ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる

文字の大きさ
129 / 188

129 物理で死なない私だけど

しおりを挟む
かつて住んでたカナワの街の近く。

マヤという女の子をオークから助けた。

彼女は私より3歳年下の16歳。Dランク冒険者。

そして私が仮メンバーのまま抜けた「暁の光」の一員。

日は暮れたが、まだ9時間くらいカナワの街の門は開かない。

マヤを暗がりで放り出す訳にもいかない。カナワの城門近くで塀にもたれかかって、2人で休んでいる。

「ありがとうございます。あの、お名前は」

「・・ユリナだよ。ここから離れたオルシマの街で冒険者をやってる」

「ユ、ユリナというんですか」

動揺している。私のことをリュウ達から聞いている。

「失礼なことを聞くかもしれませんが、もしかして、10か月くらい前までリュウちゃんと一緒だったという・・」

「私のことだよ。あなたは仮メンバーの私が抜けたあと、「暁の光」に入ったんだね」

私はエールを飲みながら話を聞いていた。

お腹がすいていた彼女にドラゴンパピー肉をふるまって、すごく沢山の話をした。

かつてリュウが好きだった私。
ずっとリュウを好きなマヤ。

話てて、何だか安心した。

「あれ、ミシェルとミールを見たときのように、胸が締め付けられない。むしろマヤの恋を応援したいような・・」

彼女は16歳。

「暁の光」の3人の1歳年下の幼なじみで身体強化レベル2のスキル持ち。

半年前に3人を頼ってカナワに来て冒険者になったそうだ。

いや、リュウを追いかけて来た。

「それで、なんで夜の森から出てきたの。それも1人で」

自己鍛練だそうだ。

育った村で鍛え、オーグ、ダリア、リュウのパーティーに入れてもらった。

しかし、3人とのレベル差が大きかった。

「へえ、何でだろ」
「あの・・すごく強いユリナさんの恩恵でダンジョンで稼げた上に、別れ際に高価な装備や収納指輪をもらって・・」

犯人は、私みたいだ。

才能ある3人は、私が渡した装備を有効活用できた。

魔物を倒しまくって、強くなった。レベルが45~47くらいある。

「あちゃ、私のせいで3人と差がついたのか。ごめん」

「言い方が悪かったです。私の方こそごめんなさい。ユリナさんに会えたら、感謝の気持ちを伝えようと思ってたんです」

「感謝?」

「ユリナさんの恩恵は私も受けているんです。ダリアさんの前の装備を無償で借りて、強い3人にくっついてるだけでお金が稼げてます」

「あ、そうなんだ、良かった」

彼女も、村に残してきた弟妹のため、家に送金できてるという。

それを聞いて安心した。

けど、彼女は3人とのレベル差を埋めるため、今日は個人鍛練。

狩りをしているうちに、日が暮れてしまった。

「無理したらダメ。リュウが心配するよ」

「あっ、あの・・」

マヤは「リュウ」と言ったとき、分かりやすいくらい反応した。

たき火に照らされた頬が、とても綺麗に輝いている。

私に優しくしてくれたリュウ。きっと、子供の頃から優しかったんだろうね。

マヤもきっと大好きなんだろう。

「さっき見て実感しましたけど、ユリナさんはすごく強いんですよね」

「完全にスキル頼みだけどね」

「ダリアさんに聞いたんです。ダンジョンで罠にはまってモンスターハウスに閉じ込められたとき、100匹の魔物を1人で制圧したって」

「ん? それと、今日の無茶な行動が関係あるのかな」

「ユリナさんって、リュウちゃんを守ったんですよね」

あの日の話か・・

「今度は、私があの人を助けたいんです。そのために強くなりたいんです」

やり方は無茶。

そうか、そんでも好きな人のために決意したのか。

「だけど、ユリナさんが帰ってきたから、もう私はお役御免なんですね」

「なんで、そうなるの?」

「だって、ギルドで起こった壮絶な愛のドラマは、カナワの街のみんなが知ってますよ」

「は、誰かが言いふらしてるの?」

「いえ、吟遊詩人です」

「げ、うそ!」

リュウとお別れした日、事が起こった冒険者ギルドに1人の吟遊詩人がいたらしい。

そこで見た物に脚色を加えて活劇調にしてウケてるらしい。

至近距離のファイアランスから命を捨てる覚悟で彼女を守った男。

そして領主に追われることを承知で、隠していたスキルを解放して愛する男を救った女。

「最後は悪人を制圧した、美少女の話です」

「け、経緯は間違ってないけど・・。見ての通りに美少女じゃないよ、私」

「素敵な話だと思ってました」

泣きそう、マヤ。

「ただ最近、その話が実話だって知ったんです」

「あ、そうなんだ」

「それも男の人がリュウちゃんで、女の人が臨時メンバーだった、ユリナ、という人で・・」

ちょい、お待ち、と言いたい。

「そしたら、私なんかかなわないって・・」

「ま、ま、ま、まさか、吟遊詩人の活劇はセリフつきじゃないよね」

「・・ありますよ。ユリナさんが覚悟してスキルを使うとき、リュウちゃんの頬に手を当てて『馬鹿だけど大好きだよ』って」

「ふぎゅぅえぅぇ~~」

私は5分間くらいフリーズしていたと思う。記憶がない。

顔面を魔物に潰されたときより、死に近付いていた。

「恥ずい、あまりにも恥ずかしい! 」

リュウに会いたいけど、恥ずい。

知り合いもいるカナワの街に入れねえ!

マヤと2人して泣いた。違う意味で。

それはともかく・・

マヤがリュウのことを思う気持ちは、分かった。

この子から受ける感じでは、リュウとは仲良しの域。そこから踏み込めていないのだろう。

だけど私に恋愛相談は無理。

「物理的な相談」なら乗れる。

「マヤ、ひとまずはリュウにレベルが追い付けばいいのかな」

「リュウちゃんが好きになってくれるか分からないけど、一緒に並んで戦えるようになりたいです・・」

「私が乗ってやれるのは、物理的な相談だけなんだよね」

「どういうことでしょうか」

「リュウを愛する女が悩んでるのは見逃せない」

強化したいなら、しばらくパーティーを抜けるように言った。

ダンジョンに行く。

カナワの領主、吟遊詩人絡みで、街に入りたくない。

それもある。

「お願いします。リュウちゃんの役に立てるように、強くして下さい!」

ためらうかと思ったが、決断は早かった。

彼女は、私の恩恵を受けた「暁の光」の3人を見ている。

「ユリナ式レベリング塾を始めようかね」

しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...