学年で1番のイケメンに彼女を寝取られた。そしたら、イケメンの美少女友達が縁を切った

白金豪

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第22話 誘い

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 放課後。聖羅と石井が強制的に帰宅した聖堂高校。

 クラスメイト達の会話声で喧騒な教室を抜け、後方の戸を介し、颯は廊下に足を踏み入れる。

 廊下にも、複数の生徒達が、その場に滞在する。教室ほどではないが、廊下も、それなりに騒がしい。

 男女共に、話が盛り上がる。クラスが異なる生徒達も、関係なく、楽しく会話を交わし、交流する。

 そんな右方左方から、楽しそうな男女の声が、鼓膜に伝わる場所にどっぷり浸かり、颯は普段通りのスピードで、廊下の床の上で歩を進める。廊下の床は様々な生徒達に踏み荒らされ、所々に汚れがこびり付く。

 雑談に傾倒する生徒の横を通過し、校舎の1階に位置する昇降口を目的地として設定する。

 クラスの教室の最寄り階段に到着し、1段1段と順に下る。階段は廊下に比べて、静寂な時が流れる。階段と階段の間の踊り場に、身を置く生徒も現時点では、存在しない。

 だが、多様な生徒達の声が混じった騒音は、未だに存在感を発揮する。そのため、先ほどよりも脆弱にしろ、耳に響く騒音は続く。

 歩き続けること数分。目的地の昇降口に到着する。

 帰りのホームルームが終了し、それほど時間は経過していない。そのため、いつも通り、昇降口までは、帰宅準備の整った生徒達で溢れる。この場も廊下と同様に、騒々しい。学校の授業から解放され、一同は嬉しそうだ。気持ちが、声のボリュームとして現れる。

 普段と同じように、自身専用の靴箱を開け、普段靴を取り出す。そのまま、今朝から履き続けた校内用スリッパから、普段靴に履き替える。普段靴は、スニーカーである。色は茶色を基調とする。

 新たに靴紐を結ばず、ズボッと両足を靴に差し込む。靴にフィットするように、両足が靴に収まる。特に踵《かかと》を地面に打ちつけずに、靴を履き終えた。

 次は学校の正門を目的地に定める。既に帰路を歩んでいる。

 昇降口前に佇む生徒達の横を通過し、正門に続くアスファルトの道を前進する。自然と、準備に追われる吹奏楽部のメンバーが、颯の視界に入り込む。

 聖堂高校の吹奏楽部は、体育館近くの校内の外で、練習したりもする。音楽室、校内の外など、場所を移して、練習に勤しむイメージだ。

 前進し続け、吹奏楽部のメンバーが、颯の視界から外れる。

 正門が颯の視界に侵入した辺りで、聞き覚えのある声が、颯の鼓膜を撫でる。鼓膜が、反射的に声の主を特定する。人間の感覚器官は優れた機能を所持する。

 音源に視線を走らせる。視界に映る世界が変化する。

「クソ1号とクソ2号が停学期間は3週間らしい」

「そうなんだ~。それにしても停学は甘いね。退学でも良いと思うけど~」

「瑞貴、おっとりした口調で恐ろしいこと言うなし。確かに、愛海も思ったけど」

 遥希・瑞貴・愛海が、上機嫌な様子で会話を交わす。

「「「あっ」」」

 そんな遥希達が、颯の存在を認知する。ほぼ同時に3人の足が止まる。

「やあ天音! 今から帰りか? 」

 お互いに軽い挨拶を交わす。遥希を先頭に、瑞貴と愛海も颯の元に歩み寄る。

「うん。そうだよ」

 颯は言葉を返す。直近には、遥希達の姿がある。

 この美少女3人が石井の元カノ。改めて考えると、とんでもない事実だ。

 こんな美少女達と付き合えた石井に、少なからず嫉妬してしまう。男として敗北した感覚を味わう。

「私達は、これからクソ1号とクソ2号の愚痴について語り合う会を3人で開くんだが、天音も参加するか? 」

「え? そんな会を開く予定なの? それに俺が参加してもいいの? 」

 颯は疑問を抱く。それに、女子3人の中に、自分が混じっていいのか。多少なりとも、不安も感じる。

「構わない。天音は私達と同じで、あのクソ1号と2号による被害者だろ? 瑞貴と愛海も問題ないよな? 」

「うん。うちは歓迎するよ! 」

「天音っちも愛海達と同類なんだから。参加しちゃいなよ!! 」

 遥希の言葉に応じ、瑞貴と愛海は颯を歓迎する。嘘を付いている様子はない。どうやら男子禁制の会ではないようだ。

 胸中において、颯は逡巡した。女子3人、しかも美少女3人の集まる会に参加するのは、気が引けた。

「じゃあ、お言葉に甘えて。その会に参加させてもらおうかな」

 だが、遥希達の厚意を無下にはできなかった。颯は参加の意志を表明した。

「よし! では飲食店に向かうとするか」

「「お~」」

 遥希の音頭を合図に、瑞貴と愛海は片腕を空に向けて上げる。

 こうして、遥希達によって、颯は帰宅途中の寄り道先が決定された。

 そして、颯と遥希達は、共に正門に差し掛かった。

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