千景くんは魔法使い!?

笠原零

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千景くんのきもち

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 職場体験が終わった帰り道。私は千景くんと桃ちゃんと帰っていた。

「色々と聞きたいことがありすぎるんだけど、アレってどっちがやったの?」

 桃ちゃんに適当な嘘をつくことは簡単だけど、できればそんなことしたくない。千景くんも同じ気持ちみたいで、桃ちゃんの質問にすぐさま答えた。

「瞬間移動をさせたのは俺だよ」
「それって、間宮に不思議な力があるってこと?」
「うん。魔法で遠山さんたちを安全な場所に移動した」
「そうなんだ。ありがとう。ゆづを助けてくれて」

 桃ちゃんの反応に、私と千景くんはまたまた顔を見合わせた。もっと驚いたりすると思っていたのに、桃ちゃんは魔法のことを知ってもこっちが拍子抜けするほどあっさりだった。

「え、それだけ? 魔法って聞いたらもっとこう……」

 千景くんが身振り手振りで、動揺を伝えようとしている。

「これでも一応ビックリはしてるよ。でも間宮は魔法を悪いことに使ったりしないだろうし、ゆづも知ってて一緒にいるんでしょ?」
「うん」 
「ふたりがわかり合ってるなら、私からはなにも言うことないよ」
「サンキュ、桃園」
「でも、ひとつだけ約束して。魔法をどんなふうに使おうと、ゆづのことだけは大切にしてね」
「うん、わかった。約束する」

 ずっとひとりでいたのに、私の周りにはこんなにも温かな人たちがいる。それを実感したら、嬉しくて泣けてきた。 

「え、ちょっと、なんでゆづが泣いてるの?」 
「だって桃ちゃんが……っ」 
「はいはい。もう泣かないの」

 桃ちゃんと友達になれて、本当によかったって思った。そしてこれからも、ずっとずっと友達でいたい。


 桃ちゃんと分かれ道でばいばいをすると、千景くんとふたりきりになった。

 夕焼け色に染まっている彼の髪が揺れるたびに、地面に映るシルエットもゆるやかに動いていた。

「俺、遠山さんが車に跳ねられそうになってるのを見て、本当に心臓が止まるかと思ったんだ」 

 そう言いながら、千景くんは私の手を握った。顔が熱い。体が熱い。だけど熱いのはきっと、千景くんも同じ。

「俺、自分が思ってる以上に遠山さんのことが大切みたい」 

 彼のビー玉みたいな瞳に、私が映っている。夕日のせいにできないくらい、私の顔は真っ赤になっていた。

「今日から遠山さんじゃなくて、下の名前で呼んでもいい?」
「え……?」
「結月」 

 まだいいって言ってないのに、千景くんは甘い声で私の名前を呼んだ。

 私はずっと、千景くんへの気持ちに名前を付けなかった。

 付けてしまえば、もっと想いが溢れてしまう気がして怖かった。

 でも、もう無理かもしれない。

 繋いでいる手を、私はぎゅっと握り返す。

 私は……千景くんのことが好き。

 大好きなの。

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