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パパ活と美丈夫の出会い系♡

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「くそぉ、ホントに大丈夫かよ」

 何なるゲームで悪ふざけ。というか、罰ゲームだったんだ。
 この前。幼なじみの女と、しょーもないけに負けてさ。やらされたのがコレ。

『はい! 咲夜さくやのアカウントね』

 見せられたのはマッチングアプリ、いわゆる出会い系のそれ。
 顔写真は加工と口元をバカっぽいスタンプで隠された、女装姿のオレ。

『がんばってパパ活してよね、さ・く・や・ちゃん♡』

 こともあろうに、パパ活でオッサンを釣ってこいという。
 そのために女装させられて写真撮らされた。
 ご丁寧に、アプリまで入れて。
 ほんと、アイツなにやってんだか。
 これだからカレシひとつ出来ねぇんだって、ツッコミ入れたら軽くゲンコツくらったっけな。

「とはいえ――」

 思わず口の中でボヤくくらい、オレは途方に暮れていた。
 待ち合わせ場所はここ。人がめちゃくちゃ行き交う、駅前の広場。
 オレみたいな人待ち顔したヤツもたくさんいる中で、スマホを眺めてため息をついた。
 アプリを入れて、物色したオッサンとやりとりしたのはアイツ。
 だからオレから連絡取りようがないし、こうやって待ってるしかない。

『女装? ううん、しなくていいよ。ただし、付けてね!』

 前日に渡されたのが、チョーカー。シンプルなデザインかとおもいきや、真っ赤なそれは見ようによっては――。

「待たせたね」
「!?」

 後ろからすごく渋い声が。
 思わず飛び上がって、ふりむく。

「え゙っ、あ、ぅえぇっ!?」

 すっごいイケメン。あとめちゃくちゃデカい。二メートル超えてんじゃね? ってくらいの。言わば巨像だ巨像。
 しかもどこの俳優だって顔面して、さわやかに微笑んでやがる。
 こちとら170ほどの平凡な男子高校生だぞ。もうオーラというか、なにもかもが別世界過ぎて。
 
「ハナコちゃん、かな?」

 ――しゃ、しゃべったァァァァァッ!!! いや、さっきもしゃべってたけど!
 それにしてもイケメンって声もいいのか!? この場合はイケオジか? でも確かアラフォーのおじさんって聞いてたぞ。
 つーか、声がイイ。渋くて男前ってカンジの。
 ほら周りの奴らも、ザワついちまったじゃないか。仕方ないよな。こんなイケメンが突然あらわれたら、騒ぎにならない方がおかしい。
 
「ハナコちゃん?」
「えぇっ、は、はいぃぃっ、お、オレ、実はッ……!」

『ハナコ』なんて、くそダサい偽名。よく思いついたな、あのアホ女。
 ていうか、このオッサンもおかしいと思えよ。 
 目の前にいるのは男のオレ。女装してるならいざ知らず、そのままの男の格好のままで、首に真っ赤なチョーカーっていうクソ恥ずかしい姿なわけだ。
 だがオッサン (イケメンすぎてムカつくからそうしとく) は、おかまいなしでオレの手を引いて歩き出す。

「ちょちょちょっ! な、なんで!?」
「ン? だって君は、私の待ち人だろう」
「そ、そうだけどっ」

 うわぁぁっ、イケメンしゃべんな! 場がザワつくから!! 
 ほら見ろ。向こうでお姉さんが卒倒したじゃねぇか! 
 イケメンオーラがハンパないからだ。なんだよ、マンガかよ。
 イケメンは凶器になるのか……うげぇぇ、怖ぇぇぇ。

「じゃあ問題はないな。場所を変えよう」
「でででで、でもっ、オレ、男で!」
「…………ン?」

 よし止まった。
 ったく、人を子どもみてぇに引きずりやがって。
 オレは小さく息をつくと。

「見てわかるっしょ? オレ、男だから。そんでもって――」
「うむ。問題ないな」
「だからなんでぇぇぇぇっ!?」

 再び手を引いて歩く大男に、オレの悲痛な叫びは届かない。


 




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