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第一章 誰のせいでもない
最終の輸送車に乗って
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――薫――
山口市は、静かだった。
戦いが終わり、九州から運び込まれた物資が並び、仮設の拠点が少しずつ「生活」の形を取り戻していく。
瓦礫の隙間を抜ける風は、まだ冷たいけれど――それでも、確かに前より穏やかだった。
その夜。
薄暗い倉庫の裏で、瑠璃子が私を呼び止めた。
「……薫、ちょっといい?」
声は、いつもより小さかった。
二人並んで腰を下ろす。
遠くで発電機の音がうなっている。
「私ね……IDOL、卒業する」
一瞬、意味が追いつかなかった。
「……え?」
瑠璃子は笑った。
無理に作った、すごく薄い笑顔。
「怖くなっちゃったんだ」
指先が、膝の上で震えている。
「明日死ぬかもしれないって思いながら生きるの……耐えられなくて」
「わかってるよ。いつかはみんな死ぬって。でも……」
言葉が、途中で切れる。
「私、まだ知らない世界があるって思いたかった。
ぼんやり、いつか行けたらいいなって……」
少し間を置いて、息を吐く。
「でも、もう限界」
何も言えなかった。
胸の奥で、何かが静かに崩れていく。
IDOLの力は、少女の間だけ。
年齢を重ねれば、オーラは消える。
――儚い。
最初から、わかっていたはずなのに。
(この時間が、永遠じゃないって)
G2のみんなと笑って、戦って、泣いて。
その全部が、いつか終わる。
「……ごめんね」
瑠璃子が言う。
「謝らないで」
思ったより、声は落ち着いていた。
「生きたいって思うの、悪いことじゃない」
自分に言い聞かせるみたいに。
翌日。
G2メンバー、十五人全員が揃った。
最後に全員で円陣を組んだ。
だけど私たちだけの歌はない。
それが、胸を締めつける。
「行ってらっしゃい」
「元気でね」
「絶対、生きて」
言葉は、どれも軽くて、重かった。
瑠璃子は、何度も振り返って手を振る。
福岡行きの最終の輸送車。
モーター音が、ゆっくりと遠ざかる。
見えなくなるまで、誰も動かなかった。
(少女でいられる時間は、短い)
だからこそ。
この瞬間を、全力で楽しむしかない。
別れは、始まりでもある。
そう信じなきゃ、前に進めない。
私は、夕焼けに染まる空を見上げた。
美しい。
どこまでも。
いつか青空が見えるまで。
今日もまた、世界は残酷で、優しい。
「……行こう」
誰に向けた言葉かもわからないまま、
私は、歩き出した。
今、この一瞬を大事に生きるために。
山口市は、静かだった。
戦いが終わり、九州から運び込まれた物資が並び、仮設の拠点が少しずつ「生活」の形を取り戻していく。
瓦礫の隙間を抜ける風は、まだ冷たいけれど――それでも、確かに前より穏やかだった。
その夜。
薄暗い倉庫の裏で、瑠璃子が私を呼び止めた。
「……薫、ちょっといい?」
声は、いつもより小さかった。
二人並んで腰を下ろす。
遠くで発電機の音がうなっている。
「私ね……IDOL、卒業する」
一瞬、意味が追いつかなかった。
「……え?」
瑠璃子は笑った。
無理に作った、すごく薄い笑顔。
「怖くなっちゃったんだ」
指先が、膝の上で震えている。
「明日死ぬかもしれないって思いながら生きるの……耐えられなくて」
「わかってるよ。いつかはみんな死ぬって。でも……」
言葉が、途中で切れる。
「私、まだ知らない世界があるって思いたかった。
ぼんやり、いつか行けたらいいなって……」
少し間を置いて、息を吐く。
「でも、もう限界」
何も言えなかった。
胸の奥で、何かが静かに崩れていく。
IDOLの力は、少女の間だけ。
年齢を重ねれば、オーラは消える。
――儚い。
最初から、わかっていたはずなのに。
(この時間が、永遠じゃないって)
G2のみんなと笑って、戦って、泣いて。
その全部が、いつか終わる。
「……ごめんね」
瑠璃子が言う。
「謝らないで」
思ったより、声は落ち着いていた。
「生きたいって思うの、悪いことじゃない」
自分に言い聞かせるみたいに。
翌日。
G2メンバー、十五人全員が揃った。
最後に全員で円陣を組んだ。
だけど私たちだけの歌はない。
それが、胸を締めつける。
「行ってらっしゃい」
「元気でね」
「絶対、生きて」
言葉は、どれも軽くて、重かった。
瑠璃子は、何度も振り返って手を振る。
福岡行きの最終の輸送車。
モーター音が、ゆっくりと遠ざかる。
見えなくなるまで、誰も動かなかった。
(少女でいられる時間は、短い)
だからこそ。
この瞬間を、全力で楽しむしかない。
別れは、始まりでもある。
そう信じなきゃ、前に進めない。
私は、夕焼けに染まる空を見上げた。
美しい。
どこまでも。
いつか青空が見えるまで。
今日もまた、世界は残酷で、優しい。
「……行こう」
誰に向けた言葉かもわからないまま、
私は、歩き出した。
今、この一瞬を大事に生きるために。
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