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■第1楽章
1-4 顔合わせ…②
しおりを挟むラゼットはダレスを見てから、ヴェニタスの方を見ては目を細めては優しく微笑む。
「何の用だ」
「僕が此処へと来たのは、顔合わせのようなものです」
「顔合わせだと?」
「えぇ、僕の“目的”は貴方達を救うために……“絶望の未来”を変えるために、僕は未来から一方通行の道を来たんです」
ラゼットの言葉にヴェニタスはラゼットを軽く睨んで居ると、それと同時にラゼットの後ろへと音もなく、黒茶色の髪色をした少し長めのウルフカットをしていて、キツメのツリ目をした翡翠色の瞳をしている。
ベルトだらけの黒い暗殺者のような服装を着て、口元にはガスマスクを身につけている青年が降り立つ。
ー“軍事国家”暗殺部隊“隊長”、“ゼノ・ヴェテル”。
(あぁっ、この気配だけで誰なのか分かってしまう)
(もう、未来には居ない凄く大切なっ……)
ゼノは暗殺用のダガーをラゼットの首を狙うように振りかざすが、ラゼットは咄嗟に姿勢を低くしてから後ろへと回し蹴りをしてゼノの鳩尾に一撃を与える。
「っ!?」
「嘘ぉっ!?ゼノが一撃でっ!?」
ゼノが壁へと叩きつけられてダウンすると同時にヴェニタスの左側に座っていた明るめな茶色をしたセミロングを後ろで緩く束ねており、少しタレ目に細目をしたモスグリーンの瞳をしている。
白の軍服で、上着は長めなのを着ている男性が慌てて席を立ち上がる。
ー“軍事国家・外交官”、“カナン・マーリン”。
「あぁ、彼なら大丈夫ですよ」
「ただ気絶しているだけなので……、それに僕は貴方達に対して“牙”を向けるつもりなんてないんです」
「それだと、意味がないじゃないですか?必死に救おうとしているのに、“牙”を向けるなんて本末転倒だと思いますけど……………ね?」
ラゼットは周りを満面な笑顔で見渡してから、少し真顔へと戻してはヴェニタスの方を見つめている。
「でも、安心して下さいね?」
「こんな怪しい奴が居ると迷惑でしょうから、今日は“ただの顔合わせ”で来ただけなので」
ラゼットは満面な笑顔をしてから軽く頭を下げてから、彼らへと背を向けて歩こうとする。
「待て」
「はい?」
ラゼットを呼び止めたのは、席から立ち上がり此方を見つめているヴェニタスだった。
「お前は、此処に居ろ」
「ちょっ、ヴェニさん!?」
ヴェニタスの発言に驚いているのはカナンの向かいに座っている赤寄りの黒色の髪色をした少し長めのショートをしていて、キツめの目をした赤色の瞳をしている。
赤黒色のマフラーを首に緩く巻いて、黒色の軍服をキッチリと着ている背の高い男性である。
ー“軍事国家”最強の矛“書記長兼総統代理”、“グレン・アヴァロン”。
「グレン」
「……何だよ、ヴェニさん」
「あのゼノを一撃で気絶させた者。お前は、そんな奴を野放しに出来ると思うか?」
「いや、まぁ、………出来ないわなぁ」
ヴェニタスの言葉に、グレンが口を濁しては少し悩んだ末に席を立ち上げるとラゼットの側へと歩み寄る。
「えっと?」
「……客間に案内するから、ついて来い」
「あ、はい」
グレンの案内でラゼットは食堂を出ていくと、懐かしい廊下を眺めてからグレンの背中を見つめていた。
ーあぁ、思い出させられる。
隠し通路から城塞を脱出したのだが、敵の軍人に包囲されていて表に出れなくなってしまっていた。
こうなったら、降参するしかないのだろうか。
だが、【書記長兼総統代理】の赤色のマフラーが視界を覆っていて【暗殺部隊の隊長】と【総統閣下】に手を掴まれて走り出していた。
『さっさと、遠くに行け!此所は、俺が殿(しんがり)を受け持つ!!リコリス、生きろよ』
ーあぁ、どうして。
ーどうして、行ってしまうの。
ー共に、居させてくれないの。
今、目の前にある背中。
それは、あの時とは違うのは分かって居ても手を伸ばしそうになってしまう。
「……おい」
「あ、はいっ?どうしました?」
「……いや、なんでもない。部屋についたから、声をかけただけだ」
「そうですか、案内ありがとございます」
ラゼットが軽く頭を下げてから微笑むと、グレンは何とも言えない表情をしてから軽く咳払いをする。
「何かしらの用事があったら、俺が居る“書記長の執務室”に来い」
「あ、はい」
「……じゃあな」
グレンはラゼットが返事をしたのを確認してから、耳に身につけているインカムに触れて誰かと話をしながら歩いていく。
その姿をラゼットは見てから、案内された客間に入れば監視カメラがあるのを確認する。
(必ず、客間には1台は設置されているんだよね)
(それを常に、見ているのは情報管理局ですけど)
(特に、客間に人が居るとなると“局長”が常に確認している)
ラゼットは用意されている椅子に座り、備え付けのテーブルに腰から取り出した腰用の鞄を置くと中身から一冊の手帳を取り出す。
その手帳を開くと、ラゼットが仲間から聞いた“様々な事件”などが時期と共に細かく書かれている。
(特に、気を付けるのは“要因”となった事件だよね)
(今日が同盟パレードだったなら、明日は一つ目の“要因”となる事件が起きる)
ラゼットは1ページ目に書かれている内容を確認すれば、其処に書かれていたのは“襲撃部隊の隊長”について書かれていた。
この時に起きた事件については、“本人”から直接聞いていた。
【あの事件さぁ、…本当にキツかったんだよ】
【事件?】
【この“右腕”を失ったのも、………あの事件がキッカケなんだ】
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