ゴブリンさんの異世界旅行記

なめこ

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第一章

ep-5 たまにはキャンプも良いよね

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季節は秋。ほのぼのとした暖かい日が続き過ごしやすいそんなある日…ヴィートは暇を持て余していた。あまり説明していなかったが、ヴィートはニートでは無い。歴とした働くキャリアウーマンなのである‼︎
…ただし別に転売ヤーとかでは無い。ヴィートの仕事…それは日本側でのバイヤーだった。主に元の世界から素材を入手、それを加工して販売という形式をとっている。例を挙げるなら、以前のレッサードリアード。アレは基本的に果実部分の女体部分は加工して等身大稼働フィギュア(ヴィート謹製衣装や小道具付き)として販売。蔓の部分は繊維まで解し、小鬼印のコートの素材に加工。それ以外で言えば、前回のマンドラゴラ。これは普通に薬の材料として加工する(シレッと売っている。何回か警察に追われたが…)。或いはオーガ。これもレッサードリアードと同じくコートなどの材料にすべく、滑してから加工しているし、レッサーフォレストドラゴンに至っては肉は自分用、そして爪は象牙加工品の様に根付けやキーホルダーに加工。皮は革として滑してからコート以外にもバッグや財布に加工して売っている。
もちろん全て日本で…だが。理由は簡単、以前も紹介した通り元の世界ははっきり言って文明が遅れている。それはもう、今の時代と比べていきなり中世の前半ごろに叩き込まれたようなレベルで。
そんな世界のガラクタに等しいものが欲しいか?
確かに読者や筆者憧れとも言える魔道具もある…なら、魔道具だって役立つだろう。そうヴィートも考えた時期があった。しかし、現実は世知辛い…
例えばランプの魔道具。魔石を使う事で蝋燭の様な灯りをつけることができる魔道具…いや、LEDランタンの方が長持ちだし買い換えれるし。
水を生み出す水筒がある。こちらも魔石をキャップにつければ、1日に600ml程の水を生み出せる…いや、水道の蛇口撚れば水出るし、コンビニで好きなドリンクも買える。
焚き火を起こせる持ち運び魔道具(アパートのキッチンサイズで一口タイプ)がある。いや、デカすぎるしカセットコンロの方が軽いし火力あるし。
魔剣がある。だから?持っていてもそう使わないし、物によっては呪われているし…使い道ないそんなものより普通に良い包丁とか売ってるし何より邪魔。
魔法がある。別になくても使えなくても困らない。事実ヴィートは多少使いはする物の移動は電車がバイク、生活の水は上下水使うしゴミも普通にゴミ捨て場に捨てる。食べ物も冷蔵庫で保管すれば良いし、向こうと違ってそう命の危機もないから武装しなくて良いし…
さて、そんなものしかない世界で何を買えと?それがヴィートの結論だった。つまる話、日本…ひいては地球の物の方が有用だったというオチだった。技術革新万歳。ちなみに服飾関係も当然軍配は日本にあった。そりゃただの布を股間や胸に巻くより、しっかり人間工学に基づいて作られたブラやパンティの方が圧倒的なのはいうまでもない。何よりもデリケートゾーンに当たる布の差は大きかった。
話が長く脱線してしまったが、これらの理由でヴィートは日本でしか販売をしていない。一応ネットショップを開設しておりコートと同じで『小鬼屋・麦畑』という名前で営業している。
さて、ではなぜ今日暇なのか…それは依頼されていたオーダーメイドのコートや財布作成が終わり、それも送付して休みとしたからだった。何せ前回みたくチビチビ向こうに行っては狩りに出て、こっちに帰って来ては仕事漬け。例え外食したり酒を飲んだりしていても、空き時間や見えない時間は全て仕事だったのだ。
だが、漸く休みが作れた…何をしようかなぁ…などと考え気がつけば2日目。ベッドで下着姿のまま、老竹色の肌が日にあたる。

「…やっばぁ…」

遊んで無さすぎて、何をすれば良いのかわからないのだ。流石にスマホを出せば昨日の二の舞(動画アプリで1日消滅)となるのは察しているので、スマホには触らない。
何をしようかと思案していると、ふと良いことを思いついたのかガバリと体を起こす。

「キャンプだ…キャンプに行こう」

そうだ、何せこの仕事漬けとなる前気になって買ったテント類があった。だが仕事に忙殺され、押し入れの奥で寝かしていたものがあったことを思い出したのだ。掛け布団を蹴り飛ばし押し入れに飛びついてひっくり返すように中身を出せば、新品のテントにLEDランタン、折り畳み机に椅子etcetc…
勿論飯盒や一人用鍋に折り畳みスプーンやフォーク箸なんかもしっかりあった。

「行ける…ねぇ」

問題はメニュー…何を食うか、何を食うべきか…‼︎普段通りでは味気ない、だが下手に凝ってもキャンプ素人には厳しい…かと言ってこの世界に来る前の焼くだけメニューなんて嫌だし、ノーマルゴブリン達みたいな生喰いや腐りかけなんてもっての外だ。例えゴブリンといえど、現代人らしいものを…

「明日から向かうとして…朝はこっちで卵かけご飯、昼夜は…」

そうしてやって来た翌日。背中には大きなリュック…など無く、いつもの和風コート姿。因みにキャンプ場は神奈川県内で取れたようである。海沿いの松の防風林がある所だが、周りの家も少なくテントサイト自体も多く、シャワールームもあり何より忘れ物や追加機材があっても有料で借りられるという…そして防風林のおかげで風邪の影響を受けにくく、過ごしやすいのが良い所だろう。
荷物はいつも通り、収納魔法インベントリである。魔法はなくても平気だとは言ったが、便利なものは便利である。結局のところ魔法も技術も用法要領が肝要である(そもそもの話、ヴィートの様に服に付与できる魔法使いは存在しないし、収納魔法自体剣一振りや矢の予備、魔法使いの緊急用のポーション数個を入れておくくらいしか無理であり、こんな何でもかんでもドカドカ入るヴィートがおかしい)。

「…空気が美味しい」

移動手段は小型バイクを使用して来たため、風を感じながらきたもののやはり都会から離れた空気は美味しかった…ゴブリンなり森で好きなだけ味わっているとかは無しだ、ヴィートに関しては基本日本で暮らしているためむしろ森の方の空気の味を忘れている側なのだ。ザ・現代人…いや、現代ゴブリンである。事実、今回自分で休みを作らなければ仕事漬けのままだったほどのセルフ社畜化していた程に…

「んぁ…取り敢えずはテントだなぁ…っと」

ゴサリと取り出したのはD○Dのライダースワンポールテントとチタ○マニア製のペグ類。テントは専門サイトだがペグ類は某密林サイトで買った物だ。ワンポールテントなのは単に組みやすそうだったから、そしてペグがチタンなのは単にカッコよかったから…ロマン、大事。もう一つおまけにライダースなのはなんか響きが良かったかららしい…
そんなこんなで取り出したテントをスマホに保存していた組み立て方を参考にゆっくり組み立てる。時間もまだ昼前、というより時間を忘れてやる遊びなのだからこそ、何も考えずのんびりと手を動かすヴィート。

「何だろう…大自然とかはよく元の世界であったけど…命のやり取りのないのは初めてかもぉ?」

何やかんやで日本で暮らして数年…思い返せば初めの頃は人に化けた程度で元の世界のまま来て、周りから浮浪者と思われ、招集魔法を編み出し…割と波瀾万丈に過ごしていた気がして来たヴィート。よく本当に暴れなかったものである。

完成か~んせ~」

組み上がったテントの前で椅子も立て、ゆっくりと腰を沈める。フカフカ…とは言えないが、ハンモックの様な何かの様な…凄いどこかに既視感を感じるがどこで感じたかわからない心地良い感触に思考がふわつく。しかしそうも言っていられない。
ポケットから懐中時計を取り出せば、時刻は既に11時過ぎ…昼飯時だ。もう昼飯は決めていた…まさに最初のキャンプの最初の飯にふさわしい…

「百均ルーのカレーライス…だねぇ」

DA○SOで売られているカレールー…たかが百均と侮るなかれ。そのサイズ、値段の価値を超える味と満足感。残念なのは辛口が中々手に入らない事だろう。
8人前、2パック入りで百円(税別)…しかも、普通に美味い。ヴィートは初めてまともな食事を作るにあたり、顧客の一人から『初めて料理するならカレーだよ、変に凝ったものとか考えなくても裏面通りに作れば間違い無いし』と教わりその味に感動した。そりゃもう『え…元の世界以下の値段でこの味と量…あ、悪魔的ダァ…』と震えた程だ。何なら今では月一で買ってるしストックしているほどだ。
そして持って来たのはその一片。それと百均で揃うピザソースやら出汁の素やら…肉は以前討伐したトカゲレッサーフォレストドラゴンの削ぎ切りにしたどっかの部位の肉(多分尻尾か肩だった気がする?冷凍庫に入れすぎてよく分からない…ヴィート談)。それとスーパーで売っているカレー野菜ミックス。あと米。
コートから次々と取り出し、すぐに折り畳みバーナー(S○TO製)に飯盒を置きしっかり予習した通りに炊飯を始める。勿論、米は無洗米だ。初めちょろちょろ中ぱっぱ、赤子が泣いても蓋取るな…である。
そしてそして、取り出したるは一人用片手鍋(ペグと同じくチタ○マニア製)と小さめのお玉。こういうので良いんだよ、こういうので。鍋にポイポイと食材やら百均調味料を入れ炒め始める…前に、簡単にケチャップとピザソースを鍋に入れほんの少しのサラダ油。
弱火でジリジリ炒め、真っ黒に焦がさない様に時折混ぜる。少し縁が焼けて焦げて来そうになったらそこに豚バラ肉…ではなく、例のトカゲ肉をぶち込む。
焦がさない為に少しの水を入れるのも忘れずに。そうやって火が通って来たところで野菜を加える。
こちらは既に下茹でされてるからさっと炒め合わせる。そこへ規定量の水を入れて軽く煮る。沸々したら火を止めてルーを入れ溶かし込む様にゆっくりと混ぜる。しっかり、基本に立ち直って作るのだ‼︎
そうこうしてれば飯盒も沸々して来るので中火にして落ち着いて来たら火を止めてひっくり返す。本来ならミトンやら何やらでひっくり返すが、ヴィートは腐ってもゴブリンマジシャン…魔法使いである。クルッと魔法でひっくり返してあらかじめ出しておいた布巾の上に置いて蒸らす。
少ししたらお焦げの入った真っ白ごはんの出来上がり…である。

「そーしーてー…」

丸いキャプ用の丼(チタン製)に蒸らした米を盛る。上手くいったのか白い粒達がしっかり立ち上がっている。さながら白米のスタンディングオベーションだ。その中にいるお焦げはまさしく観客に紛れた大物女優に俳優…隠しきれない旨味のオーラを醸し出す。
そこへ出来立てのカレールー。ゴロゴロ野菜に薄く削ぎ切りになった鶏肉…ではなくトカゲ肉がルーの色に染められて艶やかに存在を主張する。
あえて皿ではなく、丼に盛る。それだけでどこかなぜか特別に感じてしまうヴィートであった。
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