学年で1番のイケメンに彼女を寝取られた。そしたら、イケメンの美少女友達が縁を切った

白金豪

文字の大きさ
21 / 37

第21話 問い

しおりを挟む


 担任から呼び出しを喰らい、それ以降、聖羅は教室に帰って来なかった。

 時は進み、6時間目終了後。帰りのホームルーム前の隙間の時間。残り5分ほどで帰りのホームルームが、担任によって開始される時間帯。

 トイレで用を足し、自身のクラスに戻る途中の颯。帰りのホームルームが、まだ始まっていないため、廊下には雑談する生徒達が、複数存在する。大部分が、楽しそうに他者と会話を交わす。

 自身の教室に近づくと、後方の戸付近で、遥希が1人の女子生徒と言葉を交わす。その女子生徒は、今朝、聖羅に初めて声を掛けた人物だった。

 遥希は満足した顔を形成すると、女子生徒との会話を終える。女子生徒は、教室内に吸い込まれる。

 遥希も教室に戻ろうと踵を返す。

「ちょっと待って八雲さん」

 教室に戻ろうとする遥希の背中に、颯が声を掛ける。1つ聞きたい内容があり、遥希に用があった。

「天音か。どうしたんだ? 」

 振り返り、遥希が返答をする。

 遥希を呼び止めた颯は、少し緊張した面持ちを浮かべる。これから聞く内容らを、本当に口にするには、結構な勇気を要したりする。なんせ、遥希に関する話だから。おそらくデリケートな内容だろう。

「単刀直入に聞くけど。伊藤さんに関する情報を流したのは。八雲さんだよね? 」

 周囲に聞かれないように、声を抑え、颯は疑問を投げ掛ける。当たりはつけて、確証も持っていた。だが、証拠を獲得するために、敢えて疑問を投げた。

「…。おぉ~。察しがいいな。正解だ天音」

 とぼけること無く、遥希は真実を伝える。特に周囲を気にした様子は見受けられない。だが、声のトーンは颯と大差ない。

 やはり、この人が犯人だったかと、颯は内心で思う。

「やっぱりそうなんだね。怪しいと思ったよ。それに、情報を流した人物として、八雲さんしか浮かばなかったよ」

 正直な本心を口にする颯。早朝から、颯は遥希が犯人ではないかと、憶測を立てていた。

「そうか。それでどうだ? 私が犯人である事実が天音にだけ明るみに成ったわけだが。幻滅したか? 」

 遥希はどこか楽しげな口調で、遥希は颯に問いかける。その表情からは、悪気は一切感じられない。純粋に知りたがっているようだ。何処となく、颯を試しているようにも見える。

「そ、そんなことはないよ。正直、特に何も感じなかったかな。これは本心だよ」

「そうか」

 納得したように、遥希は両目を閉じる。そのままの状態をしばらくキープする。

 目を閉じるだけでも流石美少女。遥希が目を閉じているだけでも絵になる。

 颯も自然と惹きつけられる。

「それと、もう1つ聞きたいことがあるんだけどいいかな? 」

 颯の聞きたい内容は1つではなかった。もう1つ聞きたいことが存在した。どちらかと言えば、こちらの方が気になっていたりする。こちらの内容においては、当たりすら作れていない。

「いいぞ」

 閉じていた両目をゆっくり開き、遥希は颯を見据える。

 遥希の輝くような水色の瞳が、颯の視野に入り、存在感を放つ。キラキラ光っているように錯覚してしまう。それほど美しい。日本人離れしている。

「石井君の幼馴染の人と宮城愛海って人が口にしていたんだけど。って何なのかな? 」

 緊張や不安を抱いた。

 だが、初めて聞いた時から、心に引っ掛かっていた言葉だ。瑞貴や愛海が口にする。そして、2人が言うには、石井がその約束を破り、友達の縁を切った。つまり、遥希、瑞貴、愛海にとって、重要な約束だったに違いない。

「なるほど。瑞貴と愛海にも既に顔を合わせてる訳か」

「顔を合わせてると言っても、少し会話したレベルだよ」

「そうか。それでどうして約束について聞きたい? 理由が気に掛かるな」

「う~ん。気になるからかな。それだけだよ。大した理由は持ってないよ」

 悩むように首を捻り、颯は嘘偽りない理由を答える。

「わかった。それで約束に関することか。悪いが、天音の要望には応えられない。教える気にならない。天音に問題があるわけではない。私の心の問題だ」

「そっか。それは仕方ないね」

 正直、約束の内容を詳細に知りたかった。好奇心から知りたかった。しかし、これ以上、追及する気は起きない。しつこくしても迷惑だろう。その上、遥希が不快感を味わう可能性もある。

 颯もそこまでは気が回る。人の気持ちを推し量ることが可能な人間だ。

「だが、ヒントというかな。1つ天音には教えてもいいけどな」

 コホンッとわざとらしく、遥希は咳ばらいを行う。タイミングを図るように。

「私、瑞貴、愛海は、石井。いや、あのクソ2号のだ」

「は…。えっ…」

 遥希からの衝撃的な言葉に、颯の顔は固まる。あまりの衝撃に、脳の思考が停止する。

 遥希は何と言ったのか? 脳内でリピートされる。何度も同じ言葉を反すうする。

 元カノ? 元カノ? 元カノ? 

 脳内で同じ言葉が、何度も反響する。元カノという言葉が、颯の脳内を完全に支配する。まるで乗っ取ったかのように。

「提供できるヒントはこれくらいだな。私もそろそろ教室に戻らないといけないな。またな天音」

 ひらひらと軽く右手を振り、踵を返す遥希。隣の教室を目的地に、移動を開始する。

「ちょ、ちょっと待って。もっと詳しく教えてくれないかな! 」

 思考が復旧し始め、颯は遥希の背中に呼び掛ける。

「それは無理な話だ。それと、天音も早く教室に戻らないと、帰りのホームルームが始まるぞ」

 足を止めずに、対応すると、遥希は隣のクラスに入室する。

 遥希に指摘された通り、颯はクラスの教室に視線を走らせる。遥希の言う通り、担任が教壇に立ち、帰りのホームルームを始める段階に突入しつつあった。

「やばっ」

 焦った様子で、教室の後ろの戸から、教室へ入室し、滑り込むように、颯は駆け足で自席に腰を下ろした。

 その直後に、担任により、帰りのホームルームが、スタートした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

処理中です...