最強魔剣士が今更だけど魔法学校に通います

うずら

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2 自己紹介

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 王立ソフィア魔導学院――この世界グノーシアの創造神ソフィア・アカモートの名を冠するその施設は、創立1000年にも及ぶ歴史的な建造物でもある。
 それほどの年数が経って尚、建物の劣化は殆どなく、創立当時の姿を維持したまま。
 
 そんな学院の門前に立つ一人の男子学生の姿があった。
 その学生の興味はすでに、当初の目的であった楽しい学園ライフではなく、目の前の建造物の魔術的構造に向けられていた。

「なるほどな、建物の素材自体に微小な魔導物質を練り込んで浄化魔法と再生魔法を付与しているのか……よほど練度の高い錬金術師が建設に関わっていたのだな」

 校門に向かってブツブツと独り言を言う少年。傍から見れば危ない少年である。
 そんな危ない少年の元に、学院の玄関方面から見た目10歳前後の少女が駆け寄ってきた。

 この学院の生徒か? それにしては制服を着ていないな――そんな疑問を抱いた少年だった。

「あ、あの! 転入生のアルス・マグナ君ですよね?」

「ああ、そうだが? 君はこの学院の生徒か? 見たところ年少部の生徒のようだが――」

「ち、違います! こう見えても私は高等部の教師です! あなたの担任の! 因みに私は29歳のれっきとした大人です!」

 聞いてもないのに年齢を言う彼女の名はメリア・ロンド、その幼き容姿から、彼女の年齢を知った者は皆エルフ、もしくはハーフエルフなのかと勘繰るが、両親は共に人間、何より耳が尖っていない。

「そ、そうか、それはすまなかった……」

 必死に抗議する彼女の姿を見て、まるで威嚇するタイニーアリクイのようだと思いながらも素直に謝罪するアルス。

「わかればいいんですわかれば! じゃあもうすぐホームルームが始まるので急ぎましょう!」

 自分より背の低いメリア先生に校内を案内されながら、もしかしたら若返りの秘術でも使っているのではないだろうかと考察するアルスだった。

◇◇◇

 2年A組と書かれた表札を見上げながら、アルスは気を引き締めていた。
 学園生活と言う未知の領域に挑まんとする少年は、初めて戦場に出たばかりの頃を思い出していた。

「今日からここが、俺の戦場か」

 因みにアルスの今の髪型は、普段のオールバックではなく、前髪だけを垂らして目元を覆い隠している状態だ。
 アウグスト王子から「お前はまずその目つきを直せ、お前の眼光は鋭すぎるから一般人が引くんだよ。そんなのでまともな学園生活が送れると思ってるのか?」と指摘されたからだ。

 アルスの目つきが悪いのは長年の戦場生活で身に着いた習性のようなものなので、そうすぐに矯正できるようなものではないが、こうやって前髪で目元を隠すことでいくらかごまかしがきく。

 アルス本人は、これはこれでミステリアスな印象を醸し出せてるんじゃないかとまんざらでもない様子。

 所謂イメチェンである。

 しかし、どちらかと言うとその華奢な体格から、ミステリアスと言うよりはインドア派の陰キャラにしか見えなかった。


「今日は皆さんに新しいお友達を紹介します。アルスくん! さあ、入ってきてください!」

「了解した」

 先に入室していたメリア先生の呼び声を合図に、アルスは影踏シャドウ・ステップの魔法を発動、音もなく教室に侵入した。

 影踏シャドウ・ステップ――消音スニーク不可視インビジブル、そして敏捷度上昇アジリティ・アップの効果を併せ持った魔法。
 シーフの最上位職の暗殺者アサシンが主に使用する極めて隠密性の高い高等幻術魔法だが、当然の如く彼も習得していた。

「ひゃいっ!? アルスくんいつの間に隣に!?」

 突如何の前触れもなく一瞬で真横に現れた転入生の姿に、メリア先生は素っ頓狂な声を上げる。
 驚く姿もやはり小動物を連想させる。

「す、すまん。つい、いつもの癖で……室内への侵入時は死角からの刺客に狙われやすいからな」

「死角からの刺客って駄洒落ですか!? ……と、とにかく、クラスの皆に簡単な自己紹介をしてくださいねアルスくん」

 少し戸惑いながらも、自己紹介を促すメリア先生。

「あ、ああ……俺の名はアルス・マグナ。職業は魔剣士だ。剣と魔法の腕には少し自信がある。よろしく頼む」

 手短に自己紹介を終え、クラスメイトの反応を見ようと教室を見渡すアルス。

「あの貧相な体で魔剣士だって? 少しはましな嘘つけよ」「ねえ、あの転入生なんか喋り方偉そうじゃない? ちょっとむかつくんだけど?」「前髪で目を隠して、あれかっこいいと思ってるのかしら? なんかキモイ」「陰キャの癖に強がってんじゃねーぞ」

 クラスメイト達の反応はあまり芳しくは無い、しかしアルスはあまり動じていない。

「ふむ……まあまあの反応だな。悪くない」

 落ち着いた様子でそう呟くアルス。

 戦場で数々の荒くれ者達とパーティーを共にしたアルズにとって、この程度はむしろ生ぬるい歓迎だ。
 しかし女子になんかキモイと言われたのは少しショックだった。

「皆静かにしなさいよ! アルスくんが困ってるでしょ!?」

 そう言って立ち上がったのは、銀髪ツインテールの女子生徒。おそらくクラスのまとめ役的ポジションなのだろう。
 彼女の一言で大半のクラスメイトは途端に静かになる。
 一部の生徒を除いて。

「あらぁ、ノエルさんはお優しいですわね。それとも、もしかして魔剣士のアルスさんに一目惚れしてしまったのかしら?」

 銀髪ツインテ女子を茶化したのは、最後列中央の席に優雅に座る女子生徒。
 金髪の縦ロールを腰まで伸ばし、如何にもお嬢様と言った感じの女子生徒だった。
 その周囲の取り巻きらしき生徒たちは、ニヤニヤと笑っている。

「そ、そんな訳ないでしょ! 私は委員長として皆を注意してるのよ!」

 迷惑そうな顔をしながら、必死に否定する銀髪ツインテ委員長。

 そんな委員長の方を向き、一礼するアルス。
 
「心遣い感謝する。だが心配無用だ――」

 アルスは徐に懐からミスリルサーミット製の双剣を取り出して構え、声を一段と低くしてクラスメイト全員に告げる。

「――俺に文句があるやつは今すぐかかってこい……死なない程度に相手をしてやる!」

 ここぞとばかりに双剣を十字に構えるアルス。
 戦場では舐められたら終りだ。言葉で理解り合えなくとも、剣と剣を交えることで、信頼と友情を勝ち取ることができる――と言うのが彼の持論であった。
 だがここは戦場でも軍学校でもない、普通の一般人の通う学校だ。

 当然の如く、クラスメイト達はドン引きだった。

「な、何なのよもう、意味わかんない……」

 委員長はどこか遠くを見つめるような目をして額に手を当てていた。

 その場にいる全員がドン引きしてる中、それでもメリア先生はすぐさま我に返り、急いでアルスを止めに入る。

「駄目ー! 校内での武器の使用は厳禁です! 取りあえずその剣は放課後まで没収します!」

「……む? そうだったのか、すまん、しかしこの剣は俺の相棒で――」

「規則は規則です! はい没収!」

 規則ならば仕方ない。

 アルスは大人しく双剣を没収されるのであった。
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