学年で1番のイケメンに彼女を寝取られた。そしたら、イケメンの美少女友達が縁を切った

白金豪

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第31話 ソワソワ

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 次の日。

 自室のベッドで、枕に頭を置きながら、颯は眠りにつく。時おり、左右に寝返りを打ち、熟睡状態である。

 25度程度の冷房が、室内で心地良く効いた状態である。そのおかげで、颯は良好な睡眠状態を維持する。

『ピ~ン~ポ~~ン。ピ~ン~ポ~~ン』

 ドアフォンが、自宅全体に鳴り響く。

 甲高い音が、颯の鼓膜を刺激する。ドアフォンの音が起因し、颯の意識が中途半端に覚醒する。

「うぅ~~ん。誰だろ? 」

 眠たそうに、右目を擦りながら、意識が朦朧とする中、颯は、ゆっくりベッドから起き上がる。足取りは重そうだ。

 ぼんやりとし、大きなあくびを漏らし、階段を用いて、2階から1階に降りる。

 玄関とリビングを繋ぐドアを開き、ドアフォンをチェックする。

 中途半端にぼやけた視界を明瞭にするために、重い瞼に抗うように目を細める。徐々に颯の見える世界が、クリアになる。

 眠気に半分以上負けた状態で、ドアフォンの画面を凝視する。

「は!? え!? 」

 ドアフォンの画面に映る人物を、しっかり認知し、颯は驚きのあまり、大きく目を見開く。一瞬で眠気は消え、意識は覚醒する。先ほどまでの眠気は嘘のようだ。

「ちょ、ちょっと待ってね! 」

 ドアフォンに映る相手の返事を待たずに、電源を切ると、大急ぎで階段を駆け上がる。ドタドタ階段を登り、短い時間で2階に辿り着く。

 ダッシュで自室に駆け込み、部屋着の上下白のスウェットを乱暴に脱ぎ捨て、ハンガーに掛けた制服一式へ手を掛ける。

 まず、制服のパンツを両足に通し、長袖のカッターシャツとブレザーも着用する。

 再び、バタバタと急ぎで階段を下《くだ》り、リビングを抜け、次は洗面所に向かう。

 引き戸を強引に引き、洗面所に到着する。

 引き戸を直さず、自身専用の歯ブラシを手に取り、歯磨き粉を付け、歯磨きタイムを開始する。

 ある人物を待たせているため、高速で歯ブラシで歯を磨く。手をいつもの倍以上早く動かし、30秒ほどで、歯磨きを済ませる。

 3回のうがいも済ませ、水道の蛇口から流れる水を両手で掬い、顔全体を洗う。

 高速で、洗面所の引き出しからタオルを取り出し、顔に付着した多くの水を拭き取る。

 2、3度タオルで優しく顔を擦き、目の前の鏡に視線を移す。寝ぐせや目ヤニが無いかを確認する作業だ。

 幸運にも、本日は寝ぐせも目ヤニも存在しない。ひどい時は、髪はボサボサに乱れ、目ヤニも大きな塊が出来るほどだ。流石に、今回の来客に、そのような、みっともない姿は見せられない。いや、見せたくなかった。

「よし! 問題なさそうだな」

 鏡でのチェックを終え、ようやく準備完了。

 だが、心に余裕は出来ず、先ほどと同様に、急ぎでリビングを抜け、玄関に場所を変える。

「ごめんね待たせて~」

 ようやく自宅のドアを開け、颯は、謝罪の言葉と共に、外に足を踏み出した。

「むぅ~。遅いぞ。結構待ったぞ」

 颯の目の前に佇む遥希は、不満そうに、すいっとそっぽを向いた。


☆☆☆

 一方、時は遡り、遥希の場面。

「よし。ようやく辿り着いたぞ」

 颯の自宅に到着した遥希。学校の準備を整え、彼女の自宅から、徒歩で辿り着いた。

「よし。押すぞ。……押すぞ」

 豊満な双丘の際立つ胸の前で、遥希は、ぎゅっと右拳を握る。遥希の顔から、緊張が滲み出る。

 ゆっくりゆっくり腕を動かし、遥希は、颯の自宅のドアフォンをプッシュする。

 自宅のドアフォンの鳴った音が、ドアフォンの機械を介して、遥希の鼓膜を優しく撫でる。

 しばらくしても、返事はない。ドアフォンのマイクに耳を当てるが、反応はない。機械音のみが生じる。

 不安になり、遥希はドアフォンに声を掛けようと試みる。

『ちょ、ちょっと待ってね! 』

 ドアファンを通じて、颯の焦った声が、遥希の鼓膜を刺激する。

「お、おい」

 応答しようとするが、ドアフォンの電源がすぐに落ちる。ピッと高い機械音が、生じる。

「おい、天音! 返事をしてくれ! 無視しないでくれ! 」

 ドアフォンに必死に訴える遥希。颯に無視されたと思ったのだろうか。

 だが、応答はない。無理もない。この時、颯は身支度の準備に必死だったのだから。

 そのため、遥希は結構な時間、颯の自宅で待ち続ける形になった。豊満な胸の前で両腕を組み、身体を左右に動かし、そわそわしながら待機する。落ち着きがなく、普段の遥希らしくない。

 そして、体感的に長い長い待ち時間を経て、ようやく颯の自宅のドアが開放された。

 その直後、遥希は思わず頬を綻ばせた。

 待ちに待った瞬間が到来したことで、我慢できずに形成された、その綻ぶ笑顔は、ドアに隠れ、颯の視界に入らなかった。

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