元アラフィフ男の異世界転生記 〜新しい家族とともに異世界を謳歌する〜

あかいとまと

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第52話:帰還、そして新しい日常へ

第52話:帰還、そして新しい日常へ

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 エリュシアの夜風は、星の道の余韻をまだ少しだけ残していた。  
 シュウ、ネロ、リオ、アレンの四人は、静かな帰還の道を歩いていた。

 星の道での出来事は、胸の奥にまだ熱を残している。  
 闇のシュウが還り、ルミナが生まれ、女神エリシアが現れ――そして、すべてが終わった。

「⋯⋯帰ってきたな」

 シュウが呟くと、ネロが嬉しそうに笑った。

「うん! ここが俺たちの家だよ!」

 リオは新しい身体にまだ慣れないのか、歩幅を少しだけ小さくしていた。  
 背は30センチ以上伸び、肩幅も広がり、声も少し低くなった。  
 けれど、目の奥にある優しさは変わらない。

「⋯⋯みんな、どう思うかな⋯⋯」

「驚くに決まってる。でも大丈夫だ。お前はお前だよ」

 シュウが笑って扉を開けた。

 ――ギィ。

「おかえりなさ⋯⋯えっ?」

 ミラが固まった。  
 金髪赤眼の薬師は、手に持っていた薬草を落としそうになりながらリオを凝視する。

 その瞳には驚きと戸惑い、そして“信じたいけど信じられない”揺れがあった。

「リ、リオ⋯⋯? 本当に⋯⋯リオなの⋯⋯?」

 奥からヨシュアが顔を出し、手に持っていた本を落とした。

「兄ちゃん、おかえりなさい⋯⋯って、え? 誰⋯⋯?」

 ヨシュアはアレンの弟であり、リオとは兄弟ではない。  
 だからこそ、リオの変化に対して“家族としての責任”ではなく、“仲間としての驚きと心配”が胸に広がっていた。

「まさか⋯⋯何かの魔法の副作用では⋯⋯?」

 その不安は、リオが照れくさそうに笑った瞬間、霧のように消えた。

「⋯⋯ただいま。俺だよ、ヨシュアさん」

「⋯⋯よかった⋯⋯本当に⋯⋯リオなんだね⋯⋯」

 ヨシュアは胸に手を当て、深く息を吐いた。

 そして――  
 フェイが姿を見せた。

 銀髪碧眼の騎士団長は、反射的に剣を半分抜きかけて――そして固まった。

「⋯⋯リオ⋯⋯? お前⋯⋯背⋯⋯伸びたな⋯⋯」

 その声は冷静だが、内心は大荒れだった。

(⋯⋯いや、待て⋯⋯落ち着けフェイ・アストレア⋯⋯これはただの成長だ⋯⋯ただの成長⋯⋯だが⋯⋯30センチ以上って⋯⋯成長の域を超えてないか⋯⋯? いや、でも⋯⋯星の守護者の血なら⋯⋯あり得る⋯⋯のか⋯⋯?)

 フェイはリオを上から下までじっくり見た。

(⋯⋯肩幅⋯⋯広い⋯⋯
 腕⋯⋯太い⋯⋯
 脚⋯⋯長い⋯⋯
 背中⋯⋯でかい⋯⋯
 そして⋯⋯アソコ⋯⋯)

 フェイの視線が一瞬だけ下に滑り――すぐに慌てて顔をそらした。

(ちょ、ちょっと待て⋯⋯!  
 いやいやいや、気にするなフェイ・アストレア⋯⋯これは勝負ではない⋯⋯勝負では⋯⋯だが⋯⋯もし⋯⋯アソコまで追い越されていたら⋯⋯いや、そんな⋯⋯いや、でも⋯⋯可能性は⋯⋯くそっ⋯⋯! 俺は騎士団長だぞ⋯⋯! こんなことで動揺してどうする⋯⋯! だが⋯⋯男として⋯⋯負けたくは⋯⋯!)

 フェイは頭を抱えた。

 シュウは横で吹き出しそうになった。

「フェイ、お前⋯⋯何を心配してんだよ」

「な、何でもない!! 本当に何でもない!!」

 フェイの耳は真っ赤だった。  
 ヨシュアは「フェイさん⋯⋯?」と困惑し、ミラは「フェイさんって意外と繊細⋯⋯?」と呟き、アレンは「フェイ⋯⋯落ち着け」と肩を叩いた。

 銀狼ウォルフは鼻をひくつかせ、尻尾を振った。

「匂いは同じだ。だが⋯⋯身体が違うな。強くなったぞ、リオ」

 九尾の大精霊ラムは、九本の尾をふわりと揺らしながら言った。

「ふむ⋯⋯星の守護者の血が、ようやく“目覚めた”ということだな。立派になったな」

 リオは胸が熱くなった。

「⋯⋯ただいま。みんな⋯⋯ありがとう」

 その一言で、拠点の空気が一気に温かくなる。

 ミラは涙を浮かべ、ヨシュアは微笑み、フェイはまだ動揺していたが肩を叩き、ウォルフは尻尾を振り、ラムは優しく頷いた。

 アレンはそんな様子を見ながら、静かに言った。

「ここは、もう完全に“家族”だな」

 シュウはリオの肩に手を置き、真っ直ぐに言った。

「リオ。本当に⋯⋯格好良くなったな」

 リオは一瞬固まり、耳まで真っ赤になった。

「⋯⋯兄さん⋯⋯そんな⋯⋯」

「事実だよ。誇っていい」

 その言葉は、リオの胸の奥に深く染み込んだ。

 夜。  
 それぞれが自分の部屋に戻り、拠点は静けさを取り戻した。

 リオは自室の扉を開けた。

 そこは、昔のままだった。

 低めのベッド。  
 小さな机。  
 壁にかけられた護符。  
 子どもの頃の自分に合わせて作られた空間。

「⋯⋯ただいま」

 小さく呟いてからベッドに腰を下ろす。

 ――ギシッ。

「⋯⋯あ、やっぱり」

 横になろうとした瞬間、足がはみ出し、肩も収まらない。

「⋯⋯兄さん⋯⋯これ⋯⋯もう無理だ⋯⋯」

 リオは苦笑しながら呟くと、シュウの部屋へ向かった。

「兄さん、まだ起きてる?」

「起きてるぞ。入れ」

 部屋に入ると、シュウはノートを閉じてこちらを見た。

「どうした?」

「⋯⋯ベッドが⋯⋯狭すぎる⋯⋯寝返りも打てない⋯⋯」

 シュウは吹き出した。

「そりゃそうだろ。お前、30cm以上伸びてるんだぞ」

「⋯⋯そんなに⋯⋯?」

「そんなにだ。だから新しいの買うか」

 シュウはスマホを取り出し、異世界マーケットを開いた。

「地球のベッドなら⋯⋯セミダブルでいいか?」

「これ⋯⋯ふかふかそう⋯⋯!」

「よし、これにする」

 転送魔法陣が光り、新しいベッドが現れた。

 リオは跳びつき、ふかふかの感触に頬を埋めた。

「⋯⋯すごい⋯⋯!  
 広い⋯⋯柔らかい⋯⋯!  
 兄さん、ありがとう⋯⋯!」

「気に入ったならよかったな」

 リオは布団に潜り込み、子どものころと同じ癖で足をぱたぱたさせた。

「兄さん⋯⋯」

「ん?」

「俺⋯⋯この身体で⋯⋯これからも⋯⋯兄さんの家族でいられる⋯⋯?」

 シュウは優しく笑った。

「当たり前だろ。お前はリオ・タチバナだ。俺の息子で、家族だよ」

 リオの目が潤んだ。

「⋯⋯うん⋯⋯」

 そのまま、満ち足りた笑みを浮かべて眠りについた。

 シュウは静かに扉を閉めた。

(⋯⋯おかえり、リオ。これからは、この身体で――この家で、生きていけ)

 ログハウスは、穏やかな夜に包まれた。



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