミハイル師匠やマルコが言った通りだ・・」
リリオ君のつぶやきに、属性による差別は根深いと感じた。だけど、それだけじゃない気がする。
リリオ君の顔をじっと見てみた。そして気付いて首元を触った。
「な、なんでしょうか」
「あ、この首のところにある、黒い炎のようなあざはいつできたの?」
「これは、そういえばいつでしょうか。教会に引き取られて工作員として訓練していて、気付いたら・・」
これはきっと、魔法の呪縛。
黒いイメージが首から頭につながっている。思考をただれさせているのだろう。
完全な操り人形は工作員として役にたたない。だから軽い呪印を用いるのだ。
支配者に都合がいい因子をすり込んで精神支配をする方法がある。そうアルバさんに教えてもらった。
繰り返し「お前は闇で生きるしかない」と言われ続け、ただの光属性の人間に遠慮する人格を作るそうだ。
ふいに思った。
アリサは3歳で唯一の味方であるべき家族に「お前は劣等人だ」と言われ続けた。
彼女は、どんなに悲しくて苦しかったんだろう。
涙がこぼれていた。
「ユリナ様・・。なぜ泣くのですか。初めてお会いしたのに」
「ごめん、死んだ友達のことを思い出した。リリオ君も苦しかったんだね。今まで頑張ってきたんだよね。おいで、もう大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます」
『超回復』ぱちっ。
「あ、あれ?今まで普通だと思っていたのに、頭がクリアになった。な、なんだか心の重いものが取れたような」
残りの4人にも『超回復』をかけた。
「名もなき神が私に告げる。あなた方は呪縛から解放した。自由に生きさせよと」
飲みたくなってエールを出したら、リリオ君に聞かれた。
「さっきのが、祝福でしょうか」
「違うよ」
「祝福ではないのですか・・」
落胆している。
そうか、彼らの心を持ち直させるためには、「祝福」とやらまでやってワンセットなのか。
「祝福は、オルシマに帰ってからやろうよ!」
「え」
「こんな暗い海岸じゃない。冒険者仲間やらが沢山いて、明るい場所でみんなに祝ってもらうよ。私の中の「名もなき神」が、あなた方5人を歓迎してるわ」
「ほ、本当に?」
「まさか、私達のために」
「マルコ、本当だったんだな」
「うっ、うっ」
「神様じゃなくてごめんね。今夜は私やミールと飲むよ。私達の出会いに乾杯!」
「乾杯」
ちょっと緊張した。
◆◆◆
途中でオークを倒し、小規模集落を見つけたけどスルーした。
前に聞いたサーベルヘッドシャークの干物も手に入れ、平和な旅を続けて私はイーサイド男爵領に入った。
ミール達には先に行ってもらった。
隠密行動が得意な彼らが役目が欲しいと言うので、アリサが慕っていたサマンサさんのことを頼んだ。
普通に暮らしているならそのまま、何かあるなら保護してもらう。
◆◆
数日後。
オルシマでは見なかった、迎撃隊長の188センチ剣士が私を出迎えてくれている。
残り6キロの街道。道を封鎖して60人が集結。剣士45人、魔法使い15人の構成。こちらは1人で160センチの細身の女。気が緩んだのか私達に自慢げに話していた。
私は、もう覚悟している。
『超回復』を手にしたばかりの頃と頭の中身は変わらない。
だけど、同じ「劣等人」、そして虐げられた「闇属性」を守る。そのためにサルバさんに迷惑までかけて「ふーどこーと」まで作る。
彼らの共通点は、親の愛を満足に受けていない。
闇属性のせいで親と引き離された、身寄りがなかった、売られた・・
今回の旅はアリサのため。だげと、彼らとアリサが重なってしまう。
アリサの心の拠り所だった、育ての親ともいえるサマンサさんのことだ。
アリサが1人だけ、また会いたいと言った人。
不遇の子供時代を過ごしたアリサが私にも優しくしてくれた。きっとサマンサさんのお陰だ。
場合によっては、アリサのことを話さないといけないと思う。
そう考えると、気が重い。
モナの死をモナの親代わりだった孤児院のシスターに伝え時と同じくらいだ。
一人でイーサイド領に向かっている。・・つもり。
ミールには追従を断った。
私の身を案じて駆けつけてくれたマルコ達、新参の「闇属性」の若者5人もやめさせた。
彼らを巻き込みたくない。
道は東の海岸まで行き、海沿いを南北に走る街道を使う。
幅10メートルでメインの南北街道に比べたら狭いけど、そこを300キロくらい移動する。
早すぎるとジュリア殺しの犯人と疑われかねないから、急ぎ足くらいの早さで進んでいる。
日が傾く前に漁村を見つけた。村長さんに許可を取って、村の端っこで野営することにした。
が・・・。私にはさっぱりだか、恐らくミールやマルコは近くにいるのではないだろうか。
気配ゼロ。
「ミール、マルコ君、ほかのみんなも怒らないから出ておいで」
返事はない。いないならいい。
「いる・・。怒らないでね」
「ふえっ。いたんだね、ミール。それも20メートルくらいの近くに」
「うん、マルコもいるし、最近オルシマに来たばっかのメンバーもみんないる」
「え?」
「気付いてたかもしれないけど、7人いる」
「あ、ああ、そ、そうだよね」
誰1人として感知できず。闇属性の隠蔽力っておかしい。
みんな、私を心配して来てくれた。追い返すことはしない。
「マルコ君、おいで」
アフターサービス。マルコ君の右手をつかんで「なんとなく触診」。問題なし。
熱い視線を感じると、マルコが連れてきたオカザ、ドウブ、ホワロ、リリオ、バトダの5人が私達を凝視していた。
「ほ、本当にユリナ様は闇属性を気になさらないんだ。ミハイル師匠やマルコが言った通りだ・・」
リリオ君のつぶやきに、属性による差別は根深いと感じた。だけど、それだけじゃない気がする。
リリオ君の顔をじっと見てみた。そして気付いて首元を触った。
「な、なんでしょうか」
「あ、この首のところにある、黒い炎のようなあざはいつできたの?」
「これは、そういえばいつでしょうか。教会に引き取られて工作員として訓練していて、気付いたら・・」
これはきっと、魔法の呪縛。
黒いイメージが首から頭につながっている。思考をただれさせているのだろう。
完全な操り人形は工作員として役にたたない。だから軽い呪印を用いるのだ。
支配者に都合がいい因子をすり込んで精神支配をする方法がある。そうアルバさんに教えてもらった。
繰り返し「お前は闇で生きるしかない」と言われ続け、ただの光属性の人間に遠慮する人格を作るそうだ。
ふいに思った。
アリサは3歳で唯一の味方であるべき家族に「お前は劣等人だ」と言われ続けた。
彼女は、どんなに悲しくて苦しかったんだろう。
涙がこぼれていた。
「ユリナ様・・。なぜ泣くのですか。初めてお会いしたのに」
「ごめん、死んだ友達のことを思い出した。リリオ君も苦しかったんだね。今まで頑張ってきたんだよね。おいで、もう大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます」
『超回復』ぱちっ。
「あ、あれ?今まで普通だと思っていたのに、頭がクリアになった。な、なんだか心の重いものが取れたような」
残りの4人にも『超回復』をかけた。
「名もなき神が私に告げる。あなた方は呪縛から解放した。自由に生きさせよと」
飲みたくなってエールを出したら、リリオ君に聞かれた。
「さっきのが、祝福でしょうか」
「違うよ」
「祝福ではないのですか・・」
落胆している。
そうか、彼らの心を持ち直させるためには、「祝福」とやらまでやってワンセットなのか。
「祝福は、オルシマに帰ってからやろうよ!」
「え」
「こんな暗い海岸じゃない。冒険者仲間やらが沢山いて、明るい場所でみんなに祝ってもらうよ。私の中の「名もなき神」が、あなた方5人を歓迎してるわ」
「ほ、本当に?」
「まさか、私達のために」
「マルコ、本当だったんだな」
「うっ、うっ」
「神様じゃなくてごめんね。今夜は私やミールと飲むよ。私達の出会いに乾杯!」
「乾杯」
ちょっと緊張した。
◆◆◆
途中でオークを倒し、小規模集落を見つけたけどスルーした。
前に聞いたサーベルヘッドシャークの干物も手に入れ、平和な旅を続けて私はイーサイド男爵領に入った。
ミール達には先に行ってもらった。
隠密行動が得意な彼らが役目が欲しいと言うので、アリサが慕っていたサマンサさんのことを頼んだ。
普通に暮らしているならそのまま、何かあるなら保護してもらう。
◆◆
数日後。
オルシマでは見なかった、迎撃隊長の188センチ剣士が私を出迎えてくれている。
残り6キロの街道。道を封鎖して60人が集結。剣士45人、魔法使い15人の構成。こちらは1人で160センチの細身の女。気が緩んだのか私達に自慢げに話していた。
私は、もう覚悟している。
『超回復』を手にしたばかりの頃と頭の中身は変わらない。
だけど、同じ「劣等人」、そして虐げられた「闇属性」を守る。そのためにサルバさんに迷惑までかけて「ふーどこーと」まで作る。
彼らの共通点は、親の愛を満足に受けていない。
闇属性のせいで親と引き離された、身寄りがなかった、売られた・・
今回の旅はアリサのため。だげと、彼らとアリサが重なってしまう。
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