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話し合いの行方
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シャルロット達と楽しい3日間を過ごし、私は家へと帰って来た。
やれやれと馬車を降りた所でお父様に捕まり、また馬車に押し込められる。
私は乱れた髪を手櫛で直しながら不機嫌に言った。
「お父様、説明を。」
お父様は色気たっぷりの顔で微笑んだ。向かい合った馬車の中で、優雅に足を組み、黒髪を撫で付ける。
「今から一緒に王城へ行こう。」
あぁ、ヘンリーか。お父様の一言で全てを悟る。
リサに言われて、私はヘンリーに手紙を書いていた。
要件はもちろんこの前の一件だ。
もう彼は私の正体に気付いている。
会って話しがしたいとそう書いた。
「それでお父様がなぜ一緒に?」
私はヘンリーと一対一で話し合うつもりだった。
「それが、陛下がしゃしゃり出てきてね。ヘンリー殿下とお前の話し合いに自分も参加すると言って聞かないらしく。向こうの親が出てくるのに、お前1人で行かすわけにはいかないだろ?」
「はぁ。」
私は陛下が出しゃばった時点でもうすでに面倒なのに、さらに自分の父親が乗り込むとなると、面倒が増えただけな気がしてならない。
「チャールズのクソが。任務など受けるのではなかったわ。」
お父様が小さな声で吐き捨てる。
、、お父様は不敬罪という言葉を知っているのだろうか?
馬車に乗った瞬間に感じた不安は膨れ上がって、もう恐怖でしかない。
帰りたい。
「心配するな。父様が守るよ。」
お父様は鈍く光った瞳で微笑んだ。
私はあなたの事が1番心配なのです。と言いたかったが、今お父様の機嫌を損ねるのは得策ではないと思い、言いかけて飲み込む。
王城までは近い。家からだと学園とほとんど距離が変わらないので、10分ほどで着いてしまう。
私達は馬車を降り、客人用の扉から堂々と入った。
とても美しいエントランスに息を飲む。上を見上げると、巨大なシャンデリアが美しく輝いていた。私が歩くたびに角度が変わり、キラキラと七色に輝いて見える。
「上ばかり見ていると転けるぞ。」
お父様が苦笑いしている。
2人の前に、従者が現れ頭を下げた。
「フィリップ・バレンティア様、クリス・ランカスター様、陛下がお待ちでございます。こちらへどうぞ。」
初老の彼はとても美しい所作で、私達を案内してくれる。
キョロキョロしてはいけないと思っていても、飾っている絵画、花瓶、花、柱に至るまで美しいこの城は、どこを見ても飽きる事がない。
私はお父様に手を取られた。
「本当にもう、手のかかる子だ。」
「ちょっ、ちょっとバレンティア様、ここでその様な事は!」
私は焦る。先程の従者は私の事をランカスターの呼び名で呼んだ。ここでは他人でいなければ。
「良いの良いの。」
お父様は笑った。
もう嫌だ。帰りたい。
私は既に胃が痛い。
従者はこちらですと言って扉の前に立てった。ノックをして参りましたと大きな声を出す。
振り返り私達に告げた。
「扉の前に護衛の者は立てりますが、中は陛下と殿下だけにございます。それでは私は失礼させて頂きます。」
私達はお礼を言うと中に入る。
この前の謁見の間とは違い、ここは執務室のようだ。
部屋も狭いしあまり色気のない部屋だ。
執務用の机に、向かい合ったソファーの間に机、家具はそれだけであまり調度品も無い。
ソファーには既に陛下とヘンリーが座っていた。
私達が入ると2人は立ち上がる。
「今日はわざわざ来てくれてありがとう。」
陛下がお父様に丁寧に言ったのだが、お父様はもうバトルモードに入った様だ。
「わざわざと思うなら呼び出したりするな。大体お前がしゃしゃり出なければ、子供達だけで解決するはずだったのだぞ。」
ヘンリーはお父様のあまりの物言いにポカンと口を開けている。
「ハッハッハッ。まぁそう言うな。元々はと言えば私のワガママから始まった話しだ。しかも、私が事実をバラしてしまったのに、この場にいないのは余りにも失礼だろう?」
お父様は鼻で笑う。
「フンッ。親バカ過ぎて訳の分からん依頼はしてくるわ、お前が言い出した事にも関わらず、自分でバラすわ。そんな奴がこの場にいて何の役に立つのだ!」
私はたまらず口を挟んだ。
「お父様!!不敬罪ですよ!!口が悪過ぎます!!」
お父様は私をジロリと睨む。
「お前は優し過ぎるんだ。一緒に怒っても良いくらいなのに。まぁ良い、話しが進まんしな。」
お父様はヘンリーを見る。
「ヘンリー殿下はどこまで話しをお聞きですか?」
「クリス、、いえ、クリスティーナ嬢が私を守るために男装して私を護衛するという任務を、父上があなたに頼んだと。」
「それを聞いてどう思いましたか?これから殿下はクリスティーナにどうして欲しいですか?」
ヘンリーは膝の上に置いていた拳を強く握った。
「、、父上がクリスティーナ嬢にこの様な依頼をしていなければ、彼女は普通に学園へ通っていたのかと思うと、とても申し訳なく思います。彼女が男装していなければ、今回の火竜討伐にも選ばれず危険な思いもしなかっただろうに。」
ヘンリーの顔が歪む。
私は思った。
任務がなければ学園へは通わなかっただろうし、火竜討伐はお父様が許可を出したのだ。任務とは関係ない。
彼が気に病む必要など無いと。
「、、クリスティーナ嬢にはクリスではなくクリスティーナとして学園へ通って欲しい。私の護衛も必要なら学生では無く、騎士に近くで守って貰います。」
彼は私をクリスティーナ嬢と言う。
友達になれたと思った。でも、やはり嘘をついて関係を築いても、その関係は嘘でしかないのか。
「殿下、クリスティーナは殿下を守る任務を受けなければ学園へは行かなかったでしょう。火竜討伐も私が行かせたのだ。あなたには関係ない。それに、彼女は頼まれたからではなく、彼女の誇りを持ってあなたを守っていた。それは伝わっていますか?」
お父様は殿下を見据えた。
殿下は強く頷く。
「それが分かっているなら、問題はありません。殿下、クリスティーナは任務を解かれれば学園を去ります。私が言ってもこの頑固娘は言う事を聞かないのです。」
お父様はため息を吐いた。
「あとは2人で話しなさい。ほら、チャールズ、行くぞ!!」
お父様は陛下の首根っこを掴んで部屋から連れ出した。
お父様それはさすがにあんまりな扱いだ。
部屋に2人が残される。
沈黙に耐えかねて、私から切り出す。
「ヘンリー、私はあなたを騙していました。もう私の顔など見たくありませんか?」
ヘンリーは傷付いた顔になって、顔を振った。
私はそれを見て少しホッとした。
「私が、、いえ、僕が学園でクリスとして過ごした時間は僕にとって宝物の様な時間でした。外の世界はこんなに輝いていて、友達といるとこんなにも心が弾んで、好きな人といるとこんなにも心が熱くなるのかと。、、全てがキラキラと輝いていて、それがずっと続くと勘違いしてしまいました。」
自然と瞳から涙が溢れた。
「あなたを守らせて頂いた事誇りに思います。ヘンリーと呼ばせてくれて、友達になれた事嬉しく思います、、。
私が最後にお礼を言おうとすると、ヘンリーは慌てた。
「そんな最後の別れの様に言うのはやめろ!クリスティーナになっても、友達でいれば良いではないか!今度は任務でなく私の友として、皆の友として、学園へ通えば良いではないか!!」
私は嗚咽した。
この期に及んで、イサキオスの顔がチラつく。
彼に真実を話す事に恐怖を覚える。
私の顔を見てヘンリーが気付く。
「クリスティーナ!イサキオスはそんな事で揺らぐ男ではない。」
ヘンリーは私の肩を両手でしっかり持った。
「お前はあいつの何を見てきたんだ!?お前が好きになった男は、そんな事でお前を嫌いになるような男なのか!?」
そこまで言い切ってヘンリーは優しい目になる。私の頭をポンポンと撫でた。
「分かった。切り出すタイミングは君に任せる。それまではしばらくクリスとして、私の護衛を頼めるか?」
だからもう泣くな。彼はそう言った。
私はぐしゃぐしゃの泣き顔で、
「あ、ありがとう、、ございます。」
そう言うのが精一杯だった。
扉を出るとお父様が待っていてくれた。頭を撫でられ手を繋がれる。
あぁ、お父様が居て良かった。
私は帰る間ずっと泣いていた。
やれやれと馬車を降りた所でお父様に捕まり、また馬車に押し込められる。
私は乱れた髪を手櫛で直しながら不機嫌に言った。
「お父様、説明を。」
お父様は色気たっぷりの顔で微笑んだ。向かい合った馬車の中で、優雅に足を組み、黒髪を撫で付ける。
「今から一緒に王城へ行こう。」
あぁ、ヘンリーか。お父様の一言で全てを悟る。
リサに言われて、私はヘンリーに手紙を書いていた。
要件はもちろんこの前の一件だ。
もう彼は私の正体に気付いている。
会って話しがしたいとそう書いた。
「それでお父様がなぜ一緒に?」
私はヘンリーと一対一で話し合うつもりだった。
「それが、陛下がしゃしゃり出てきてね。ヘンリー殿下とお前の話し合いに自分も参加すると言って聞かないらしく。向こうの親が出てくるのに、お前1人で行かすわけにはいかないだろ?」
「はぁ。」
私は陛下が出しゃばった時点でもうすでに面倒なのに、さらに自分の父親が乗り込むとなると、面倒が増えただけな気がしてならない。
「チャールズのクソが。任務など受けるのではなかったわ。」
お父様が小さな声で吐き捨てる。
、、お父様は不敬罪という言葉を知っているのだろうか?
馬車に乗った瞬間に感じた不安は膨れ上がって、もう恐怖でしかない。
帰りたい。
「心配するな。父様が守るよ。」
お父様は鈍く光った瞳で微笑んだ。
私はあなたの事が1番心配なのです。と言いたかったが、今お父様の機嫌を損ねるのは得策ではないと思い、言いかけて飲み込む。
王城までは近い。家からだと学園とほとんど距離が変わらないので、10分ほどで着いてしまう。
私達は馬車を降り、客人用の扉から堂々と入った。
とても美しいエントランスに息を飲む。上を見上げると、巨大なシャンデリアが美しく輝いていた。私が歩くたびに角度が変わり、キラキラと七色に輝いて見える。
「上ばかり見ていると転けるぞ。」
お父様が苦笑いしている。
2人の前に、従者が現れ頭を下げた。
「フィリップ・バレンティア様、クリス・ランカスター様、陛下がお待ちでございます。こちらへどうぞ。」
初老の彼はとても美しい所作で、私達を案内してくれる。
キョロキョロしてはいけないと思っていても、飾っている絵画、花瓶、花、柱に至るまで美しいこの城は、どこを見ても飽きる事がない。
私はお父様に手を取られた。
「本当にもう、手のかかる子だ。」
「ちょっ、ちょっとバレンティア様、ここでその様な事は!」
私は焦る。先程の従者は私の事をランカスターの呼び名で呼んだ。ここでは他人でいなければ。
「良いの良いの。」
お父様は笑った。
もう嫌だ。帰りたい。
私は既に胃が痛い。
従者はこちらですと言って扉の前に立てった。ノックをして参りましたと大きな声を出す。
振り返り私達に告げた。
「扉の前に護衛の者は立てりますが、中は陛下と殿下だけにございます。それでは私は失礼させて頂きます。」
私達はお礼を言うと中に入る。
この前の謁見の間とは違い、ここは執務室のようだ。
部屋も狭いしあまり色気のない部屋だ。
執務用の机に、向かい合ったソファーの間に机、家具はそれだけであまり調度品も無い。
ソファーには既に陛下とヘンリーが座っていた。
私達が入ると2人は立ち上がる。
「今日はわざわざ来てくれてありがとう。」
陛下がお父様に丁寧に言ったのだが、お父様はもうバトルモードに入った様だ。
「わざわざと思うなら呼び出したりするな。大体お前がしゃしゃり出なければ、子供達だけで解決するはずだったのだぞ。」
ヘンリーはお父様のあまりの物言いにポカンと口を開けている。
「ハッハッハッ。まぁそう言うな。元々はと言えば私のワガママから始まった話しだ。しかも、私が事実をバラしてしまったのに、この場にいないのは余りにも失礼だろう?」
お父様は鼻で笑う。
「フンッ。親バカ過ぎて訳の分からん依頼はしてくるわ、お前が言い出した事にも関わらず、自分でバラすわ。そんな奴がこの場にいて何の役に立つのだ!」
私はたまらず口を挟んだ。
「お父様!!不敬罪ですよ!!口が悪過ぎます!!」
お父様は私をジロリと睨む。
「お前は優し過ぎるんだ。一緒に怒っても良いくらいなのに。まぁ良い、話しが進まんしな。」
お父様はヘンリーを見る。
「ヘンリー殿下はどこまで話しをお聞きですか?」
「クリス、、いえ、クリスティーナ嬢が私を守るために男装して私を護衛するという任務を、父上があなたに頼んだと。」
「それを聞いてどう思いましたか?これから殿下はクリスティーナにどうして欲しいですか?」
ヘンリーは膝の上に置いていた拳を強く握った。
「、、父上がクリスティーナ嬢にこの様な依頼をしていなければ、彼女は普通に学園へ通っていたのかと思うと、とても申し訳なく思います。彼女が男装していなければ、今回の火竜討伐にも選ばれず危険な思いもしなかっただろうに。」
ヘンリーの顔が歪む。
私は思った。
任務がなければ学園へは通わなかっただろうし、火竜討伐はお父様が許可を出したのだ。任務とは関係ない。
彼が気に病む必要など無いと。
「、、クリスティーナ嬢にはクリスではなくクリスティーナとして学園へ通って欲しい。私の護衛も必要なら学生では無く、騎士に近くで守って貰います。」
彼は私をクリスティーナ嬢と言う。
友達になれたと思った。でも、やはり嘘をついて関係を築いても、その関係は嘘でしかないのか。
「殿下、クリスティーナは殿下を守る任務を受けなければ学園へは行かなかったでしょう。火竜討伐も私が行かせたのだ。あなたには関係ない。それに、彼女は頼まれたからではなく、彼女の誇りを持ってあなたを守っていた。それは伝わっていますか?」
お父様は殿下を見据えた。
殿下は強く頷く。
「それが分かっているなら、問題はありません。殿下、クリスティーナは任務を解かれれば学園を去ります。私が言ってもこの頑固娘は言う事を聞かないのです。」
お父様はため息を吐いた。
「あとは2人で話しなさい。ほら、チャールズ、行くぞ!!」
お父様は陛下の首根っこを掴んで部屋から連れ出した。
お父様それはさすがにあんまりな扱いだ。
部屋に2人が残される。
沈黙に耐えかねて、私から切り出す。
「ヘンリー、私はあなたを騙していました。もう私の顔など見たくありませんか?」
ヘンリーは傷付いた顔になって、顔を振った。
私はそれを見て少しホッとした。
「私が、、いえ、僕が学園でクリスとして過ごした時間は僕にとって宝物の様な時間でした。外の世界はこんなに輝いていて、友達といるとこんなにも心が弾んで、好きな人といるとこんなにも心が熱くなるのかと。、、全てがキラキラと輝いていて、それがずっと続くと勘違いしてしまいました。」
自然と瞳から涙が溢れた。
「あなたを守らせて頂いた事誇りに思います。ヘンリーと呼ばせてくれて、友達になれた事嬉しく思います、、。
私が最後にお礼を言おうとすると、ヘンリーは慌てた。
「そんな最後の別れの様に言うのはやめろ!クリスティーナになっても、友達でいれば良いではないか!今度は任務でなく私の友として、皆の友として、学園へ通えば良いではないか!!」
私は嗚咽した。
この期に及んで、イサキオスの顔がチラつく。
彼に真実を話す事に恐怖を覚える。
私の顔を見てヘンリーが気付く。
「クリスティーナ!イサキオスはそんな事で揺らぐ男ではない。」
ヘンリーは私の肩を両手でしっかり持った。
「お前はあいつの何を見てきたんだ!?お前が好きになった男は、そんな事でお前を嫌いになるような男なのか!?」
そこまで言い切ってヘンリーは優しい目になる。私の頭をポンポンと撫でた。
「分かった。切り出すタイミングは君に任せる。それまではしばらくクリスとして、私の護衛を頼めるか?」
だからもう泣くな。彼はそう言った。
私はぐしゃぐしゃの泣き顔で、
「あ、ありがとう、、ございます。」
そう言うのが精一杯だった。
扉を出るとお父様が待っていてくれた。頭を撫でられ手を繋がれる。
あぁ、お父様が居て良かった。
私は帰る間ずっと泣いていた。
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