Sakura Generation  ~絶望を希望に変える少女たち~

にわかばでぃ

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第四章 五月雨よ

制服の人魚

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――かおる――

四国地方が解放された日、高松の空は驚くほど澄んでいた。
櫻小隊の全メンバーが高松に集結し、久しぶりに全員の顔がそろった。

山陰地方と岡山エリアを攻略していたG1メンバーとも合流する。
「久しぶり! 無事だった?」
「先輩たちこそ、ご無事で何よりでした。」

言葉は軽いのに、みんなの目の奥には、簡単に言葉にできないものが溜まっていた。
誰もが激戦をくぐり抜けてきたことは、傷や疲れた笑顔が雄弁に語っている。
そして、今回の戦いを最後にG1の茜里先輩と里佳子先輩の二人が卒業することが報告された。
これまで辛い戦いを共にしてきた仲間たちが卒業していくたびに心にぽっかりと穴があくような気持になる。
何度経験しても慣れない。

そして、司令官からの次の指示は、兵庫エリア攻略。
だが、それは一ヶ月後だという。

――それまで、交代で防衛線を維持しつつ、回復に専念せよ。

翌日。
私は凛、美和子、華の四人で、久しぶりの休暇を取ることにした。

復興が進む街は、まだ瓦礫の名残りを抱えながらも、確実に息を吹き返していた。
露天が並び、食べ物の匂いと、人の笑い声が混じり合う。

「なんか……普通の街だね」
「うん。何年も前みたい」
歩いているだけで、胸の奥が少しだけ軽くなる。

そんな露天の一角で、私たちは立ち止まった。
「……制服?」
吊るされていたのは、女子高校生の制服だった。
新品ではないけれど、丁寧に手入れされている。

「ねえ、みんなで着てみない?」
華が目を輝かせて言う。

「えっ、今さら?」
「いいじゃん、休暇だよ?」
半ば勢いに押されるように、私たちは制服を購入した。
着替えてみると――

「……あれ、意外と似合ってない?」
「薫、普通に高校生じゃん」
「凛ちゃんはちょっとクールすぎるけどね」
「ちょっと! それどういう意味?」

鏡の前で、似合うだの似合わないだの、大騒ぎ。
久しぶりに、戦争と無関係な笑い声を上げた。

そのまま私たちは街を抜け、港へ向かった。
制服姿で歩く私たちを、何人かが振り返る。
少し照れくさいけれど、不思議と嫌な気分じゃなかった。

港に着くと、海が広がっていた。
穏やかな波が、きらきらと光を反射している。

華が、ぽつりと言った。
「……こんな世の中じゃなければ、私たち、普通に高校生してたのかな」
その言葉に、誰もすぐには答えられなかった。

「もし学校だったとしてもさ」
凛ちゃんが、静かに言う。
「毎日勉強で大変そう。きっと、別のことで悩んでたと思う」

「子供でもなくて、大人でもなくて」
美和子が肩をすくめる。
「一番、面倒な年ごろだもんね」

三人の言葉を聞きながら、私は胸の奥がぎゅっと締めつけられるのを感じていた。
いつか、大人になって特殊能力がなくなったとき、私は、私たちは・・

私は、堤防の縁に立ち、海に向かって叫んだ。

「……まだ、大人になりたくな~~い!!」

振り返る間もなく、そのまま海へ飛び込む。

「ちょ、薫ちゃん!?」
背中で、驚く声が聞こえた。

冷たい水が、一気に体を包む。
制服が重くなって、でも、それすら楽しくて。

顔を上げると、凛ちゃんがにやりと笑っていた。

「ずるい。ひとりだけ青春するつもり?」
次の瞬間、凛ちゃんもざぶん、と飛び込んでくる。

「もう! 仕方ないなぁ!」
華が声を上げ、美和子も続く。

四人で、制服のまま海の中。
なぜか分からないのに、顔を見合わせて、笑いが止まらなくなった。

水の中で、制服のスカートがふわりと揺れる。
まるで、人魚みたいだと思った。

「ねえ、薫ちゃん」
華が、水面越しに言う。
「今、最高に楽しいよね!」

「うん」
私は頷く。

「絶対忘れないよ。今を。みんなとの時間を。」
明日がどうなるかなんて、誰にも分からない。
また戦場に戻る日が来ることも、分かってる。
それでも、この瞬間だけは。

制服の人魚として、
私たちは、確かに青春を泳いでいた。
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