2 / 12
第一話 秘密会合
しおりを挟む秋津洲共和国。それは世界の極東に位置する、幾つかの島から成る列島国である。
かつては別の名前だったそうだが、共和国国民にそれを知るものは殆どいない。第三次世界大戦以前の歴史が失われてしまった
のだから、仕方が無いことだ。
昔からもの作りの国として栄え、軍事力も防衛の為の最低限しか持たず、世界の何処かで戦争が起きても不干渉を決め込んでいた。
しかし、今となっては戦争の“当事者”だ。
共和国政府は自ら墓穴を堀り、結果共和国を戦禍に巻き込ませてしまったのである。
あっという間に欧州を飲み込み、欧州連邦とも言える状態になった普国は次に東に侵攻し始めた。北ではソビエトが善戦していたものの、その他の戦場では普国の一人勝ち状態であった。
このままでは普国が亜細亜に侵攻してくるのも時間の問題だと危機感を感じた共和国政府は普国に特使を送り、そして同盟を締結した。
勝ち馬に乗ったのだ。
それによって案の定共和国の世界連盟における立場が危うくなり、最終的に共和国は世界連盟から脱退した。この時点で、共和国は普国と共に世界の敵になってしまった。
だが、決して共和国政府だけを責めるべきではないだろう。
共和国国内の世論もまた、政府のこの決断を支持したのだから。
共和国は世界連盟の中でも発言力が無く、発言力のある米国やブリタニア王国(英国)の言いなりになっていた。
不平等条約や米英に都合の良い法律を押し付けられ、国民達の、世界連盟とそれに言いなりの政府に対する不満は限界にまで達していた。
だから初めて世界連盟に反旗を翻し、対米英強硬策を打ち出した政府を国民達は支持した。
そして、そこに文句を付けて来た米国は完全な敵だと捉えたのだ。
この時、世界中で白人種による有色人種への迫害が酷くなっており、米国では秋津洲人も迫害の対象であったこともこの国内世論に拍車をかけた。
切迫している時局の中、とある料亭で秘密の会合が開かれていた。
集まっているのは老若男女20名弱。
私服で素性は隠しているものの、どれも政府や軍の高官という面々である。
と、一人が切り出した。
「…さて、皆揃ったようだから始めようか」
最初に口を開いたのは、白髪混じりの中年男性──山本吾朗。
連合艦隊司令長官を務める海軍大将である。
「閣下…やはりこのままでは開戦となりますか」
部下の問いに山本は目を瞑り、ゆっくりと頷いた。
「なるだろうな。最近国内世論までもが米英討つべしと騒いでおる」
「それは我が陸軍部内ではなおさらだな」
腕を組んだまま難しい顔でそう言い放ったのは、陸軍中将東条秀雄である。
「シナとソビエトに侵攻中だからな…ハル・ノートには納得が行かないのだろう」
「しかし、シナ戦線の泥沼化によって国力が低下してしまうこのではないかという意見もありますが?」
そう問うのは、肩まで伸びたロングヘアーの若い女性。海軍少将の高野五十鈴だ。
「ああ。だからこそ早く縮小すべきなのだ」
「空軍部内でも同じことが起きている」
鋭い目付きの女性──空軍元帥武田扇も拳を握りながら呟いた。
「我が空軍は陸海軍に比べ発言力が弱い。そのせいもあり、陸海軍や、世論の影響を諸に受けてしまっている」
「そうか…」
室内に、重い空気が漂う。
「……やはり、決起するしかあるまい」
「「!!」」
山本の発した一言に、その場の全員が反応する。
「もはや体制は止めようが無い。ならば、ここでクーデターを起こし首脳陣全てを一度排除し、“我々”でこの大戦を戦うしかあるまい」
前々から計画されていたことではあった。しかし、実際に行動に移すとなるとそれ相応の勇気が必要である。
「海軍は既に各要人達への根回しをしてあります。また、制圧には海軍陸戦隊の出撃も可能です」
「陸軍も準備は完了している。首都を制圧するには十分な勢力を用意している」
「空軍は陸上部隊が無いから制圧には参加できないが、回転翼機を出して警戒に当たらせよう」
陸海空、それぞれの準備は万端。
ここに集まっている各員が覚悟を決めていることも、その表情から分かる。
「…よし。皆、やろう。この国をよりよい方向へと進ませるために」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
“いつまでも一緒”の鎖、貴方にお返しいたします
柊
ファンタジー
男爵令嬢エリナ・ブランシュは、幼馴染であるマルグリット・シャンテリィの引き立て役だった。
マルグリットに婚約が決まり開放されると思ったのも束の間、彼女は婚約者であるティオ・ソルベに、家へ迎え入れてくれないかというお願いをする。
それをティオに承諾されたエリナは、冷酷な手段をとることを決意し……。
※複数のサイトに投稿しております。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
竜華族の愛に囚われて
澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
近代化が進む中、竜華族が竜結界を築き魑魅魍魎から守る世界。
五芒星の中心に朝廷を据え、木竜、火竜、土竜、金竜、水竜という五柱が結界を維持し続けている。
これらの竜を世話する役割を担う一族が竜華族である。
赤沼泉美は、異能を持たない竜華族であるため、赤沼伯爵家で虐げられ、女中以下の生活を送っていた。
新月の夜、異能の暴走で苦しむ姉、百合を助けるため、母、雅代の命令で月光草を求めて竜尾山に入ったが、魔魅に襲われ絶体絶命。しかし、火宮公爵子息の臣哉に救われた。
そんな泉美が気になる臣哉は、彼女の出自について調べ始めるのだが――。
※某サイトの短編コン用に書いたやつ。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる