学年で1番のイケメンに彼女を寝取られた。そしたら、イケメンの美少女友達が縁を切った

白金豪

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第17話 石井の場合

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「ねぇねぇ石井君! 伊藤さんっていう女子を寝取ったのは本当なの? 小耳に挟んだんだけど。しかも、伊藤さんって他人の彼女さんだよね? 」

「私も! 詳しく聞かせて欲しい! 」

 時刻は8時20分。

 颯の隣のクラス。2年5組の教室において、複数人の女子達が、自席に座る石井に問い詰める。

「え、えっとだな…」

 石井も聖羅と似た境遇に立っていた。石井が聖羅を寝取った情報を獲得した、女子達が、石井の席の周りに群がる。その中の大半は、石井をカッコいいと思う女子達で占める。ガチ恋もいるだろう。

 だが、全員に共通する欲求が1つ存在する。それはシンプルだ。皆が情報の正誤を求めていることだ。

 情報が、正しいのか? それとも誤っているのか?

 それだけを確かめたいだけだ。

「なあ、例の情報に関する正誤を確かめたいのか? 」

 今まで静観していた3人のうちの1人。遥希が席から立ち上がり、騒がしい石井の席まで足を運ぶ。遥希と石井の席は結構に距離がある。

「う、うん。それはそうだよ」

「八雲さんは、私達にとって有益な情報を持ってるの? 」

 石井に群がる女子達は、遥希に視線を集める。今までの視線が石井から遥希へ推移する。

「ああ。あるよ。立派な確固たる証拠を示す情報がね! 」

 不敵な笑みを作り、遥希は、ブレザーのポケットからスマートフォンを取り出す。

 ちなみに、遥希の行為は、立派な校則違反である。繰り返しにはなるが、聖堂高校では、放課後以外に、スマートフォンの利用は禁止だ。教員に見つかれば、一瞬で没収される。きついお説教も受ける羽目になる。

 スマートフォンを指で操作し、遥希はスマートフォンの画面を、女子達に向ける。

 スマートフォンの画面には、石井と聖羅が仲睦まじく身を寄せ合い、ラブホの入り口を抜ける写真が映る。

 当然、女子達はスマートフォンの画面に注視する。覗き込むように見つめる。驚愕したように、全員が大きく目を見開く。

「な、なんのつもりだ遥希! やめろ! そんな写真を見せびらかすな!! 」

 席から勢いよく立ち上がり、取り乱した顔で、石井が、遥希からスマートフォンを奪い取ろうと試みる。

「おっと! 危ない危ない」

 軽い身のこなしで、遥希は石井の突進を回避する。

「おっ。おわっと!? 」

 華麗に突進を躱された石井は、派手に教室の床に転ぶ。そのまま勢いを殺せず、誰も座っていない机に衝突する。頭を強くぶつける。

「いってえ~~」

 石井の悲鳴のように叫ぶ声が、教室全体に拡がる。石井は痛みを和らげるように、大きく顔を歪め、両手で頭の頭頂部を押さえる。

「さて、お前達はどう思う? スマートフォンに映る写真を見た直後の奴の慌てよう。明らかに怪しくないか? そこに無様に寝転がる奴の先ほどの行動が、何よりも、その画像の信憑性を証明してないか? 」

 情けない姿の石井を他所に、遥希は女子達に問う。まるで試すかのように。

「た、確かに。この写真が本物でなければ、あんなに動揺しないよね」

「う、うん。さっき、必死に八雲さんからスマホを奪い取ろうとしたしね」

 納得したように顔を形成し、女子達は何度も頷く。遥希の言い分には説得力があったようだ。時おり、スマートフォンが表示する写真に目も向ける。

 数秒後。女子達が取った行動は1つだった。

「あの写真は本物ってことでいいんだよね? 」

「私ショックかも。何だか裏切られた気分」

「石井君は寝取るなんて愚かな行為しないと思ってた」

 依然として転んだ状態の石井の傍まで駆け寄ると、女子達は続々と言葉をぶつける。各々が好き放題に言いたい言葉を口にする。

 複数の女子には、顔に失望の感情が露見する。明らかに落胆が見える。

「ちょ、ちょっと。待ってな。1回落ち着こう。なっ! 」

 両手を頭に添えたまま、痛みに耐えるように、片目を瞑りながら、石井は女子達を宥める。

 しかし、効果はなさそうだ。女子達の表情は険しくなる。

「ねぇねぇ。八雲ちゃんのスマートフォンに映った写真が気になる人いないかな~。うちも同じ写真持ってるよ~」

「愛海も持ってるし! 興味ある人は、愛海か瑞貴の元に集まれ~」

 石井に追い打ちを掛けるように、瑞貴と愛海が、教室に身を置くクラスメイトに呼び掛ける。男女関係なく呼び掛ける。

 男女関係なく、多くのクラスメイト達が、瑞貴と愛海の元に押し寄せた。皆が瑞貴と愛海の所有する例の写真を求めた。

「お、おい! お前達~~! 何してるんだ! やめろ~~」

 カオスな状況に直面し、必死な形相で、石井は叫び声を上げる。

 だが、瑞貴や愛海は止まらない。当然、クラスメイト達も止まらない。人の流れが瑞貴と愛海の周囲に押し寄せる。

「ふん。ざまぁみろ」

 一方、豊満な胸の前で両腕をクロスし、見下した態度で、遥希は鼻で笑う。軽視した先には、必死に叫び続ける石井の姿があった。

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