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シェードカオン
傲慢と強欲
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「どういうつもりなの!」
女はヒステリックに通信相手を怒鳴った。
「あなたはあの男を葬ると言ったわ! なのに、襲われたのはわたくしたちよ! あなた達は、あの男を殺すどころか、わたくし達の命を狙い──わたくし達はあの男に救われたのよ! あの男に! こんな屈辱はないわ!」
『ミズ、それはこちらの手違いです。お許しください。選んだ要員が勝手に目標を変更してしまったのです。我々はあなた方を傷つける意図はなかったのです』
画面の中の男は白々しくも謝罪した。
『どちらにしろ、彼らは生きて帰れない、いわば切り捨てられた人間でした。ならば、少しでも大物をと、思ったのではないでしょうか』
「それが、あなたの考えではないといえるの? あなたもあちらの組織から切り捨てられた人間よね」
『これは手厳しい』
傲慢な蒼い瞳が、偽りを見逃さぬよう厳しく画面越しに相手を見つめる。
男もそれは承知のうえだ。
『では、我々を見捨てますか? それとも、コネクションに差し出しますか? どちらにしろ、あなたが我々を支援し、情報をリークしていたことが明らかになってしまいますが。それでもかまいませんか?』
女の体が震えた。
ありえない本拠地での襲撃。それを可能にしたのは女の協力だった。それがコネクションに知られれば、女もただではすまない。
『あなたは我々を裏切れない。後戻りはできないのですよ、ミズ。我々を支援してください。そうすれば、必ずやあなたの望みはかなえましょう』
それは脅迫だった。自分達は一蓮托生なのだと。断れば、真実を暴露してやると。
女の瞳に一瞬嘲りが走った。
「あの男を殺してくれるの?」
『もちろんです、ミズ』
「あの時、あの男を標的にしていても、失敗したでしょうね。それでも、やれるの?」
女は嘲笑を浮かべた。
『弁解させていただければ、あの時ならシールドもないはずだとおっしゃったのは、ミズです。普通の幹部として扱われていれば……まあ、この話はやめましょう。手強い部下を連れていますが、二十四時間、張り付いているわけではないでしょう。我々とて、後がないのです。クロス・ノーマンを殺れなければ、帰るところがありません』
画面の男はクロスによって大打撃を受けたという。その失態の責任を問われ、クロス暗殺を命じられたのだそうだ。
「分かったわ。今までどおり支援してあげる──そのかわり」
『殺しますよ、クロス・ノーマンを』
「そうして」
女は通信を切った。
「──馬鹿にして」
苦々しく女が吐き捨てると、今まですみに控えていた男が女に尋ねた。
「やつらを信用なさるおつもりですか?」
「わたくしがそこまで愚かにみえて? グリード」
裏切りは承知のうえだ。彼らが口にしたとおりのことを実行する気がないのは、明らかだった。クロス・ノーマンという、組織の一部より、その上の大ボスの首の方が手土産にはいいだろう。
分かっていて、騙されたふりをしたのは、相手に油断させるため。
「いえ、お嬢様」
女は苦笑を閃かせた。
「あなたは、いつまでもわたくしをそう呼ぶのね」
口調はむしろ親しげだ。
「お嬢様は、お嬢様ですから」
男は嫁ぐとき、女の父親の組織から女についてきた者だ。政略結婚だった。女と父親の組織の連絡役として、彼女の夫ではなく、彼女自身に仕えるために男はいる。
いつまでも「お嬢様」と呼ぶのは、男の中ではいつまでも彼女が昔のままだからだ。
「グリード、おまえはわたくしに仕えているのよね」
「はい。お嬢様」
「おまえ、わたくしのためなら、命をかけられる?」
「はい。お嬢様」
「コネクションを裏切ることになっても?」
「はい。お嬢様」
グリードの返答はよどみない。
女は満足げに微笑んだ。
「殺して」
女は歌うように続けた。
「わたくしを騙したものも、あの男も。彼らはもう使えないわ。組織に糸を掴まれる前に始末して。ついでにあの男も始末して、彼らの仕業にしてしまいなさい」
女はことの困難さを認識していないかのように、命じた。
彼らとて、こちらの反撃は想定済みだろう。ましてクロス・ノーマンを始末する困難さは言い尽くしがたい。
だが、必要なことでもある。
ほうっておいて、彼らが組織に捕縛された場合、こちらとの関係がばれる。そうなれば、彼女もただではすまない。全ての証拠を消してしまえば、知らぬ存ぜぬで押し通せる。
クロスのことも、彼らのせいにしてしまえば、彼女に疑惑はかからない。
たとえそれがどんなに困難であろうとも、男は彼女のために尽くす。
彼女が彼を必要とし、頼る。それは男にとって、どれほど喜ばしいことであるか。
だから、男は答える。彼女の望む答えを。
「はい。お嬢様」
男は彼女の前に跪き、その手をとって甲にくちづけた。
凍りついたようなその表情からは、あらゆる感情が抜け落ちていた。
女は満足そうに微笑んだ。
「頼んだわよ、グリード。あなたしか、信じられないの」
「お任せください、お嬢様」
調べはすぐについた。
問題の男達は『サザンクロス』の戦闘記録に引っかかった。コトウでの『サモナ』コネクションとの戦闘。その下っ端だ。
マドゥコネクションが調べ上げたデータベースで直接の上司を調べれば「ウィリス」という名前が出てきた。
クロスの唇が笑いの形に歪む。怖いものを含んだ、壮絶な笑みだった。
「こいつが出てくるとはな……」
シェードカオンにおいて拠点を持たなかったクロスに提供されたのは、皮肉なことに『グランティア』の施設だった。
古風な館に見せかけた外見とは裏腹に、内部はハイテクの塊だ。
執務室にした部屋の端末にそれが映ったとき、クロスとスワロウから殺気にも似た怒気が放たれた。
事情を知らないロッドが脅えたほどだ。
ウィリスは正体不明の敵に幹部のほとんどを負傷、あるいは死亡させられ、戦闘力ががた落ちしたさい、その隙をついて襲撃してきたコネクションのひとつの幹部だ。
このときはクロスが残りの全部隊を指揮し、かろうじて撃退した。
殲滅させることもできたのだが、こちら側のダメージと、別の組織への備えから、深追いせず逃がしたのだ。
クロスは、このときの判断を後に悔やむことになる。
表面的にはそうなっているが、実はギルバート・マドゥを唆し、『グランティア』に『サザンクロス』を襲わせた張本人だ。
結果的にマリオネットとヴィオを死なせ、スワロウやリッパー達幹部を負傷させた仇。
退散させた後、意識を取り戻したスワロウの証言でそのことを知ったクロスの怒りは凄まじいものだった。
『今ね、こいつ、行方不明。ボスとの戦いで、ほぼ組織壊滅しちゃったでしょ? そのせいじゃない? 資料送るからね~』
遠方からの通信の中でリッパーが鮮やかに笑い、資料のデータが送られた。
リッパーからの追跡調査で、ウィリスが姿を消していることが分かった。元の街は『サモナ』の別の幹部が仕切っているらしい。
ひとつの街の──ウィリスが率いていた組織──クロスとの戦闘により数はそれほどない──人員ごと消えている。
「あんたに追い払われて、その責任を取らされたってところか」
「殺してやればよかった」
クロスの手の中で煙草がへし折れた。
恐る恐るロッドが口出しした。
「多分、この組織単位で動いていますね。本命がどこかにいるということですか」
「手土産がなきゃ、コネクションには戻れねえからな」
あの場にいた誰かを殺せていれば、今頃堂々とコネクションに舞い戻っていただろう。それを阻止されたからには、他のなにかがいる。手ぶらで『サモナ』に帰れば、見せしめの処刑が待っている。
「とりあえず、分かっているメンバーの顔写真を宿泊施設に回せ──無駄だと思うがな」
「無駄、とは?」
「いくら何でも数十人単位の団体さんが泊まってりゃ、目立たないわけがない。特攻要員のあたりもなかったろうが──誰かが匿ってやがる」
クロスは持っていないが、コネクションの幹部ともなれば、シェードカオンに別宅や専用の拠点を持っている。おそらくはそこに潜んでいるものと考えて間違いない。
「……ボスに顔写真を回してもらいます」
アントが端末を操作した。アントはシェードカオンで襲撃事件があったことにショックを受けているようだった。
シェードカオンの宿泊施設のほとんどがアレクサンダーの支配下にある。手配するのは簡単だ。
「しかし、匿われてますかね? 拠点を持つような幹部はあの場にいたものがほとんどで、自分も襲われたんですよ?」
アントが放り出したのではないか言い出し、クロスが鼻で笑った。
「だから、時間との勝負だ。裏切り者が、こいつらをただ放り出すと思うか?」
「まさか。自分が裏切り者だっていう、生き証人だぜ。俺なら、口を塞ぐね」
スワロウが即答する。
ただ放り出せば、すぐにコネクションにつかまる。そこで取引として裏切り者の名を出すかもしれない。
そんな危険を誰が犯すというのか。
「逆に言えば、そいつらが始末される前に、こっちが尻尾を掴まなきゃならねえ。ロッド、製品の方はまだか?」
「正規に追えるほうは追ってます。今のところ、裏には流れていません。今日中には判明します」
「そうか」
クロスはしばらく考えた後、手持ちの記憶媒体に資料をコピーした。それを手に立ち上がる。
「大ボスに報告に行く。アポを取っておいてくれ」
アントとロッドは事情を知らない。ギルバート・マドゥと協力関係にあった『サモナ』の幹部が張本人であることは、極秘で行われなければならない。
「スワロウ」
クロスは事情を知るスワロウを護衛に指名し、スワロウは一度頷き、クロスの後を追った。
ロッドの手元の端末が着信音を立てた。
「待ってください。製品のほうの調べがついたようです」
「……それとあわせて報告するべきだろうな。購入したのは誰だ?」
「待ってください」
ロッドが端末を操作した。
報告書にざっと目を通したロッドの顔色が、みるみる青ざめていった。
その様子があまりに急激だったので、クロスは画面をのぞきこんだ。
「誰だ? 聞かない名前だな」
クロスの記憶している幹部にはいない名前だった。
「……表には出てこない人です」
ロッドは記憶媒体にデータを移すと、そっとクロスに耳打ちした。
それを聞いたクロスの顔が、厳しさを増した。
「それは本当か?」
「はい。購入したのは、この方でも、上の指示があったものと思われます。正直、相手が悪すぎて、どうしたらいいか……」
クロスは記憶媒体を受け取った。
「指示を仰ぐ。大ボスに判断してもらわなければなるまい」
「私もいきます」
クロスはスワロウとロッドをつれて、大ボスのいる本宅へ向かった。
女はヒステリックに通信相手を怒鳴った。
「あなたはあの男を葬ると言ったわ! なのに、襲われたのはわたくしたちよ! あなた達は、あの男を殺すどころか、わたくし達の命を狙い──わたくし達はあの男に救われたのよ! あの男に! こんな屈辱はないわ!」
『ミズ、それはこちらの手違いです。お許しください。選んだ要員が勝手に目標を変更してしまったのです。我々はあなた方を傷つける意図はなかったのです』
画面の中の男は白々しくも謝罪した。
『どちらにしろ、彼らは生きて帰れない、いわば切り捨てられた人間でした。ならば、少しでも大物をと、思ったのではないでしょうか』
「それが、あなたの考えではないといえるの? あなたもあちらの組織から切り捨てられた人間よね」
『これは手厳しい』
傲慢な蒼い瞳が、偽りを見逃さぬよう厳しく画面越しに相手を見つめる。
男もそれは承知のうえだ。
『では、我々を見捨てますか? それとも、コネクションに差し出しますか? どちらにしろ、あなたが我々を支援し、情報をリークしていたことが明らかになってしまいますが。それでもかまいませんか?』
女の体が震えた。
ありえない本拠地での襲撃。それを可能にしたのは女の協力だった。それがコネクションに知られれば、女もただではすまない。
『あなたは我々を裏切れない。後戻りはできないのですよ、ミズ。我々を支援してください。そうすれば、必ずやあなたの望みはかなえましょう』
それは脅迫だった。自分達は一蓮托生なのだと。断れば、真実を暴露してやると。
女の瞳に一瞬嘲りが走った。
「あの男を殺してくれるの?」
『もちろんです、ミズ』
「あの時、あの男を標的にしていても、失敗したでしょうね。それでも、やれるの?」
女は嘲笑を浮かべた。
『弁解させていただければ、あの時ならシールドもないはずだとおっしゃったのは、ミズです。普通の幹部として扱われていれば……まあ、この話はやめましょう。手強い部下を連れていますが、二十四時間、張り付いているわけではないでしょう。我々とて、後がないのです。クロス・ノーマンを殺れなければ、帰るところがありません』
画面の男はクロスによって大打撃を受けたという。その失態の責任を問われ、クロス暗殺を命じられたのだそうだ。
「分かったわ。今までどおり支援してあげる──そのかわり」
『殺しますよ、クロス・ノーマンを』
「そうして」
女は通信を切った。
「──馬鹿にして」
苦々しく女が吐き捨てると、今まですみに控えていた男が女に尋ねた。
「やつらを信用なさるおつもりですか?」
「わたくしがそこまで愚かにみえて? グリード」
裏切りは承知のうえだ。彼らが口にしたとおりのことを実行する気がないのは、明らかだった。クロス・ノーマンという、組織の一部より、その上の大ボスの首の方が手土産にはいいだろう。
分かっていて、騙されたふりをしたのは、相手に油断させるため。
「いえ、お嬢様」
女は苦笑を閃かせた。
「あなたは、いつまでもわたくしをそう呼ぶのね」
口調はむしろ親しげだ。
「お嬢様は、お嬢様ですから」
男は嫁ぐとき、女の父親の組織から女についてきた者だ。政略結婚だった。女と父親の組織の連絡役として、彼女の夫ではなく、彼女自身に仕えるために男はいる。
いつまでも「お嬢様」と呼ぶのは、男の中ではいつまでも彼女が昔のままだからだ。
「グリード、おまえはわたくしに仕えているのよね」
「はい。お嬢様」
「おまえ、わたくしのためなら、命をかけられる?」
「はい。お嬢様」
「コネクションを裏切ることになっても?」
「はい。お嬢様」
グリードの返答はよどみない。
女は満足げに微笑んだ。
「殺して」
女は歌うように続けた。
「わたくしを騙したものも、あの男も。彼らはもう使えないわ。組織に糸を掴まれる前に始末して。ついでにあの男も始末して、彼らの仕業にしてしまいなさい」
女はことの困難さを認識していないかのように、命じた。
彼らとて、こちらの反撃は想定済みだろう。ましてクロス・ノーマンを始末する困難さは言い尽くしがたい。
だが、必要なことでもある。
ほうっておいて、彼らが組織に捕縛された場合、こちらとの関係がばれる。そうなれば、彼女もただではすまない。全ての証拠を消してしまえば、知らぬ存ぜぬで押し通せる。
クロスのことも、彼らのせいにしてしまえば、彼女に疑惑はかからない。
たとえそれがどんなに困難であろうとも、男は彼女のために尽くす。
彼女が彼を必要とし、頼る。それは男にとって、どれほど喜ばしいことであるか。
だから、男は答える。彼女の望む答えを。
「はい。お嬢様」
男は彼女の前に跪き、その手をとって甲にくちづけた。
凍りついたようなその表情からは、あらゆる感情が抜け落ちていた。
女は満足そうに微笑んだ。
「頼んだわよ、グリード。あなたしか、信じられないの」
「お任せください、お嬢様」
調べはすぐについた。
問題の男達は『サザンクロス』の戦闘記録に引っかかった。コトウでの『サモナ』コネクションとの戦闘。その下っ端だ。
マドゥコネクションが調べ上げたデータベースで直接の上司を調べれば「ウィリス」という名前が出てきた。
クロスの唇が笑いの形に歪む。怖いものを含んだ、壮絶な笑みだった。
「こいつが出てくるとはな……」
シェードカオンにおいて拠点を持たなかったクロスに提供されたのは、皮肉なことに『グランティア』の施設だった。
古風な館に見せかけた外見とは裏腹に、内部はハイテクの塊だ。
執務室にした部屋の端末にそれが映ったとき、クロスとスワロウから殺気にも似た怒気が放たれた。
事情を知らないロッドが脅えたほどだ。
ウィリスは正体不明の敵に幹部のほとんどを負傷、あるいは死亡させられ、戦闘力ががた落ちしたさい、その隙をついて襲撃してきたコネクションのひとつの幹部だ。
このときはクロスが残りの全部隊を指揮し、かろうじて撃退した。
殲滅させることもできたのだが、こちら側のダメージと、別の組織への備えから、深追いせず逃がしたのだ。
クロスは、このときの判断を後に悔やむことになる。
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退散させた後、意識を取り戻したスワロウの証言でそのことを知ったクロスの怒りは凄まじいものだった。
『今ね、こいつ、行方不明。ボスとの戦いで、ほぼ組織壊滅しちゃったでしょ? そのせいじゃない? 資料送るからね~』
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ひとつの街の──ウィリスが率いていた組織──クロスとの戦闘により数はそれほどない──人員ごと消えている。
「あんたに追い払われて、その責任を取らされたってところか」
「殺してやればよかった」
クロスの手の中で煙草がへし折れた。
恐る恐るロッドが口出しした。
「多分、この組織単位で動いていますね。本命がどこかにいるということですか」
「手土産がなきゃ、コネクションには戻れねえからな」
あの場にいた誰かを殺せていれば、今頃堂々とコネクションに舞い戻っていただろう。それを阻止されたからには、他のなにかがいる。手ぶらで『サモナ』に帰れば、見せしめの処刑が待っている。
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「無駄、とは?」
「いくら何でも数十人単位の団体さんが泊まってりゃ、目立たないわけがない。特攻要員のあたりもなかったろうが──誰かが匿ってやがる」
クロスは持っていないが、コネクションの幹部ともなれば、シェードカオンに別宅や専用の拠点を持っている。おそらくはそこに潜んでいるものと考えて間違いない。
「……ボスに顔写真を回してもらいます」
アントが端末を操作した。アントはシェードカオンで襲撃事件があったことにショックを受けているようだった。
シェードカオンの宿泊施設のほとんどがアレクサンダーの支配下にある。手配するのは簡単だ。
「しかし、匿われてますかね? 拠点を持つような幹部はあの場にいたものがほとんどで、自分も襲われたんですよ?」
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スワロウが即答する。
ただ放り出せば、すぐにコネクションにつかまる。そこで取引として裏切り者の名を出すかもしれない。
そんな危険を誰が犯すというのか。
「逆に言えば、そいつらが始末される前に、こっちが尻尾を掴まなきゃならねえ。ロッド、製品の方はまだか?」
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「そうか」
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アントとロッドは事情を知らない。ギルバート・マドゥと協力関係にあった『サモナ』の幹部が張本人であることは、極秘で行われなければならない。
「スワロウ」
クロスは事情を知るスワロウを護衛に指名し、スワロウは一度頷き、クロスの後を追った。
ロッドの手元の端末が着信音を立てた。
「待ってください。製品のほうの調べがついたようです」
「……それとあわせて報告するべきだろうな。購入したのは誰だ?」
「待ってください」
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「……表には出てこない人です」
ロッドは記憶媒体にデータを移すと、そっとクロスに耳打ちした。
それを聞いたクロスの顔が、厳しさを増した。
「それは本当か?」
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