学年で1番のイケメンに彼女を寝取られた。そしたら、イケメンの美少女友達が縁を切った

白金豪

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第15話 通知

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「ただいま」

 恒例通り誰もいない一軒家の自宅。当然、誰からも返事がない。幼少期の頃はあった返事の挨拶。今は皆無だ。

 帰りの挨拶だけ行い、玄関で靴を脱ぎ、丁寧に靴を整え、自宅の床に足を踏み入れる。

 登り慣れた階段を上がり、自身の部屋に向かう。両足を使い、1段1段と階段を上がる。

 20段ほど登り、2階に到着する。自然と、両足が2階の床に載る。

 自室の目の前まで足を動かし、数秒で到着する。颯の部屋は階段のすぐ近所だった。

 自室のドアノブを捻り、ドアをすべて開放してから、入室する。

 自室の空間に身を置くと、左手でドアノブを掴み、部屋のドアを閉める。

 数秒後、ガチャッとドアの閉まる音が、室内に生じる。颯の部屋が密閉空間になった。その証拠に、窓は何処も空いていない。2箇所あるが、すべて硬く閉じる。

「はぁ~~。何か疲れた」

 大きなため息と共にぼやき、教科書やノートの並ぶ勉強机に学生カバンを置き、颯はベッドに寝転がる。体勢は仰向けを取る。

 柔らかく弾力もあり、すべてを快く受け止める、掛け布団の感触が、颯の背中と腰に、満遍なく伝わる。実にリラックスには最適だ。

 見慣れた天井を認識する。天井は橙色のような白のような色だった。相変わらず、どちらの色か判別がつかない。何年経っても分からない。

 しばらく天井を見つめ続けた。自然と瞼が閉じ、眠りに落ちると考えたからだ。

 だが、中々に眠気が生じない。目はぱっちりと開く。

 身体に疲労は溜まる。それは間違いない。だが、身体の疲労に背き、瞼は重たくならない。平常時か普段以上に、瞼は軽い。重みなどゼロに近い。

 どうやら眠れないようだ。

 そこで、数少ない自室の家具である本棚に、颯は視線を向ける。器用に瞳だけ横にずらし、ラノベや自己啓発書が多く並ぶ本棚を、視野に収める。

 颯の意識は、自己啓発書ではなく、ラノベに集中する。今は自己啓発書を読む気分は起きない。

 本棚には50冊ほどのラノベがある。全部がシリーズものだ。すべてのラノベには、傷1つない帯がある。

 颯はネット小説を読むことが趣味である。そして、ネット小説から書籍化したラノベを集めることも趣味である。そのため、本棚に並ぶラノベは、すべてネット小説からデビューした書籍である。颯はネット小説からデビューした作品しか関心が無い。

 ラノベを手に立ち上がろうと試みる。背中が数センチほど浮きかけた。

 だが、ギリギリのところで立ち止まる。その前にスマートフォンの通知の確認をする必要があった。

 ベッドから起き上がり、颯は学生カバンからスマートフォンを取り出す。

 聖堂高校では、放課後を除き、スマートフォンの使用は禁止だ。

 もちろんルールを破り、休み時間や昼休みなどに、教員の目を搔い潜って、スマートフォンを利用する生徒達は、多く存在する。

 一方、颯は弧本的にルールを順守し、放課後までスマートフォンを使用しない。

 ルールを守らなければない。こういった観念に囚われているわけではない。校内でスマートフォンを使用し、教員に見つかり、没収される方が、颯にとっては面倒な出来事だ。だから、必要な時以外は、マナーモードに設定し、基本的に学生カバンに、スマートフォンを仕舞う。

 マナーモード状態のスマートフォンの電源を起動する。画面に光が灯る。

「むっ。なんだこれ」

 ロック画面が出現したと同時に、瞬時に颯は顔をしかめる。明らかに不快感を露にする。

 スマートフォンの画面には、何10件ものメッセージSNSからの通知が届く。SNSの名称はミインである。我が国の人間が最も使用するSNSである。この事実は、統計上のデータから導かれた。

 メッセージだけでなく、電話も掛かっていた。メッセージと電話を合わせて、100件以上の通知はくだらないだろう。

 大量に溜まった通知を、颯は自身の指でスクロールする。すべてが、別れたくないことを訴える内容だった。すべてが同じ内容だった。

 これだけの通知に、颯が気づかなかったのは、マナーモードに設定していたからだろう。そのため、通知音が鳴らず、振動も起きなかった。それは気づかなくても当然だ。

 突然、新着の通知がロック画面に更新される。

 内容を確認すると、何度目かの聖羅からの電話だった。

「面倒くさ。それに通知ばかり煩わしいな」

 素直な気持ちを吐露すると、颯はミインのアプリを開く。

 ミインのアイコンと共に、アプリが起動する。

 アプリの中に登録される聖羅のデータを指でタップすると、ブロックする。聖羅の名前が、ミインのホーム欄から消えた。

 先ほどまで更新されていた通知が、急に治まる。スイッチが消えたように、通知は止んだ。

 ついでに、ミインのトーク欄からも、聖羅のデータを削除する。150件も溜まっていた通知がすべて消え失せる。

「よし! これで害悪は俺に危害を加えない。少なくとも、スマートフォンでは加えられない」

 満足したように、笑みを溢すと、颯は再びベッドに身を委ねた。今度は寝転がるわけではなく、横たわった。

 一方、聖羅はというと。

「どうして! どうして!! どうして天音君からの返信が来ないの!! 何度も! 何度もメッセージや電話を寄越してるのに~~」

 自宅の自室内で、泣き叫ぶように、聖羅は大きな声で嘆いていた。聖羅の悲痛な叫び声が、虚しく響く。ただひたすらベッドの上で、嘆き続ける。颯と聖羅とでは、ベッドの上で、ここまで行動の差が表れる。

 だが、残酷にも、颯からの返信はいつまで待っても訪れなかった。なぜなら、既に聖羅のミインは颯によってブロックされたから。

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