帝国の曙

Admiral-56

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第一話 秘密会合

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 秋津洲共和国。それは世界の極東に位置する、幾つかの島から成る列島国である。



 かつては別の名前だったそうだが、共和国国民にそれを知るものは殆どいない。第三次世界大戦以前の歴史が失われてしまった

のだから、仕方が無いことだ。



 昔からもの作りの国として栄え、軍事力も防衛の為の最低限しか持たず、世界の何処かで戦争が起きても不干渉を決め込んでいた。



 しかし、今となっては戦争の“当事者”だ。



 共和国政府は自ら墓穴を堀り、結果共和国を戦禍に巻き込ませてしまったのである。



 あっという間に欧州を飲み込み、欧州連邦とも言える状態になった普国は次に東に侵攻し始めた。北ではソビエトが善戦していたものの、その他の戦場では普国の一人勝ち状態であった。



 このままでは普国が亜細亜に侵攻してくるのも時間の問題だと危機感を感じた共和国政府は普国に特使を送り、そして同盟を締結した。



 勝ち馬に乗ったのだ。



 それによって案の定共和国の世界連盟における立場が危うくなり、最終的に共和国は世界連盟から脱退した。この時点で、共和国は普国と共に世界の敵になってしまった。



 だが、決して共和国政府だけを責めるべきではないだろう。


 共和国国内の世論もまた、政府のこの決断を支持したのだから。



 共和国は世界連盟の中でも発言力が無く、発言力のある米国やブリタニア王国(英国)の言いなりになっていた。


 不平等条約や米英に都合の良い法律を押し付けられ、国民達の、世界連盟とそれに言いなりの政府に対する不満は限界にまで達していた。



 だから初めて世界連盟に反旗を翻し、対米英強硬策を打ち出した政府を国民達は支持した。



 そして、そこに文句を付けて来た米国は完全な敵だと捉えたのだ。



 この時、世界中で白人種による有色人種への迫害が酷くなっており、米国では秋津洲人も迫害の対象であったこともこの国内世論に拍車をかけた。











 切迫している時局の中、とある料亭で秘密の会合が開かれていた。



 集まっているのは老若男女20名弱。


 私服で素性は隠しているものの、どれも政府や軍の高官という面々である。 



 と、一人が切り出した。



「…さて、皆揃ったようだから始めようか」



 最初に口を開いたのは、白髪混じりの中年男性──山本吾朗やまもとごろう


 連合艦隊司令長官を務める海軍大将である。



「閣下…やはりこのままでは開戦となりますか」



 部下の問いに山本は目を瞑り、ゆっくりと頷いた。



「なるだろうな。最近国内世論までもが米英討つべしと騒いでおる」



「それは我が陸軍部内ではなおさらだな」



 腕を組んだまま難しい顔でそう言い放ったのは、陸軍中将東条秀雄とうじょうひでおである。



「シナとソビエトに侵攻中だからな…ハル・ノートには納得が行かないのだろう」



「しかし、シナ戦線の泥沼化によって国力が低下してしまうこのではないかという意見もありますが?」



 そう問うのは、肩まで伸びたロングヘアーの若い女性。海軍少将の高野五十鈴たかのいすずだ。



「ああ。だからこそ早く縮小すべきなのだ」



「空軍部内でも同じことが起きている」



 鋭い目付きの女性──空軍元帥武田扇たけだおうぎも拳を握りながら呟いた。



「我が空軍は陸海軍に比べ発言力が弱い。そのせいもあり、陸海軍や、世論の影響を諸に受けてしまっている」



「そうか…」



 室内に、重い空気が漂う。



「……やはり、決起するしかあるまい」



「「!!」」



 山本の発した一言に、その場の全員が反応する。



「もはや体制は止めようが無い。ならば、ここでクーデターを起こし首脳陣全てを一度排除し、“我々”でこの大戦を戦うしかあるまい」



 前々から計画されていたことではあった。しかし、実際に行動に移すとなるとそれ相応の勇気が必要である。



「海軍は既に各要人達への根回しをしてあります。また、制圧には海軍陸戦隊の出撃も可能です」




「陸軍も準備は完了している。首都を制圧するには十分な勢力を用意している」



「空軍は陸上部隊が無いから制圧には参加できないが、回転翼機を出して警戒に当たらせよう」



 陸海空、それぞれの準備は万端。



 ここに集まっている各員が覚悟を決めていることも、その表情から分かる。



「…よし。皆、やろう。この国をよりよい方向へと進ませるために」



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