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前世のあの子
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その店はいわゆる高級店――というわけでは決してなく、むしろ。
「ここって酒はともかく、料理が最高なんだよ」
そう言いながらも先程から葡萄酒(つまりワイン)をがぶ飲みしながらご機嫌な様子の青年に、クラウスもつられて笑ってしまう。
大衆酒場といった雰囲気のこの店は、昼間だというのに陽気な音楽と楽しげな酔っ払い達。そして元気な看板娘たちで切り盛りされていた。
「ここはいわゆる観光客と地元住民との交流場でさぁ」
フォークで野菜をつつきながらガルムが言う。
「例えばほら、この芋。丸ごと油で揚げて塩とバターで丸かじりだなんて、こんな優雅な食べ方が貴族にできるかい?」
「おいちょっと飲みすぎだぞ」
楽しげだがさすがに陽気になりすぎだと窘めるものの、彼はニヤリと笑う。
「粗雑だけど美味い! だいたいウチの地方は新鮮な食材に恵まれないから加工品をソースやらなんやらで必死にこねくり回してやっとあのたいそうな貴族メシが出てくるわけで」
「おいおい。君のお父様や領民が聞いたら泣くぞ」
「泣かないよ、あんな世間体第一のクソオヤジ」
ふん、と彼は鼻を鳴らす。
「兄さんが家出したのもわかるってもんさ」
「家出してるのか、その……お兄さんって」
ブルノー家には男子が二人。そのうち長男であるシャルルが五年ほど前に屋敷を飛び出してしまったという。
「シャルル兄さんとお父様はずっと険悪だったんだけど、それでも出ていってしまうなんて誰も思ってなかったんだ」
とある嵐の夜。その日の激しい口論が屋敷中に響いていたという。
「そのまま外套だけ引っ掴んで外に飛び出したな兄さんを見た者はいなかった、というわけ」
「……」
「それでもお父様は後悔の言葉ひとつない。まるで最初からいなかったように僕を後継者に据えたんだ」
もちろん彼は戸惑ったし反抗する気持ちはなくもなかったと。
「でも僕はあえてそれに乗っかった」
それから再び葡萄酒の満たされた杯をグイッと豪快に煽ると店員を捕まえておかわりを頼んだ。
それにはさすがのクラウスも静止する。
「おい、もう飲みすぎだぞ」
そう言って彼の肩に手をかけるとその手をにぎりしめられた。
「クラウス……君のためだよ」
「へ?」
「ずっとずっと会いたかった」
そのまま強く引き寄せられ倒れ込むように抱きつかれる。
「おいやめろ、ガルム。その酔っ払い!」
「酔ってない」
「酔っ払いはみんなそう言うんだよ、アホガキ」
「……また僕を子ども扱いするんだね」
「え?」
今度は泣き出しそうな声。
違和感を覚えて顔を覗き込みたくてもキツく抱かれてはそれも出来ない。
「あの時もそうだった。貴方はいつも僕の気持ちをはぐらかす」
「いいから水くらい飲めっては」
「一目見て確信したんだ。貴方は僕の運命だって」
「ああもう聞いちゃいないな」
周りから失笑が湧く。べろべろに酔った青年に絡まれた可哀想な人という目にため息が出る。
――色々とストレス溜まってるんだろうな。
彼はふと前世の社畜生活を思い出した。
――あいつもこんな感じの酔い方だったっけな。
あの日、死んだ当日に退職届を叩きつけてきた後輩。
引き止めようとした彼に冷たい視線と言葉を突きつけてきたのだ。
『あんたみたいに使い捨てされる人生なんて真っ平御免ですから』
心底軽蔑しきった瞳で吐き捨てられてはもう何も言えない。
そのまま午後休を取ってそれからは有給取得。きっともう彼は目の前に現れないだろう、と諦めと絶望の感情だけでため息をついたのを彼は覚えている。
むしろこうやって辞めていく方がまだ健全だった。
大半が精神を病んである日突然来なくなる。布団から出られなくなった、電車に飛び込むか悩んでずっと駅のホームに立ち尽くした者もいたという。
――あいつも元気にやってるだろうか。
まだ若い彼ならきっとどこでもやっていける。それに比べて自分は……と自暴自棄になった夜だったのだ。
「ガルム」
離すまいとしがみつく彼の頭をそっと撫でる。
「すごいよ、お前は」
兄が出て行っていきなり跡継ぎとして働かなければならない身の上。きっと理不尽な事も多かっただろう。
土地を統べるというのはただでさえ重圧だ。
それぞれに生活がある、人生がある。それらをすべて背負い込むのが自分たち領主であるのだ。
「よく頑張ってる」
「……クラウス」
「若いのに大した奴だ。だからたまには愚痴のひとつもこぼせばいい」
まるでグズる子どもに言い聞かせるよう、優しくさとすように話す彼にガルムがなにを感じただろう。
小さく鼻をすする音がしたかと思えば。
「やっぱりまた出会えてよかった」
とますますしがみついてくる。それがもう捨てられそうな幼子のようで、彼の父性を刺激して止まないわけなのだが。
「あ、あのぉ~」
ワイン杯を持った若い店員が申し訳なさそうに彼らに声をかけた。
「これご注文の――」
「すすすっ、すいません!?」
ここがどこか一瞬忘れてたクラウスは慌てて彼と身体を離そうとしたが。
「おいっ、ちょっと離れろ」
「やだ」
かえって胸の中に閉じ込める勢いである。
だから押し殺した声でガルムを叱るものの、不貞腐れた声が返ってくるばかりで。
「ずっとこうしてるもん」
「『もん』はやめろ、男だろーが!」
「男でもなんでも嫌だ。クラウスは僕のだ」
「駄々っ子かよ……」
わがままひとつ、いやイヤイヤ期すらあまりなかった我が息子の子育てを思いつつ。クラウスはこの図体の青年が酔って甘えてくる様が不思議と不快ではなかった。
「ったく仕方ないな」
店員には頭を下げ、金を払いワインは辞退した。
「まだ飲めたのに~」
「はいはい。おっさんに抱きつくくらい酔った悪いガキにはもう水しかやらないからな」
相変わらずベタベタとくっついてくる彼にもう諦めたらしい。
されるがまま、しかしちゃんと水は飲ませておく。
「ほら、そろそろ行くぞ」
「やだ。まだ酒飲みたい」
「ダメだ。ええっと宿……どっかいい所ないかな、この近くで」
グズる青年を引きずるように思案していると、当の本人は嬉しそうに。
「なんか僕、クラウスにお持ち帰りされてるみたい」
なんて囁くから彼は思わず吹き出してしまう。
「馬鹿なこと言うな。ほら、ちゃんと立てよ」
周りの興味津々といった視線は一旦無視して、この困った状態の酔っ払いをどうにかする事にした。
「ああ。この方が泊まっている宿を知ってるよ」
そんな助け舟を出したのはカウンターで客あしらいをしていた中年の女店主である。
「三日ほど前だったかねぇ。あの繁華街の端にある大きな宿屋さ」
彼女は親切なもので丁寧にその宿屋までの行き方まで教えてくれた。
「金持ち御用達のところだから、きっとその坊ちゃんもアンタもさしずめ貴族様ってとこだね」
「ええまぁ」
決して嫌味だとかでは無いだろうがそれでもなんだか申し訳なくなって、クラウスは小さく会釈をしながら支払いをすませる。
「お連れさん、今日はだいぶ酔ってるねぇ」
「いやいや。こんな美人さんつれてたら仕方ないよ」
「まったくそうだ。ずっと鼻の下のばしてイケメンが台無しだったもんなぁ」
「あはは! そりゃひでぇや」
など、やいのやいのと盛り上がる酒場を持ち前の愛想よさと腰の低さで彼はガルムを連れて後にしたのである。
「まったくもう」
――えらい恥ずかしい思いしちまった。
でもやはり不思議と嫌な気持ちはしない。むしろ可愛らしいとさえ思えるのだから奇妙だった。
「やっぱりお前も似てるよなぁ」
退職届とあの冷笑ばかりが思い出されるものの、前世での部下の記憶はそう悪いものだけではなかった。
むしろ現代っ子でどこかマイペース、人当たりの良い方とは言えない青年であったがそれでもそれなりに懐いてくれていた……はずだ。
――あいつもきっと。
今度こそホワイト企業にでも勤めて可愛い嫁さんと子どもでもつくって幸せな人生を送ったと信じたい。
「……ぅ」
「ん? 大丈夫か。もうちょっと歩けよ、あと少しで宿につくからな」
肩を貸しながら引きずるように歩くのもかなりキツい。クラウスため息をこらえつつ、低くうめいた彼を覗き込む。
「きょ……ぞ……さん……」
「え?」
「なんで……ぼくを……おいて……しんじゃ、っ……たんだよ……」
その瞬間、心臓が飛び上がった。
――嘘だろ。
蔵谷 恭蔵、それは彼の前世の名前である。
この世界で呼ばれることのない過去のもの。それなのに、この青年はそれを口にした。
それが意味することは。
「宿はここだよ、恭蔵さん」
気付けば酒に酔って歩くのもやっとであった彼はすっくと立ち上がりこちらをジッと見つめていた。
「ようやく思い出してくれたんだね。うれしいなぁ」
「お、お前……」
本当にかつての部下なのか。そう問いただすのもなにか恐ろしい。
なにかとても大きな秘密を忘れてしまったかのような。
「いつまで突っ立ってるの、行こ」
「……」
「覚えてる? 出張先で一緒の部屋のベッドで寝たこと」
「……」
「すごく素敵な夜だったよね」
「っ、へんなこと言うなよ。あれはホテル側の手違いで――」
「やっぱり覚えてた」
「!」
心の底から嬉しそうな声にぞわりと怖気立つ。
「行こう」
クラウス、と囁きながら彼はイタズラが成功した子どものように笑った。
「ここって酒はともかく、料理が最高なんだよ」
そう言いながらも先程から葡萄酒(つまりワイン)をがぶ飲みしながらご機嫌な様子の青年に、クラウスもつられて笑ってしまう。
大衆酒場といった雰囲気のこの店は、昼間だというのに陽気な音楽と楽しげな酔っ払い達。そして元気な看板娘たちで切り盛りされていた。
「ここはいわゆる観光客と地元住民との交流場でさぁ」
フォークで野菜をつつきながらガルムが言う。
「例えばほら、この芋。丸ごと油で揚げて塩とバターで丸かじりだなんて、こんな優雅な食べ方が貴族にできるかい?」
「おいちょっと飲みすぎだぞ」
楽しげだがさすがに陽気になりすぎだと窘めるものの、彼はニヤリと笑う。
「粗雑だけど美味い! だいたいウチの地方は新鮮な食材に恵まれないから加工品をソースやらなんやらで必死にこねくり回してやっとあのたいそうな貴族メシが出てくるわけで」
「おいおい。君のお父様や領民が聞いたら泣くぞ」
「泣かないよ、あんな世間体第一のクソオヤジ」
ふん、と彼は鼻を鳴らす。
「兄さんが家出したのもわかるってもんさ」
「家出してるのか、その……お兄さんって」
ブルノー家には男子が二人。そのうち長男であるシャルルが五年ほど前に屋敷を飛び出してしまったという。
「シャルル兄さんとお父様はずっと険悪だったんだけど、それでも出ていってしまうなんて誰も思ってなかったんだ」
とある嵐の夜。その日の激しい口論が屋敷中に響いていたという。
「そのまま外套だけ引っ掴んで外に飛び出したな兄さんを見た者はいなかった、というわけ」
「……」
「それでもお父様は後悔の言葉ひとつない。まるで最初からいなかったように僕を後継者に据えたんだ」
もちろん彼は戸惑ったし反抗する気持ちはなくもなかったと。
「でも僕はあえてそれに乗っかった」
それから再び葡萄酒の満たされた杯をグイッと豪快に煽ると店員を捕まえておかわりを頼んだ。
それにはさすがのクラウスも静止する。
「おい、もう飲みすぎだぞ」
そう言って彼の肩に手をかけるとその手をにぎりしめられた。
「クラウス……君のためだよ」
「へ?」
「ずっとずっと会いたかった」
そのまま強く引き寄せられ倒れ込むように抱きつかれる。
「おいやめろ、ガルム。その酔っ払い!」
「酔ってない」
「酔っ払いはみんなそう言うんだよ、アホガキ」
「……また僕を子ども扱いするんだね」
「え?」
今度は泣き出しそうな声。
違和感を覚えて顔を覗き込みたくてもキツく抱かれてはそれも出来ない。
「あの時もそうだった。貴方はいつも僕の気持ちをはぐらかす」
「いいから水くらい飲めっては」
「一目見て確信したんだ。貴方は僕の運命だって」
「ああもう聞いちゃいないな」
周りから失笑が湧く。べろべろに酔った青年に絡まれた可哀想な人という目にため息が出る。
――色々とストレス溜まってるんだろうな。
彼はふと前世の社畜生活を思い出した。
――あいつもこんな感じの酔い方だったっけな。
あの日、死んだ当日に退職届を叩きつけてきた後輩。
引き止めようとした彼に冷たい視線と言葉を突きつけてきたのだ。
『あんたみたいに使い捨てされる人生なんて真っ平御免ですから』
心底軽蔑しきった瞳で吐き捨てられてはもう何も言えない。
そのまま午後休を取ってそれからは有給取得。きっともう彼は目の前に現れないだろう、と諦めと絶望の感情だけでため息をついたのを彼は覚えている。
むしろこうやって辞めていく方がまだ健全だった。
大半が精神を病んである日突然来なくなる。布団から出られなくなった、電車に飛び込むか悩んでずっと駅のホームに立ち尽くした者もいたという。
――あいつも元気にやってるだろうか。
まだ若い彼ならきっとどこでもやっていける。それに比べて自分は……と自暴自棄になった夜だったのだ。
「ガルム」
離すまいとしがみつく彼の頭をそっと撫でる。
「すごいよ、お前は」
兄が出て行っていきなり跡継ぎとして働かなければならない身の上。きっと理不尽な事も多かっただろう。
土地を統べるというのはただでさえ重圧だ。
それぞれに生活がある、人生がある。それらをすべて背負い込むのが自分たち領主であるのだ。
「よく頑張ってる」
「……クラウス」
「若いのに大した奴だ。だからたまには愚痴のひとつもこぼせばいい」
まるでグズる子どもに言い聞かせるよう、優しくさとすように話す彼にガルムがなにを感じただろう。
小さく鼻をすする音がしたかと思えば。
「やっぱりまた出会えてよかった」
とますますしがみついてくる。それがもう捨てられそうな幼子のようで、彼の父性を刺激して止まないわけなのだが。
「あ、あのぉ~」
ワイン杯を持った若い店員が申し訳なさそうに彼らに声をかけた。
「これご注文の――」
「すすすっ、すいません!?」
ここがどこか一瞬忘れてたクラウスは慌てて彼と身体を離そうとしたが。
「おいっ、ちょっと離れろ」
「やだ」
かえって胸の中に閉じ込める勢いである。
だから押し殺した声でガルムを叱るものの、不貞腐れた声が返ってくるばかりで。
「ずっとこうしてるもん」
「『もん』はやめろ、男だろーが!」
「男でもなんでも嫌だ。クラウスは僕のだ」
「駄々っ子かよ……」
わがままひとつ、いやイヤイヤ期すらあまりなかった我が息子の子育てを思いつつ。クラウスはこの図体の青年が酔って甘えてくる様が不思議と不快ではなかった。
「ったく仕方ないな」
店員には頭を下げ、金を払いワインは辞退した。
「まだ飲めたのに~」
「はいはい。おっさんに抱きつくくらい酔った悪いガキにはもう水しかやらないからな」
相変わらずベタベタとくっついてくる彼にもう諦めたらしい。
されるがまま、しかしちゃんと水は飲ませておく。
「ほら、そろそろ行くぞ」
「やだ。まだ酒飲みたい」
「ダメだ。ええっと宿……どっかいい所ないかな、この近くで」
グズる青年を引きずるように思案していると、当の本人は嬉しそうに。
「なんか僕、クラウスにお持ち帰りされてるみたい」
なんて囁くから彼は思わず吹き出してしまう。
「馬鹿なこと言うな。ほら、ちゃんと立てよ」
周りの興味津々といった視線は一旦無視して、この困った状態の酔っ払いをどうにかする事にした。
「ああ。この方が泊まっている宿を知ってるよ」
そんな助け舟を出したのはカウンターで客あしらいをしていた中年の女店主である。
「三日ほど前だったかねぇ。あの繁華街の端にある大きな宿屋さ」
彼女は親切なもので丁寧にその宿屋までの行き方まで教えてくれた。
「金持ち御用達のところだから、きっとその坊ちゃんもアンタもさしずめ貴族様ってとこだね」
「ええまぁ」
決して嫌味だとかでは無いだろうがそれでもなんだか申し訳なくなって、クラウスは小さく会釈をしながら支払いをすませる。
「お連れさん、今日はだいぶ酔ってるねぇ」
「いやいや。こんな美人さんつれてたら仕方ないよ」
「まったくそうだ。ずっと鼻の下のばしてイケメンが台無しだったもんなぁ」
「あはは! そりゃひでぇや」
など、やいのやいのと盛り上がる酒場を持ち前の愛想よさと腰の低さで彼はガルムを連れて後にしたのである。
「まったくもう」
――えらい恥ずかしい思いしちまった。
でもやはり不思議と嫌な気持ちはしない。むしろ可愛らしいとさえ思えるのだから奇妙だった。
「やっぱりお前も似てるよなぁ」
退職届とあの冷笑ばかりが思い出されるものの、前世での部下の記憶はそう悪いものだけではなかった。
むしろ現代っ子でどこかマイペース、人当たりの良い方とは言えない青年であったがそれでもそれなりに懐いてくれていた……はずだ。
――あいつもきっと。
今度こそホワイト企業にでも勤めて可愛い嫁さんと子どもでもつくって幸せな人生を送ったと信じたい。
「……ぅ」
「ん? 大丈夫か。もうちょっと歩けよ、あと少しで宿につくからな」
肩を貸しながら引きずるように歩くのもかなりキツい。クラウスため息をこらえつつ、低くうめいた彼を覗き込む。
「きょ……ぞ……さん……」
「え?」
「なんで……ぼくを……おいて……しんじゃ、っ……たんだよ……」
その瞬間、心臓が飛び上がった。
――嘘だろ。
蔵谷 恭蔵、それは彼の前世の名前である。
この世界で呼ばれることのない過去のもの。それなのに、この青年はそれを口にした。
それが意味することは。
「宿はここだよ、恭蔵さん」
気付けば酒に酔って歩くのもやっとであった彼はすっくと立ち上がりこちらをジッと見つめていた。
「ようやく思い出してくれたんだね。うれしいなぁ」
「お、お前……」
本当にかつての部下なのか。そう問いただすのもなにか恐ろしい。
なにかとても大きな秘密を忘れてしまったかのような。
「いつまで突っ立ってるの、行こ」
「……」
「覚えてる? 出張先で一緒の部屋のベッドで寝たこと」
「……」
「すごく素敵な夜だったよね」
「っ、へんなこと言うなよ。あれはホテル側の手違いで――」
「やっぱり覚えてた」
「!」
心の底から嬉しそうな声にぞわりと怖気立つ。
「行こう」
クラウス、と囁きながら彼はイタズラが成功した子どものように笑った。
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