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180 久々の人助け

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ジランド中級ダンジョンのノルマは達成した。

追加で24階と25階で4日間の狩りをする。

ダン、マイク、ロビンの地元の少年冒険者3人と一緒だ。

彼らのサポートだ。

「こんな武器、借りていいの?」
「総魔鉄の剣なんて初めて持った」
「防具までピカピカだよ」

武器は山のようにある。

アマク伯爵家のアンジュの仕返しに叔父のナントカ男爵のとこに乗り込んだ。

兵士300人の武器を全部もらって、ノエルと半分ずつ持っている。

防具も30セットくらい頂いた。

ミール女王も、こんなときに使うように言っている。

最後は、いちゃもんをつけて、プレゼントする。

ん、言葉の使い方が違う?

「装備が悪いと、狩りの効率も悪くなるからね」

「だよ。ミシェルの足を引っ張られないように、貸すんだよ」

「暗黒剣士ミシェル」、「気功武道家ユリナ」、そう紹介してある。

転移装置からここまで4時間を強行移動。

全員に『超回復』を使った。休憩なしで開始である。

羊2・4メートル1匹、カンガーラ1・7メートル2匹。

最初は私とミシェルで殺る。

ミシェルが、ダークを唱え、羊とカンガーラ1匹の動きを止めた。

さくっ、さくっと、大剣で普通に斬って20秒で終了。

「ミシェルさん、すげえ」

次は私である。カンガーラの武器はキックとパンチ。

「うらあ!」

私は必殺右ストレートを放った。あとから技を出したカンガーラに、左フックを食らった。

よろけたところに、右のキック。見事に宙を舞った。

ごんっ。『超回復』

バク転失敗のような、落下をした。

「さて、本気を出すかね」

ミシェル以外は、この言葉、信じないよね。

「奥さん、大丈夫ですかね」

「問題ないよ。特級ダンジョンの50階でエールを飲める人だから」

今度はカンガーラの方から右ストレートを繰り出した。

私は左の猫パンチで応戦。

「破壊的絶対領域」ゴキッ。

派手な音。ダン達は私の手首が折れたと思っただろう。

逆なんだよね。

カンガーラの右手首が変な方向を向いた。

体勢を崩したカンガーラの首をつかんで「等価交換」

パンチ、キックが至近距離から放たれた。

勝手にやらせた。

首をつかんだまんま、攻撃を食らう。

『超回復』「等価交換」を繰り返して5分で1戦目を終えた。

私のパンチは、一発も当たってない。

カンガーラの肉が、目減りしている。

「やっぱり私、弱いわ。満足したしサポートに回るね」

「ユリナさんの気功もすげえ」
「何したか分からなかった」
「終わってみたら無傷だよ」

このあと、14時間でエンカウント22回。58匹の獲物を得た。

ミシェルが「ダーク」で獲物の視界を塞ぎ、3人がアタッカー。

レベル28前後の敵を倒し続け、3人の動きも良くなってきた。

25階セーフティゾーンで15時間の休憩。

体は「回復気功」で全快の若手3人だったが、未知のゾーンで14時間ノンストップは、精神にきてたようだ。

10時間以上、寝ていた。


彼らが起きた。

妻として、ここが私の見せ場だ。ご飯を出してみた。

といっても、ドラゴンパピーの干し肉と水だ。

相変わらず、料理は下手。
結婚するから、Bランク昇格を達成したら料理の腕を磨きたい。

「こんなもんしかなくて、ごめんね」

「いえ、干し肉だけど、めっちゃ美味しいです」

「良かった。火属性ドラゴンパピーなの」

「え?」

「あれ?口に合わないかな。他の属性肉もあるから遠慮なく言ってね。あ、ミノタウロスの肉もあるから焼こうか?」

ミシェルの奥様として、おもてなしはできただろうか。

「いえ、初めて食べました。十分に美味しすぎます・・」

ぼそっ。
「ミシェルさん、ユリナさんって、すごい人ですよね」

「ああ見えて、討伐履歴は余裕でAランクに達してるんだ」

「普段から、希少な肉をウサギ肉みたいに振る舞ってるんですね」

「それが当たり前で、楽しいみたい」

途中から聞こえていて、ミシェルの言葉に赤面してしまった。


あと2回、10時間ずつの狩り。

131匹の獲物を得た。

地上に戻り獲物の分配をして、少しもめた。

譲り合いだ。

私とミシェルは、平均400キロの羊44匹を主張。等価交換用だから、説明がしにくい。

ヤギ他の87匹、3人に貸した装備を譲っても、重さでは私達の方が上だ。

私には、これ重要。

だけどダン達は、値段で遠慮してる。

二束三文の羊は、でかくても5000ゴールド。44匹で22万ゴールド。

「俺らは譲ってもらう装備まで入れたら、安く見積もっても900万ゴールド。いくらなんでも、もらえません」

人がいいゆえにか・・

困った。

私を「聖女」と呼ぶ子には、神との約束と言って、物や金を強制的に渡している。

面倒に・・、いやいや思案していると、ミシェルが助け船を出してくれた。

「実は、僕と妻のユリナは、スキルに恵まれてないんだ」
「はい?」

「僕は闇魔法適正E」
「私は、魔力ゼロの劣等人よ」

「うそ、お二人とも、あんなに強いのに」

「ユリナが、名もなき神様に力を借りて、僕も恩恵を受けた」

ウインクするミシェル。

「私は、力を貸してくれる神の意思に従ってるの」

オルシマの街で魔力ゼロや、スキルに恵まれていない人が安全に働ける場所を作っている。

そのことを話した。

「3人には、今回の報酬を前払いとして、仕事をして欲しいんだ」

ミシェルの提案は、簡単なものだった。

この街でスキルに恵まれず苦しんでいる人がいたら、オルシマの街を紹介する。

「ふーどこーと」でサルバ、タルモ、サーラ、カミーラの誰かを訪ねるように言ってほしい。

距離がある。

行きたいけど行けない人がいるなら、ギルドカードを通じてユリナ、ミシェルのどちらかに伝言してもらいたい。

それを依頼にした。

「ユリナ、ユリナ・・もしかしてユリナさん、オルシマの聖女って」

「そんな呼ばれ方もするけど、実際はこんなもんよ。酒場に行ってお疲れ会しようよ」


肉は十分に集まった。

また4人で冒険の再開だけど、ミシェルの顔を見てるとドキドキが止まらなくなった。

これは内緒である。
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