Sakura Generation  ~絶望を希望に変える少女たち~

にわかばでぃ

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第二章 二度とBANされるものか

マイクロスコープ

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――紫鈴しりん――

公子きみこ美和子びわこと合流し、次の集合地点へ向かって進んでいたときだった。
林を抜けた先、岩陰から小柄な影が姿を現す。

「おお、助かったわ。そっちも無事だったのね」
莉乃りのだった。
穏やかな声とは裏腹に、足元には無数の爪痕と砕けた枝が散乱している。

「四足の中型ヘイトが十機、防御陣形組んでてね。正面突破は無理だった」
淡々と報告するその視線は、すでに戦場全体を把握しきったものだった。

「ボス戦まで紫鈴の力は温存しよう。今回は防御頼む」
私はうなずき、一歩後ろに下がる。

公子が胸の前で手を合わせ、にっこりと微笑む。
「それじゃ――《偶然必然ラッキー・ピエロ》ね。今日はきっと運が味方してくれるわ」
 全員にバフがかかり、空気が、わずかに軽くなる。

「じゃ、行ってくる!」
美和子がハンマーを構え、深呼吸ひとつ。

次の瞬間、防御陣形へとハンマーを振り回しながら突っ込んだ。

 一体目。
 ヘイトが連携を取ろうとした瞬間、脚部同士が噛み合い、派手に転倒する。
「ラッキー! バフ効いてるね。」
 振り下ろされた一撃で、装甲が砕け散った。

 二体目。
 体勢を立て直す前に、回転からの連続攻撃。
 衝撃が内部まで届き、致命打となる。

 三体目。
 反撃する間もなく、ハンマーが中枢を叩き潰した。

 だが――。

「美和子、囲まれてる!」

 四方から一斉に距離を詰めるヘイト。
 連続する衝撃波に、美和子の動きが鈍る。

「ちょ……っ!」
 能力が途切れた瞬間、強烈な一撃。
 美和子の身体が宙を舞った。

 ――致命傷か。

 しかし、彼女は浅い池へ落下した。
 水が衝撃を吸収し、最悪の事態は免れた。

「ここは私に任せて!」
 私は前に出て、四体目を強引に破壊。
 包囲に裂け目を作る。

 だがその隙に、公子が三機に囲まれていた。
「まあ……少々、まずい状況ね」

 声は平静だが、逃げ場はない。
 私は防御に徹し、必死に時間を稼ぐ。

 ――そのとき。
「……わしの出番やな」
 莉乃が静かに前に出た。

特殊能力《微細観察マイクロスコープ》が発動する。
 
彼女の瞳が、戦場のあらゆる情報を切り取っていく。
 装甲の歪み。
 関節の摩耗。
 攻撃直前に生じる、わずかな重心移動。

「見えた。」
 槍を構え一歩踏み込む。

 一突き目。
 関節の隙間を正確に貫き、機体が崩れる。

 二突き目。
 次の一機の駆動部を破壊。

 三突き目。
 最後の一機の中枢を、迷いなく貫通。

 ――三機、同時撃破。

「すまんな、観察に時間かかって」
能力が収束し、戦場に音が戻る。

私、公子、莉乃。
3人の連携で、残るヘイトを一気に殲滅した。

 戦闘終了。

公子が池へ駆け寄り、美和子を優しく抱き起こす。
「大丈夫? 本当に、無茶しないで!」
「ちょ、近い近い!」

その様子を、莉乃がじっと見つめていた。
まるで――マイクロスコープ越しに観察するかのように。
そして、ぽつり。
「……わしも美和子を愛でる会、入ろかな?」
「やめて!」
私は即座にそう言って、肩をすくめた。
激戦の直後とは思えない、奇妙に穏やかな空気が、そこには流れていた。




■□■□■□特殊能力解説■□■□■□

莉乃(りの)

特殊能力:微細観察(マイクロスコープ)

微細観察は、対象を極限まで細分化して捉え、その中から「最も脆く、最も効果的な一点」を自然に見抜く能力である。莉乃の視界では、敵や構造物、武器、さらには能力の流れまでもが層状に分解され、弱点だけが静かに浮かび上がる。それは分析や思考の結果ではなく、感覚として「見えてしまう」確信に近い。
発動中の莉乃は驚くほど落ち着いており、戦場の喧騒の中でも世界が静止したように感じられる。
筋肉の癖、関節の遊び、装甲の歪み、能力の結節点――そのすべてが一撃必殺のための“答え”として提示される。
彼女は無駄な動きを嫌い、最小限の踏み込みと、一本の槍による正確無比な突きで戦闘を終わらせる。
特殊能力がなかなか安定せずに苦労していた時に紫鈴の手助けと指導により、自身の特殊能力として完成させることができた。
世話焼きな性格を持つ莉乃らしく、微細観察は「壊すため」ではなく「終わらせるため」の能力なのだ。
一方で集中力への負荷が大きく、感情が揺れると精度が落ちるという弱点も抱えている。
それでも彼女は静かに前へ出て、確実な一突きで戦局を締めくくる存在である。


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