まほろば

田中 乃那加

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12.不器用な彼らの

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 ……ちゃんと。セックスというのは共同作業で、互いの身体を想いやってこその愛の行為ってやつだと。
 とはいえ、今まではそんなこと考えたことも無かった。
 女とのセックスの経験しかないからだ。当たり前。俺はゲイじゃないから。
 女との関係では、あくまで差し出された甘くも美味くもないを惰性で口に運ぶように、機械的にこなしてした行為。それを片っ端から優しく投げ捨てていくだけ。

 それが変わったのも、あくまで誠の事が好きだから。それだけのこと。
 好きになった奴が、たまたま男だっただけ。
 んで、その彼をたまたま『抱きたいな』って思った。話はシンプルだろ?

 ……だから彼が一人で準備するのも、正直気に食わなかった。共同作業なのに。
 しかも今日は『仲直りのセックス』だろ。それなのに、なかなか触れさせてくれなかった。
 俺の恋人はなんてイジワルなんだ。小悪魔か。淫魔か。でもそれがまた可愛い……。

 そして挙句の果てにはまた変な事を言っている。
? 俺を試しているのか。怒らせたいのか、両方か。
 まぁ怒ったらまためちゃくちゃに抱き潰しちゃうだけだけど。
 
……あ、今度は前のようなヘマはしない。
 芽衣子ちゃんにも怒られたしな。ちゃんと朝まで一緒にいよう。
  明日の授業なんて知ったことか。俺の人生がかかっているんだ。
 あー、やっぱり身体で教えこんだ方が良いのかな?

「た、頼むから……これ以上来るな」

 彼は浴室の床にペタンと座り込んで小刻みに震えている。
 こういうのもいいな。見上げてくれてるのがまた良い。

「なんでそんな事を言うんだ? 誠が誘ったんだろ」

、さ。なかなか情熱的で嬉しかったのになぁ。

「僕は最後に、その……」
「だから最後って何?」

 もう試さないでいいんだよ? 
 っていうか、この前からセフレとか言うし。それなりにこっちは傷付くんだからね! 

「俺たち、恋人だろ」
「こ、恋、人……?」

 あれぇ、そこ聞き返してくるか。 
 ……なーんか噛み合わなくない? 
 すごく違和感。捻れまくった紐を解こうとしている気分だなぁ。

「まず僕の話を聞いてくれるか?」

 彼の遠慮がちな言葉に、俺はゴクリと唾を飲んで頷いた。


■□▪▫■□▫▪■□▪▫

「あー。うん、なるほど」

 ―――俺は浴槽に張った湯に浸かって呟いた。
 湯と言ってもまぁ適温に。季節がら風邪は引かないし、熱すぎるとのぼせちゃうだろ。
 髪から滴った雫が水面に落ちて小さく波紋を描く。その様子が少し面白くて、指に雫を伝わせて2つ3つ作ってみる。

「誠って、結構忘れっぽいんだねぇ」
「うっさいなァ、人を健忘症みたいに言うな」

その状態での呆れたようにため息と言葉に、彼がふくれっ面で答えた。
 ……現在俺たちは狭い浴槽に2人で入っている。
 彼が身体を少し縮めて膝を折り曲げた三角座り。それを俺が後ろから包み込む形、と言ったら分かるかな。
 恋人同士が風呂に入るなら、よくやる入り方。
 勿論最初は渋られたけど、それなりの体格の男2人が入るとしてもこれがベストだって説得した。
 ちなみにこれ、すごく憧れてたやつ。

 好きな人出来た瞬間にやってみたいって思ったんだよね。
 お互い体温感じられるし鼓動だって。
 少し居心地悪そうにゴソゴソ動く感じも、可愛くて最高だ。これだけで俺の方が

「あのねぇ。誠はいくつか誤解してるけどさ」

 こうしてゆっくり誤解を解くのは悪くないな。
 お金置いて先に帰った事もだけど、もっともっと大事な事を伝えなきゃいけないんだから。

「よーく聞いてね?」

 
 

 
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