名前の読み方が同じだから聖女として間違い召喚されました。勇者活動より弟妹の食費稼ぎを優先します

とみっしぇる

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20 これは単なる『着火』だ

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魔王軍のガオウレベル45、手下レベル40の合計5人と戦おうとしている。

袋小路の洞窟の奥に敵。私が入り口に陣取っている。

今、ガオウが身体強化を自分にかけた。手下4人も同じことをした。

私は結界魔装を纏って戦う。

素のままでも、元から持ってたショボい身体強化をかければ、攻撃力は1325の10パーセント増し。

魔力でもアストリア人では3万人に一人しか到達できないと言われていたMP2000に早くも近づいている。生活魔法ですら凶器なのだ。

接近して生活魔法の『着火』にMPを200も注ぎ込めば、5人まとめて倒せる。

そうすれば装備品や金銭をはぎ取れる。

だけど、その痕跡すら残す気はない。痕跡があれば、必ず仲間が仕返しに来る。

私はチバ、マクハリの街の人間、そして数名の魔王軍の魔族しか知らない。けど、ヤマト世界の人間は気が荒い。

考え方がシビアで排他的。新参者からすれば、こちらがまさにハードモードだ。

思い過ごしでも、これから一緒に旅をするアリアの不安材料を残さない。


「細っこい女一人で俺達を相手できると思ってるのか!」
これがガオウの辞世の句だ。

私は奴が言い終わるのを待って、5人の後ろに回った。


そして5人の首を折ってガオウの手からオーブを奪い、元の位置に戻った。作業時間は合計で0・1秒。

アストリアの視聴者に向けて、サービス精神のかけらもない。

海辺の洞窟の出口に立った。洞窟の内側に右手を差し出して、人指し指にMP300を注ぎ込んで『着火』を唱えた。


視界が白く染まった。


ノーマル状態で試した着火はMP1で2メートルの火柱が上がった。

その基礎能力×MP300×魔装の魔力10倍。プラス神気。

洞窟の内部だけでなく、洞窟がある岬ごと溶けた。

2時間後には歪な形の岩石の塊となって、地形は変わっていた。

証拠は隠滅した。

私の本意が分からない視聴者。魔法の威力に関する意見、勇者7に関する意見が交錯した。

『やっぱ聖女って魔法職だったんだ』
『威力だけは破格だな』
『敵相手とはいえ、やりすぎ~』
『アリアちゃんの近くでは使うなよ』

『やっぱり魔王軍がハジマリの祠にいたな』
『予想通りにハードモードだ』
『アリアちゃんを守ってくれよ、聖女』

基本はアリアの心配ばかりだった。気楽な意見が多くて、ほっとした。

◆◆◆
とにかく視聴者の助言のお陰で、隠れた脅威は取り払えた。

こっそり孤児院に帰り、ベッドにもぐり込んだ。


そして朝、いきなり起こされた。

マクハリ代官のリンカイ男爵から大切な用事だという。

「おっかしいな~。魔族撃退の報償金はアリア、ベン、ハンナにって言って辞退したし、特に用はないはず」

迎えの馬車も来ていて、なんと家令の人がエスコートしてくれる。完全に賓客のお迎えだ。

呼ばれたのは私とアリア。

何かの罠だとしても魔力は1600まで回復したし太刀打ちできる。


挨拶もそこそこに、応接室に通されるとリンカイ男爵が待っていた。

『勇者5』に引っ張られた何かのイベント発生かも知れない。

ドロンを飛ばして配信する。イベントだったら視聴者がヒントをくれる。

それに夕べ、私の単独行動でアリアも子供達も撮影してない、アリアファンに怒られた。


「サラ君、恐らく君に関係する話だけど、この国が混乱しているのだよ」
神妙な顔で男爵が話し出した。

3日前に突然、女神が神託を降ろした。

魔王軍のこと、勇者、勇者に力を授ける使徒のことを教えてくれた。

だけど、そこだけ。

配信のコメント欄
『あ、そうだよ』
『女神の神託はいいけど、ゲームみたく石版を残してないよ』
『やりっぱなし女神』
『www』

原作RPGでは最初の侵攻地がチバエリアだとか、5つのオーブを探すヒント、その他のヒントが石版に刻まれていると教えるそうだ。

けれど今回は恐らく、女神の行き当たりばったり。

『魔王軍、勇者、銀髪使徒、5つのオーブ』そのキーワードだけしかない。

アストリア視聴者の助けがなければ、私だって1個目のオーブすら見つけられなかった。

だからヤマトの人間は勝手に解釈した。勇者を名乗る、ただの力自慢が次々と現れている。

さらに有力貴族も認定勇者を作り、この国のトップに立とうとしている。

ジペングは有力貴族が収める47エリアに分かれている。

共和制を敷いて『エドエリア』を中心に国として成り立っていても、お互いに仲が悪い。

だから多くの有力貴族は、今回の神託を好機とみた。

ジペングの大貴族が各々で勇者候補を立てた。その候補にオーブを見つけさせて、他の貴族を出し抜こうとしている。

そのオーブの大きさも不明。勇者はひとりだけなのかとか、1個ずつオーブから力をもらった勇者が5人出現するとか、臆測が飛び交っているそうだ。

偽勇者は『勇者と5つのオーブ』にも出てくるが3人。自称勇者の乱立など、基本設定になかった展開だ。

◇聖女サラチャンネル◇
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