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「……っ!」
勢いよく瞼を開けた。はっはっと息荒く吐き出し呼吸をする。何度か繰り返し、気持ちを落ち着かせるように、手の平で目元を擦り押さえる。
夢か。
夢か現実かわからないような生々しい夢を見る。いつの頃かは忘れたが、決して忘れないように刻まれているのだろうか。大きく息を吐き出し落ち着かせたところで身を起こす。
「……」
とにかく起きようと、身支度を調える。着替えながら首元に手をうやる。恐らくはこの夢が関係があるのかと思っているが、啓介は首元が弱い。
ケイ。
啓介。
その夢で自分はケイと呼ばれていた。今の名は啓介。何かの縁があるのだろうと思う。夢の自分と同じ、噛み跡のないうなじに手をやり撫でる。ため息を吐き出しながら着替えを進めた。
今日は入社式だ。大学を卒業し、今日から勤めに出る。真新しいスーツに身を包み、朝食もそこそこに家を出る。
自分には分不相応なまでに大きな会社だ。ここが今日から啓介の職場になる。一度大きく深呼吸し、止めていた足を進めた。
両親はあの夢のように早世している。残された貯金を崩し、バイトをしながら大学を卒業した。
オメガだから――。
そう言われないよう必死に生きてきた。運命なんてものは信じていない。夢の彼は運命を信じ、恐らくあのまま亡くなったと思う。彼は恐らくは自分だろう。
人を信じたからこその惨めな結果だ。それならば自分で切り開く。そう思い今まで生きてきたが、反動は啓介の心に歪みを生んでいる。
入社式という広い会場で、段々空気が薄くなるのを感じる。大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせながら、その場を過ごす。
正直話の内容は全く頭に残っていない。ただこの時間が早く過ぎるように祈っていた。
「はっ……はっ……」
会場から出ると、人混みを避けるよう狭い廊下に向かった。どこを歩いているのかわからないが、とにかく人混みから抜け出したい。
あの夢の瞬間、周囲にはたくさんの人たちがいて囲まれていた。何の色も感じられない彼らの瞳が、記憶の片隅に植え付けられている。疲弊しながら、必死に振りほどこうと生きてきた。
「はっ……はっ……大、丈夫、大丈夫」
自分に言い聞かせた。
どのくらいの時間が経過したのか。ようやく息が整い立ち上がったとき、光の道が狭い廊下に見え、目を見開いた。
この光景には見覚えがある。
思い出したくもない光景で、絶望に陥れた光の道が見えている。その先を見たくはないが目が離せない。
「君は」
光の道の先にいる彼の声が聞こえ、啓介は思わず目を瞑る。
逃げ出したい。視界に入る彼の姿が、夢の彼に似ているように感じられ胸が苦しい。夢の中では慌てたように彼が駈け寄っていたが、真実はわからない。その先の夢は見たことはばく、続きはないのだと思っている。
けれども現実は、先が用意されていたかのように進んでいる。ガンガンと頭の中で警鐘が鳴る。これはよくないことだと、脳内で警鐘が鳴り続けている。
同時にどんどん彼の姿が近づいてきて動けない。逃げたいのに逃げられず、足下が地面に縫い付けられたかのように動けない。
「!」
その瞬間彼に抱きしめられ、ふわりしたと甘い匂いを感じる。どこか懐かしく感じるも思い出せない。
この匂いを、俺は知っている?
知らないはずの匂いに既視感を感じ狼狽える。抱きしめられると体中の力が抜けていく。蕩ける匂いに身を任せたくなってしまう。
啓介の耳に、熱い吐息と共に彼の声が流れ込んでくる。
「君だ。俺の運命」
その瞬間、思い切り彼の胸を押した。けれどもびくともせず慌てる。
「離れ、てっ」
「何故?」
「ダメだ」
「何故?」
目を瞑り頭を振りながら、震える手で鼻と口元を押さえる。これ以上魅惑的な匂いが自分の中に入らないよう、必死に押さえるが、頭の芯が蕩けていく。
勢いよく瞼を開けた。はっはっと息荒く吐き出し呼吸をする。何度か繰り返し、気持ちを落ち着かせるように、手の平で目元を擦り押さえる。
夢か。
夢か現実かわからないような生々しい夢を見る。いつの頃かは忘れたが、決して忘れないように刻まれているのだろうか。大きく息を吐き出し落ち着かせたところで身を起こす。
「……」
とにかく起きようと、身支度を調える。着替えながら首元に手をうやる。恐らくはこの夢が関係があるのかと思っているが、啓介は首元が弱い。
ケイ。
啓介。
その夢で自分はケイと呼ばれていた。今の名は啓介。何かの縁があるのだろうと思う。夢の自分と同じ、噛み跡のないうなじに手をやり撫でる。ため息を吐き出しながら着替えを進めた。
今日は入社式だ。大学を卒業し、今日から勤めに出る。真新しいスーツに身を包み、朝食もそこそこに家を出る。
自分には分不相応なまでに大きな会社だ。ここが今日から啓介の職場になる。一度大きく深呼吸し、止めていた足を進めた。
両親はあの夢のように早世している。残された貯金を崩し、バイトをしながら大学を卒業した。
オメガだから――。
そう言われないよう必死に生きてきた。運命なんてものは信じていない。夢の彼は運命を信じ、恐らくあのまま亡くなったと思う。彼は恐らくは自分だろう。
人を信じたからこその惨めな結果だ。それならば自分で切り開く。そう思い今まで生きてきたが、反動は啓介の心に歪みを生んでいる。
入社式という広い会場で、段々空気が薄くなるのを感じる。大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせながら、その場を過ごす。
正直話の内容は全く頭に残っていない。ただこの時間が早く過ぎるように祈っていた。
「はっ……はっ……」
会場から出ると、人混みを避けるよう狭い廊下に向かった。どこを歩いているのかわからないが、とにかく人混みから抜け出したい。
あの夢の瞬間、周囲にはたくさんの人たちがいて囲まれていた。何の色も感じられない彼らの瞳が、記憶の片隅に植え付けられている。疲弊しながら、必死に振りほどこうと生きてきた。
「はっ……はっ……大、丈夫、大丈夫」
自分に言い聞かせた。
どのくらいの時間が経過したのか。ようやく息が整い立ち上がったとき、光の道が狭い廊下に見え、目を見開いた。
この光景には見覚えがある。
思い出したくもない光景で、絶望に陥れた光の道が見えている。その先を見たくはないが目が離せない。
「君は」
光の道の先にいる彼の声が聞こえ、啓介は思わず目を瞑る。
逃げ出したい。視界に入る彼の姿が、夢の彼に似ているように感じられ胸が苦しい。夢の中では慌てたように彼が駈け寄っていたが、真実はわからない。その先の夢は見たことはばく、続きはないのだと思っている。
けれども現実は、先が用意されていたかのように進んでいる。ガンガンと頭の中で警鐘が鳴る。これはよくないことだと、脳内で警鐘が鳴り続けている。
同時にどんどん彼の姿が近づいてきて動けない。逃げたいのに逃げられず、足下が地面に縫い付けられたかのように動けない。
「!」
その瞬間彼に抱きしめられ、ふわりしたと甘い匂いを感じる。どこか懐かしく感じるも思い出せない。
この匂いを、俺は知っている?
知らないはずの匂いに既視感を感じ狼狽える。抱きしめられると体中の力が抜けていく。蕩ける匂いに身を任せたくなってしまう。
啓介の耳に、熱い吐息と共に彼の声が流れ込んでくる。
「君だ。俺の運命」
その瞬間、思い切り彼の胸を押した。けれどもびくともせず慌てる。
「離れ、てっ」
「何故?」
「ダメだ」
「何故?」
目を瞑り頭を振りながら、震える手で鼻と口元を押さえる。これ以上魅惑的な匂いが自分の中に入らないよう、必死に押さえるが、頭の芯が蕩けていく。
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