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ハル、再び
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### ハル、再び
八月の下旬。
蝉の声が途切れることなく響く午後、カズのマンションのドアが開いた。
「よっ! 実家での文化祭作業や創作活動は終わらせて来たぜ!」
玄関から現れたのは、いつものように無造作な髪にサングラスをずらしたハルだった。
肩にかけたリュックと、片手に引くスーツケース。
彼の登場はいつも、どこか風を巻き起こすように部屋に広がっていく。
「今回は一ヶ月くらい居させて貰うわ」
そう言って、ハルはリビングまでスーツケースを運び込むと、ソファにどっかりと腰を下ろした。
まるで自分の家のようにくつろぐその姿に、カズは苦笑いを浮かべながらキッチンからコーヒーを運んできた。
「また会えて嬉しいよ、兄貴」
「おっ、サンキュー」
ハルは受け取ったコーヒーを一口啜り、満足げに目を細めた。
「仕事に一区切りついたのか?」
ハヤトがノートパソコンを閉じながら尋ねる。
彼は今日も朝から原稿を書き続けていたようで、目の下に軽く影が落ちている。
「まぁね。イラストの納品も終わったし、あとは編集からのフィードバック待ち。ちょっとだけ、心のリセットが欲しくてな」
「リセットって、また徹夜続きだったから?」
マサシがペンを置き、笑いながら言う。
彼の机の上には、今週号の漫画の最終チェックが残っている。
「まあ、そんなとこ。でも、お前らの飯が恋しくて戻って来たってのも、本音だけどな」
「また惚れさせんなよ、兄貴」
カズは肩をすくめながら、冷蔵庫を開ける。
「晩ご飯、何が食べたい?」
「お前のご飯なら何でもいいけど⋯⋯できれば、おふくろの味に近いやつがいいな」
「⋯⋯それ、毎回来るたび言ってるよね」
マサシが呆れ顔で言うと、ハルは悪びれず笑った。
「だって、カズの味噌汁には魂が宿ってるんだよ。ウチの母ちゃんも、『カズの味噌汁は別格』って言ってるぜ」
「母ちゃん、ちょっと大袈裟すぎるよ⋯⋯」
カズは照れ隠しに顔を背け、鍋をコンロに載せる。
ハヤトは再びパソコンを開き、マサシはペンを走らせ、ハルだけがソファに寝転がって天井を眺めている。
「⋯⋯なんか、変わんねぇな」
ハルがぽつりと言った。
「何が?」
「お前らの日常。この部屋の空気。まるで、俺が居なくてもちゃんと回ってるっていうか⋯⋯安心するよ」
カズは手を止めて、ちらりと兄を見た。
「そりゃ、兄貴が居なくても、俺たちは生きてけるけど⋯⋯居てくれると、またちょっと違う空気になるよ。落ち着くな」
「へぇ、俺がいると落ち着く? 逆に俺は、お前らを見てると落ち着かないわ。毎日がプロフェッショナルモードじゃん。俺、ただのイラストレーターなのに」
「謙遜するなよ。兄貴の絵、今めっちゃ人気だろ? 俺の小説の表紙も、全部兄貴に描いてもらってんのに」
「ああ、それな。俺の漫画のイベントポスターも、ハル兄に描いてもらったし」
マサシが言うと、ハヤトも頷いた。
「俺の新刊の装画も、お前がいなかったら成立してなかったよ。感謝してる」
「⋯⋯お前ら、重いな」
ハルは頭を掻きながら、照れくさそうに笑った。
夕方になり、カズの手料理がテーブルに並ぶ。
味噌汁、焼き魚、冷奴、ナスの味噌炒め、そしてハルの好物の筑前煮。
「わあ、完全に実家だ⋯⋯」
ハルは箸を動かしながら、目を細めた。
「兄貴、料理できないんだから、こうやって食べさせてもらえるうちに、しっかり味わっとけよ」
「わかってるって。⋯⋯でもさ、なんで俺だけこんなにダメなんだろな。絵は描けるのに、鍋は焦がすし、卵焼きは炭になるし」
「それは才能の偏りだよ。カズは家事全般の才能がある。マサシは絵とユーモア。ハヤトは文章と冷静さ。兄貴は⋯⋯視覚的センスと、人を和ませる才能」
「⋯⋯つまり、俺は役立たずってことか?」
「違うよ。兄貴は、ここに居るだけで、この部屋が『家』になるんだよ」
カズの言葉に、ハルは一瞬、目を見開いた。
「⋯⋯また、重いな、お前」
でも、その声は、どこか嬉しそうだった。
夜になり、四人はリビングに集まってボードゲームを始めた。
ハルはルールを聞きながらも、途中で「俺、これ向いてないわ」と投げ出すが、みんなは笑いながら彼をからかう。
「兄貴、人生もこんな感じだよな。ルールはわかってるけど、最後までうまくいかない」
「うるせぇ、カズ!」
「でも、だからこそ面白いんだよ。予測不能なのが、ハルさん」
マサシの言葉に、ハルは思わず噴き出した。
「お前ら、本当に⋯⋯」
彼は笑いながら、缶ビールを一口飲んだ。
夜更け、マサシとハヤトが寝室に引き上げ、カズは台所の片付けを終えてリビングに戻る。
ソファで毛布に包まり、テレビをぼんやり見ているハルの隣に座った。
「⋯⋯また、来てくれて、ありがとうな」
カズの声は小さかった。
「え? 何言ってんの。こっちこそ、居させてもらってるんだろ」
「でもさ⋯⋯兄貴が来ると、俺、実家に帰ったみたいな気がするんだ。創作も、家事も、全部頑張ってるつもりだけど⋯⋯ふと、『自分、ちゃんと家族と繋がってるかな』って不安になるときがあって」
ハルはテレビから目を離し、弟を見た。
「⋯⋯そんなこと、ある?」
「あるよ。売れっ子作家とか言われて、賞とったり、インタビューされたり⋯⋯でも、家に帰ると、ただのカズでしょ? 兄貴の弟で、マサシの恋人で、ハヤトの幼なじみで」
「それ、一番尊い立場じゃん」
ハルは真剣な目で言った。
「お前がいなきゃ、俺もここまで来られなかった。実家で一人で絵描いてるだけの、ただの引きこもりイラストレーターだったよ。お前の小説に俺の絵が使われるようになって、初めて『仕事』って実感が持てた。マサシの漫画も、ハヤトの小説も、全部、ここにある日常が支えてる。俺がここに居られるのも、お前らがいるからだ」
カズは黙って聞いていた。
やがて、小さく笑った。
「⋯⋯また、兄貴が重いよ」
「重いのはお前だろ。毎日、俺のためにご飯作って、洗濯して、掃除して⋯⋯俺、何もできないのに」
「でも、兄貴が笑ってる顔を見ると、全部報われるよ。それに、兄貴がここに居る間、料理の負担が減るわけだし」
「⋯⋯それ、遠回しに俺のこと役立たずって言ってない?」
「バレた?」
二人は同時に笑った。
次の日から、ハルの滞在生活は本格的に始まった。
朝はカズが目覚まし代わりにコーヒーを運び、マサシは寝癖のままスケッチブックを開き、ハヤトは朝刊を読みながらアイディアを練る。
ハルは相変わらずソファでうたた寝しながら、時々「何か描こうかな」と言いながらも、結局はスマホをいじっている。
ある日、カズが買い物に出かけ、マサシとハヤトが集中原稿中だったとき、ハルは珍しくキッチンに立った。
「ちょっと、チャレンジしてみるわ」
「⋯⋯え? 何を?」
マサシが不安げに尋ねる。
「卵焼き。前回、完全に炭化したからな。今度こそ、ふわふわに仕上げてやる」
「やめとけ、火事になる」
ハヤトが警告するも、ハルは耳を貸さず、卵を割ってフライパンに流し込んだ。
五分後。
「⋯⋯焦げた」
黒い塊がフライパンにこびりついていた。
「いや、それ、もう別の存在だ」
マサシが呆れた顔で言うと、ハルは肩をすくめた。
「でも、見た目はダメでも、味は⋯⋯」
一口食べて、顔をしかめた。
「⋯⋯やっぱり、別の存在だった」
その夜、カズは笑いながら「次は俺が教えるから」と言い、ハルは照れくさそうに「お前、俺の先生じゃん」と呟いた。
週末には、四人で近くの川べりにピクニックに出かけた。
カズが作ったサンドイッチと手作りのレモネード。
マサシが持参したトランプ。
ハヤトが読んできた小説。
ハルはただ、空を見ながら「こういうの、久しぶりだな」と呟いた。
「兄貴、また来年も来てよ」
マサシが言うと、ハルは「当たり前だろ」と答えた。
「お前らの飯が食べたいし、お前らの笑い声が聞きたいし⋯⋯それに、カズの味噌汁、まだ修行が足りないからな」
カズは笑いながら、兄の頭を軽く叩いた。
夏の終わりが近づく中、この小さな家には、変わらない日常と、少しずつ深まる絆が、静かに、でも確かに、根を下ろしていた。
ハルが居るだけで、ここは『家』になる。
そして、カズにとって、それが何よりの安らぎだった。
八月の下旬。
蝉の声が途切れることなく響く午後、カズのマンションのドアが開いた。
「よっ! 実家での文化祭作業や創作活動は終わらせて来たぜ!」
玄関から現れたのは、いつものように無造作な髪にサングラスをずらしたハルだった。
肩にかけたリュックと、片手に引くスーツケース。
彼の登場はいつも、どこか風を巻き起こすように部屋に広がっていく。
「今回は一ヶ月くらい居させて貰うわ」
そう言って、ハルはリビングまでスーツケースを運び込むと、ソファにどっかりと腰を下ろした。
まるで自分の家のようにくつろぐその姿に、カズは苦笑いを浮かべながらキッチンからコーヒーを運んできた。
「また会えて嬉しいよ、兄貴」
「おっ、サンキュー」
ハルは受け取ったコーヒーを一口啜り、満足げに目を細めた。
「仕事に一区切りついたのか?」
ハヤトがノートパソコンを閉じながら尋ねる。
彼は今日も朝から原稿を書き続けていたようで、目の下に軽く影が落ちている。
「まぁね。イラストの納品も終わったし、あとは編集からのフィードバック待ち。ちょっとだけ、心のリセットが欲しくてな」
「リセットって、また徹夜続きだったから?」
マサシがペンを置き、笑いながら言う。
彼の机の上には、今週号の漫画の最終チェックが残っている。
「まあ、そんなとこ。でも、お前らの飯が恋しくて戻って来たってのも、本音だけどな」
「また惚れさせんなよ、兄貴」
カズは肩をすくめながら、冷蔵庫を開ける。
「晩ご飯、何が食べたい?」
「お前のご飯なら何でもいいけど⋯⋯できれば、おふくろの味に近いやつがいいな」
「⋯⋯それ、毎回来るたび言ってるよね」
マサシが呆れ顔で言うと、ハルは悪びれず笑った。
「だって、カズの味噌汁には魂が宿ってるんだよ。ウチの母ちゃんも、『カズの味噌汁は別格』って言ってるぜ」
「母ちゃん、ちょっと大袈裟すぎるよ⋯⋯」
カズは照れ隠しに顔を背け、鍋をコンロに載せる。
ハヤトは再びパソコンを開き、マサシはペンを走らせ、ハルだけがソファに寝転がって天井を眺めている。
「⋯⋯なんか、変わんねぇな」
ハルがぽつりと言った。
「何が?」
「お前らの日常。この部屋の空気。まるで、俺が居なくてもちゃんと回ってるっていうか⋯⋯安心するよ」
カズは手を止めて、ちらりと兄を見た。
「そりゃ、兄貴が居なくても、俺たちは生きてけるけど⋯⋯居てくれると、またちょっと違う空気になるよ。落ち着くな」
「へぇ、俺がいると落ち着く? 逆に俺は、お前らを見てると落ち着かないわ。毎日がプロフェッショナルモードじゃん。俺、ただのイラストレーターなのに」
「謙遜するなよ。兄貴の絵、今めっちゃ人気だろ? 俺の小説の表紙も、全部兄貴に描いてもらってんのに」
「ああ、それな。俺の漫画のイベントポスターも、ハル兄に描いてもらったし」
マサシが言うと、ハヤトも頷いた。
「俺の新刊の装画も、お前がいなかったら成立してなかったよ。感謝してる」
「⋯⋯お前ら、重いな」
ハルは頭を掻きながら、照れくさそうに笑った。
夕方になり、カズの手料理がテーブルに並ぶ。
味噌汁、焼き魚、冷奴、ナスの味噌炒め、そしてハルの好物の筑前煮。
「わあ、完全に実家だ⋯⋯」
ハルは箸を動かしながら、目を細めた。
「兄貴、料理できないんだから、こうやって食べさせてもらえるうちに、しっかり味わっとけよ」
「わかってるって。⋯⋯でもさ、なんで俺だけこんなにダメなんだろな。絵は描けるのに、鍋は焦がすし、卵焼きは炭になるし」
「それは才能の偏りだよ。カズは家事全般の才能がある。マサシは絵とユーモア。ハヤトは文章と冷静さ。兄貴は⋯⋯視覚的センスと、人を和ませる才能」
「⋯⋯つまり、俺は役立たずってことか?」
「違うよ。兄貴は、ここに居るだけで、この部屋が『家』になるんだよ」
カズの言葉に、ハルは一瞬、目を見開いた。
「⋯⋯また、重いな、お前」
でも、その声は、どこか嬉しそうだった。
夜になり、四人はリビングに集まってボードゲームを始めた。
ハルはルールを聞きながらも、途中で「俺、これ向いてないわ」と投げ出すが、みんなは笑いながら彼をからかう。
「兄貴、人生もこんな感じだよな。ルールはわかってるけど、最後までうまくいかない」
「うるせぇ、カズ!」
「でも、だからこそ面白いんだよ。予測不能なのが、ハルさん」
マサシの言葉に、ハルは思わず噴き出した。
「お前ら、本当に⋯⋯」
彼は笑いながら、缶ビールを一口飲んだ。
夜更け、マサシとハヤトが寝室に引き上げ、カズは台所の片付けを終えてリビングに戻る。
ソファで毛布に包まり、テレビをぼんやり見ているハルの隣に座った。
「⋯⋯また、来てくれて、ありがとうな」
カズの声は小さかった。
「え? 何言ってんの。こっちこそ、居させてもらってるんだろ」
「でもさ⋯⋯兄貴が来ると、俺、実家に帰ったみたいな気がするんだ。創作も、家事も、全部頑張ってるつもりだけど⋯⋯ふと、『自分、ちゃんと家族と繋がってるかな』って不安になるときがあって」
ハルはテレビから目を離し、弟を見た。
「⋯⋯そんなこと、ある?」
「あるよ。売れっ子作家とか言われて、賞とったり、インタビューされたり⋯⋯でも、家に帰ると、ただのカズでしょ? 兄貴の弟で、マサシの恋人で、ハヤトの幼なじみで」
「それ、一番尊い立場じゃん」
ハルは真剣な目で言った。
「お前がいなきゃ、俺もここまで来られなかった。実家で一人で絵描いてるだけの、ただの引きこもりイラストレーターだったよ。お前の小説に俺の絵が使われるようになって、初めて『仕事』って実感が持てた。マサシの漫画も、ハヤトの小説も、全部、ここにある日常が支えてる。俺がここに居られるのも、お前らがいるからだ」
カズは黙って聞いていた。
やがて、小さく笑った。
「⋯⋯また、兄貴が重いよ」
「重いのはお前だろ。毎日、俺のためにご飯作って、洗濯して、掃除して⋯⋯俺、何もできないのに」
「でも、兄貴が笑ってる顔を見ると、全部報われるよ。それに、兄貴がここに居る間、料理の負担が減るわけだし」
「⋯⋯それ、遠回しに俺のこと役立たずって言ってない?」
「バレた?」
二人は同時に笑った。
次の日から、ハルの滞在生活は本格的に始まった。
朝はカズが目覚まし代わりにコーヒーを運び、マサシは寝癖のままスケッチブックを開き、ハヤトは朝刊を読みながらアイディアを練る。
ハルは相変わらずソファでうたた寝しながら、時々「何か描こうかな」と言いながらも、結局はスマホをいじっている。
ある日、カズが買い物に出かけ、マサシとハヤトが集中原稿中だったとき、ハルは珍しくキッチンに立った。
「ちょっと、チャレンジしてみるわ」
「⋯⋯え? 何を?」
マサシが不安げに尋ねる。
「卵焼き。前回、完全に炭化したからな。今度こそ、ふわふわに仕上げてやる」
「やめとけ、火事になる」
ハヤトが警告するも、ハルは耳を貸さず、卵を割ってフライパンに流し込んだ。
五分後。
「⋯⋯焦げた」
黒い塊がフライパンにこびりついていた。
「いや、それ、もう別の存在だ」
マサシが呆れた顔で言うと、ハルは肩をすくめた。
「でも、見た目はダメでも、味は⋯⋯」
一口食べて、顔をしかめた。
「⋯⋯やっぱり、別の存在だった」
その夜、カズは笑いながら「次は俺が教えるから」と言い、ハルは照れくさそうに「お前、俺の先生じゃん」と呟いた。
週末には、四人で近くの川べりにピクニックに出かけた。
カズが作ったサンドイッチと手作りのレモネード。
マサシが持参したトランプ。
ハヤトが読んできた小説。
ハルはただ、空を見ながら「こういうの、久しぶりだな」と呟いた。
「兄貴、また来年も来てよ」
マサシが言うと、ハルは「当たり前だろ」と答えた。
「お前らの飯が食べたいし、お前らの笑い声が聞きたいし⋯⋯それに、カズの味噌汁、まだ修行が足りないからな」
カズは笑いながら、兄の頭を軽く叩いた。
夏の終わりが近づく中、この小さな家には、変わらない日常と、少しずつ深まる絆が、静かに、でも確かに、根を下ろしていた。
ハルが居るだけで、ここは『家』になる。
そして、カズにとって、それが何よりの安らぎだった。
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